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[BCG05-02] クマハギがスギ幹からのメタン放出に与える影響

キーワード:メタン、森林、温室効果ガス、フラックス、炭素循環、土壌
メタンは二酸化炭素と並び、重要な温室効果ガスの一つである。森林は、大気中のメタンを土壌が吸収することから、メタンのシンクであると考えられてきた。一方で、土壌深部や樹木の幹内部で微生物のはたらきにより生成したメタンが、木の幹を介して大気中に放出されていることも明らかになりつつある。Moisan et al. (2024) によると、スギなどの裸子植物の幹から放出されるメタンの量は、他樹種に比べて極めて小さいと報告されている。しかしながら、スギ幹にはメタン生成菌が生息しており(Harada et al. 2024)、スギ材の潜在的なメタンの生成能力は他樹種と同等である(Epron et al. 2022)。加えて、スギ以外の樹種を対象とした先行研究では、幹表面の傷が見逃されてきたメタンのソースである可能性が指摘されており(Gorgolewski et al. 2022; Jeffrey et al. 2021)、このことはスギにも当てはまる可能性がある。そこで、クマによる樹皮剥ぎの被害を受けたスギの幹からかなりの量のメタンが放出されているのではないかと私たちは考えた。健全な幹に焦点を当ててきた先行研究とは異なり、私たちは特にクマハギの被害を受けたスギ幹について調べた。
フィールド調査は京都府北東部に位置する京都大学芦生研究林で行った。芦生研究林はスギが優占する冷温帯林である。私たちはクマハギの被害を受けたスギ、受けていないスギ、土壌のメタンフラックスを、微量ガス計(Li-7810, Licor, USA)を用いた動的閉鎖チャンバー法により計測した。計測された幹メタンフラックスは単木および林分レベルに、土壌メタンフラックスは林分レベルにスケールアップされた。さらに、幹内部の腐朽を検出するために、応力波速度測定器(Fakopp Enterprise Bt., Agfalva, Hungary)と貫入抵抗測定器(IML-RESI F-Series, IML, Germany)を用いて対象木の内部の状況を調べた。
クマハギの被害を受けていないスギの幹からのメタンフラックスは、ほとんどゼロであった。一方で、被害を受けた部分からのメタンフラックスは常に正の値を示し、最大で190 nmol m-2 s-1に達した。この値は、同じ調査地で計測された幹メタンフラックスに比べ、100倍以上大きかった(Epron et al. 2022; Epron & Mochidome 2024; Mochidome & Epron 2024)。林分レベルの推定では、スギ幹からのメタン放出量は、土壌によるメタンの吸収量の約17 %に相当した。個体間で比較すると、クマハギ被害木からのメタン放出量と幹直径との間には正の相関が認められた。さらに、同一個体内であっても、クマハギ被害部分のメタン放出量に10から380倍の差があった。これらの変動は、メタン拡散速度、生成量、樹皮や材に生息するメタン酸化菌によるメタン消費の変動に起因すると考えられる。こうしたメタン放出量の変動要因は、クマハギにより引き起こされる幹の腐朽が影響していると考察される。
本研究は、幹メタン放出の理解を深め、森林生態系における温室効果ガス動態の解明に貢献するものである。クマによる樹皮剥ぎが幹からのメタン放出に与える影響を明らかにし、森林メタン収支の推定精度向上に寄与する新たな知見を提供する。
フィールド調査は京都府北東部に位置する京都大学芦生研究林で行った。芦生研究林はスギが優占する冷温帯林である。私たちはクマハギの被害を受けたスギ、受けていないスギ、土壌のメタンフラックスを、微量ガス計(Li-7810, Licor, USA)を用いた動的閉鎖チャンバー法により計測した。計測された幹メタンフラックスは単木および林分レベルに、土壌メタンフラックスは林分レベルにスケールアップされた。さらに、幹内部の腐朽を検出するために、応力波速度測定器(Fakopp Enterprise Bt., Agfalva, Hungary)と貫入抵抗測定器(IML-RESI F-Series, IML, Germany)を用いて対象木の内部の状況を調べた。
クマハギの被害を受けていないスギの幹からのメタンフラックスは、ほとんどゼロであった。一方で、被害を受けた部分からのメタンフラックスは常に正の値を示し、最大で190 nmol m-2 s-1に達した。この値は、同じ調査地で計測された幹メタンフラックスに比べ、100倍以上大きかった(Epron et al. 2022; Epron & Mochidome 2024; Mochidome & Epron 2024)。林分レベルの推定では、スギ幹からのメタン放出量は、土壌によるメタンの吸収量の約17 %に相当した。個体間で比較すると、クマハギ被害木からのメタン放出量と幹直径との間には正の相関が認められた。さらに、同一個体内であっても、クマハギ被害部分のメタン放出量に10から380倍の差があった。これらの変動は、メタン拡散速度、生成量、樹皮や材に生息するメタン酸化菌によるメタン消費の変動に起因すると考えられる。こうしたメタン放出量の変動要因は、クマハギにより引き起こされる幹の腐朽が影響していると考察される。
本研究は、幹メタン放出の理解を深め、森林生態系における温室効果ガス動態の解明に貢献するものである。クマによる樹皮剥ぎが幹からのメタン放出に与える影響を明らかにし、森林メタン収支の推定精度向上に寄与する新たな知見を提供する。