11:00 〜 11:15
[AOS19-02] 1971年9月上旬の日本南岸異常潮位の発生メカニズム
★招待講演
キーワード:異常潮位、沿岸捕捉波、黒潮、沿岸海洋同化システム
沿岸社会の災害リスクの軽減のためには、沿岸域の危険な事象のメカニズムを明らかにすることが重要である。1971年9月上旬に東海から関東の広範な沿岸域において、顕著な気象擾乱がないにも関わらず、浸水被害が発生した。20~40cmの高い水位偏差が発生から一週間以上継続しており、高潮や波浪の影響では説明できず、当時の社会の注目を大きく集めた現象であった。先行研究により、この異常潮位をもたらした二つの要因として、台風通過後に励起された沿岸捕捉波と黒潮の暖水の接近が示唆されている。しかし、それらの要因は定性的な考察に留まっており、定量的な寄与は明らかではなかった。そこで本研究では、気象庁で現業運用している水平解像度2kmの沿岸同化システムと同等のシステムを用いて異常潮位の要因を調べた。同化実験は観測された高い海面水位偏差を再現した。加えて、風の黒潮の寄与を定量的に評価するための感度実験を実施した。風の寄与を調べる感度実験から、日本の東に通過した台風の北風により鹿島灘で励起された沿岸捕捉波が、2.3m/sの位相速度で日本南岸を西向きに伝播し、房総半島から相模湾にかけて海面水位が10~15cm上昇したことが明らかになった。黒潮の寄与を調べる感度実験からは、黒潮の暖水が駿河湾に接近することで、駿河湾から西側に30cmの海面水位上昇をもたらしたことが明らかになった。再現実験の海面水位変動は、黒潮と風のそれぞれの再現実験の海面水位変動の和でほぼ説明することができたことから、1971年9月上旬の異常潮位は、台風通過後に発生した沿岸捕捉波の伝播と黒潮の表層暖水の接近に伴う海面水位上昇の重ね合わせによって生じることが強く示唆される。本研究の知見は、将来の地球温暖化の下における日本沿岸の海面上昇の空間依存性を理解する一助となるだろう。