日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG52] 北極域の科学

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:川上 達也(北海道大学)、堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、柳谷 一輝(宇宙航空研究開発機構)、佐藤 洋太(海洋研究開発機構)、座長:川上 達也(北海道大学)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)

10:00 〜 10:15

[ACG52-05] 北極海太平洋側におけるアルカリ度を用いた淡水識別方法の検証

*香村 つくし1川合 美千代1後藤 楓1、八田 真理子2村田 昌彦2 (1.国立大学法人東京海洋大学、2.海洋研究開発機構)


キーワード:北極海、淡水、アルカリ度

北極海太平洋側の海域は、海氷融解水や天水(河川水、降水)などの淡水が大量に流入・蓄積する海域であり,「淡水のリザーバー」と呼ばれる。この淡水は、北極海内部の塩分分布を変化させ、物質循環や海氷生成に影響を与えるほか、北大西洋深層水の形成域に流出し、地球規模の海洋大循環にも影響を及ぼす。北極海の淡水を起源毎に識別して理解するため、これまでに酸素同位体比(δ18O)やアルカリ度などの化学成分がトレーサーとして使用されてきた。アルカリ度はδ18Oに比べて高精度の測定が簡便であるため、より多くのデータを取得できるという利点があるが、淡水トレーサーとしての検証は不十分である。そこで本研究では、δ18Oとアルカリ度から求めた淡水識別の結果を比較することで、アルカリ度を用いた淡水識別方法を検証し確立させることを目的とした。
1997、2003~2022年における国際観測プロジェクトJoint Ocean Ice Study航海による海盆域の観測と、2022年のJAMSTEC「みらい」北極観測航海による沿岸域の観測で得られたδ18Oとアルカリ度のデータを使用した。
まず、δ18O・アルカリ度の組み合わせから、各対象海域における天水のアルカリ度のエンドメンバーを推定した。その結果、沿岸域では海域や時期によって天水のアルカリ度が異なっていたが、海盆域では天水のアルカリ度はほぼ一定の値を示した。このため、沿岸域では時折δ18Oを測定して天水のアルカリ度を海域毎に推定する必要があるが、海盆域ではアルカリ度のみから淡水割合の算出が可能であることが分かった。また、沿岸域でアルカリ度のみを用いた場合には算出結果に大きな誤差を生じることが明らかとなった。
以上を踏まえてアルカリ度から淡水割合の算出を行った結果、δ18Oとほぼ同程度の精度で淡水割合を算出できること、アルカリ度の高頻度観測によってδ18Oよりも詳細な時空間分解能での淡水識別が可能であることが示された。