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[HDS09-11] 自然災害に対する人々の認知と行動の可視化〜2024年の日本全国の調査の分析〜
キーワード:自然災害、認知と行動の乖離、防災行動、可視化、令和6年能登半島地震、南海トラフ地震臨時情報
地震を経験すると、一時的に防災意識や行動が高まるが、しばらくすると元の状態に収束してしまう。能登半島地震直後には、一時的に防災商品が売れたものの、次第に収束していく傾向がみられたと報告されていた。災害発生直後は、災害に対応しようとする意識や行動が高まるものの、時間の経過とともに元の状態に収束することが繰り返し報告されており、防災リテラシー構築の大きな課題となっている。
このような災害による社会現象の変動の長期的影響や、災害対応行動を妨げる要因を検討するため、5年間の継時的変化を計測する社会調査を計画した。本研究は、その1年目の調査として、調査フレームのデザインとデータの可視化を目的として実施された。とくに、災害における認知と行動の乖離の問題に加え、2024年1月の能登半島地震、8月の初の南海トラフ地震臨時情報といった社会現象の影響を検討することで、人々の災害対応行動の変動と行動変容を妨げる要因について考察する。
2024年12月に、インターネット調査会社の登録モニターを用いたWeb調査を実施した。47都道府県から、性別(男性・女性)×年代(20代、30代、40代、50代、60代以上)の10層で均等になるように各100名を抽出し、合計4,700名の回答者を募集した。調査では、地震の予期、ハザードマップの認識、防災行動など、災害の脆弱性を評価する質問を行った。
回答者のデモグラフィックをTable 1に示す。全国の調査結果の可視化は以下の通りである。人々の地震災害の発生予期に関して、70%以上の人が「30年以内に地震災害が発生しそうだ」と認識していた(Figure 1)。この割合は、洪水・内水などの他の災害と比べても高かった(χ2(16) = 5517.81, p < .001) 。次に、地震や洪水・内水のハザードマップを認識している人の割合は70%以上と高かった(Figure 2)。一方で、土砂災害などの他の災害のハザードマップを認識している人の割合は比較的低かった(χ2(16) = 3739.07, p < .001) 。避難所の所在については、90%近くの人がある程度認識していた(Figure 3)。避難計画については、避難所の認識がある人のうち70%以上が計画していたのに対し、認識がない人では11%に留まっていた(Figure 4)。ただし、避難所の認識がある人でも、具体的な計画を立てていた人は10%にとどまっていた。
現在、実行されている日常の防災行動は、33項目中、平均4.77件(SD = 4.92)に留まっていた(Figure 5)。このうち、能登半島地震後にあらたに、もしくはあらためて実行された行動は平均2.36件(SD = 3.74)であった。また、南海トラフ地震臨時情報後にあらたに、もしくはあらためて実行された行動は平均2.07件(SD = 3.69)であった。この防災行動の都道府県ごとの実行数をFigure 6に示した。現在の防災行動の実行数が多かったのは、宮城県、静岡県、神奈川県であった。能登半島地震後に防災行動をあらたに、もしくはあらためて取った数が多かったのは、石川県、愛媛県、千葉県であった。南海トラフ地震臨時情報を受けて防災行動をあらたに、もしくはあらためて取った数が多かったのは、愛媛県、静岡県、千葉県であった。さらに、南海トラフ地震臨時情報がもたらした影響の評価をFigure 7に示した。主な結果として、この情報を受けて人々の地震に対する危機感が高まったと評価されていた(M = 3.71, 95%CI = 3.69~3.74)。また、南海トラフ地震臨時情報に関する気象庁の対応については、「適切」と評価する傾向が高かった(M = 3.56, 95%CI = 3.54~3.59)。さらに、この情報後の交通機関の対応(M = 3.73, 95%CI = 3.70~3.76)や、一部のイベントの中止対応(M = 3.73, 95%CI = 3.70~3.76)についても「適切」と評価されていた。
人々の地震などの災害やハザードマップに対する認識は高いものの、防災行動の実行数は低かった。同様に、避難所の認識はあっても、具体的な避難計画を立てている人の割合は低かった。このように、人々が災害を認識していても具体的な行動につながらない、「認知と行動の乖離」の問題が示唆された。さらに、このような乖離には地域差が関与していると考えられる。防災行動の実行数において都道府県ごとに大きな違いがみられたことに加え、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報による防災行動の実行数への影響にも地域差がみられた。災害リスクの地理的な特性に加え、地域の社会特性の影響を考慮した「認知と行動の乖離」のさらなる検討が必要である。また、初めての南海トラフ地震臨時情報については、気象庁や公共交通機関の対応、イベント中止といった措置について、人々が「適切」と判断する傾向がみられた。この情報による悪影響は少ないと考えられる。一方で、このような災害に関連した経験を人々の防災行動の向上につなげる施策が、今後の課題である。
以上、日本全国を対象とした調査により、社会に存在する災害への脆弱性を可視化することができた。今後は、可視化によって指摘された認知と行動の乖離や災害対応の地域差の課題に対応するため、防災リテラシーの構築が求められる。
このような災害による社会現象の変動の長期的影響や、災害対応行動を妨げる要因を検討するため、5年間の継時的変化を計測する社会調査を計画した。本研究は、その1年目の調査として、調査フレームのデザインとデータの可視化を目的として実施された。とくに、災害における認知と行動の乖離の問題に加え、2024年1月の能登半島地震、8月の初の南海トラフ地震臨時情報といった社会現象の影響を検討することで、人々の災害対応行動の変動と行動変容を妨げる要因について考察する。
2024年12月に、インターネット調査会社の登録モニターを用いたWeb調査を実施した。47都道府県から、性別(男性・女性)×年代(20代、30代、40代、50代、60代以上)の10層で均等になるように各100名を抽出し、合計4,700名の回答者を募集した。調査では、地震の予期、ハザードマップの認識、防災行動など、災害の脆弱性を評価する質問を行った。
回答者のデモグラフィックをTable 1に示す。全国の調査結果の可視化は以下の通りである。人々の地震災害の発生予期に関して、70%以上の人が「30年以内に地震災害が発生しそうだ」と認識していた(Figure 1)。この割合は、洪水・内水などの他の災害と比べても高かった(χ2(16) = 5517.81, p < .001) 。次に、地震や洪水・内水のハザードマップを認識している人の割合は70%以上と高かった(Figure 2)。一方で、土砂災害などの他の災害のハザードマップを認識している人の割合は比較的低かった(χ2(16) = 3739.07, p < .001) 。避難所の所在については、90%近くの人がある程度認識していた(Figure 3)。避難計画については、避難所の認識がある人のうち70%以上が計画していたのに対し、認識がない人では11%に留まっていた(Figure 4)。ただし、避難所の認識がある人でも、具体的な計画を立てていた人は10%にとどまっていた。
現在、実行されている日常の防災行動は、33項目中、平均4.77件(SD = 4.92)に留まっていた(Figure 5)。このうち、能登半島地震後にあらたに、もしくはあらためて実行された行動は平均2.36件(SD = 3.74)であった。また、南海トラフ地震臨時情報後にあらたに、もしくはあらためて実行された行動は平均2.07件(SD = 3.69)であった。この防災行動の都道府県ごとの実行数をFigure 6に示した。現在の防災行動の実行数が多かったのは、宮城県、静岡県、神奈川県であった。能登半島地震後に防災行動をあらたに、もしくはあらためて取った数が多かったのは、石川県、愛媛県、千葉県であった。南海トラフ地震臨時情報を受けて防災行動をあらたに、もしくはあらためて取った数が多かったのは、愛媛県、静岡県、千葉県であった。さらに、南海トラフ地震臨時情報がもたらした影響の評価をFigure 7に示した。主な結果として、この情報を受けて人々の地震に対する危機感が高まったと評価されていた(M = 3.71, 95%CI = 3.69~3.74)。また、南海トラフ地震臨時情報に関する気象庁の対応については、「適切」と評価する傾向が高かった(M = 3.56, 95%CI = 3.54~3.59)。さらに、この情報後の交通機関の対応(M = 3.73, 95%CI = 3.70~3.76)や、一部のイベントの中止対応(M = 3.73, 95%CI = 3.70~3.76)についても「適切」と評価されていた。
人々の地震などの災害やハザードマップに対する認識は高いものの、防災行動の実行数は低かった。同様に、避難所の認識はあっても、具体的な避難計画を立てている人の割合は低かった。このように、人々が災害を認識していても具体的な行動につながらない、「認知と行動の乖離」の問題が示唆された。さらに、このような乖離には地域差が関与していると考えられる。防災行動の実行数において都道府県ごとに大きな違いがみられたことに加え、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報による防災行動の実行数への影響にも地域差がみられた。災害リスクの地理的な特性に加え、地域の社会特性の影響を考慮した「認知と行動の乖離」のさらなる検討が必要である。また、初めての南海トラフ地震臨時情報については、気象庁や公共交通機関の対応、イベント中止といった措置について、人々が「適切」と判断する傾向がみられた。この情報による悪影響は少ないと考えられる。一方で、このような災害に関連した経験を人々の防災行動の向上につなげる施策が、今後の課題である。
以上、日本全国を対象とした調査により、社会に存在する災害への脆弱性を可視化することができた。今後は、可視化によって指摘された認知と行動の乖離や災害対応の地域差の課題に対応するため、防災リテラシーの構築が求められる。