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[HDS11-P03] ハザードリスク評価のための高密度微動アレイ観測による地盤構造の解釈と意義
キーワード:ハザードリスク評価、地盤構造、微動アレイ観測
はじめに
地震防災のための地震動予測には,地震基盤から地表までの地盤の速度構造モデル(先名ほか,2023など)が用いられる.これらのモデルの多くは250mメッシュで構築されているが,実際の地盤,特に工学的基盤以浅の地盤構造は,このスケールよりも小さい範囲で変化する場合が多く,さらに高精度のモデルが必要とされている.一方,これらのモデルにおいて,東京低地・中川低地では,低地の中央部に比べて台地に近い地域でAVS30が大きくなっている.それぞれの地域は,沖積層の厚い「埋没谷底」と沖積層が薄い「埋没平坦面」(産総研,2021)に対応しており,中澤ほか(2023)は,埋没谷底の位置で周波数1Hz付近の振動の増幅が大きいことを報告している.このように地震動の増幅に大きく影響する低地の地下の埋没地形の分布を詳細に解明することは,首都直下地震,南海トラフの巨大地震等で想定される平野部の大都市の地震リスクの事前評価において重要であるが,埋没地形の分布範囲や特性の詳細の解明は,十分にはできていない.
本報告では,地盤モデルの高精度化を目指して関東地域の低地部(利根川・江戸川・桜川等の流域や台地内の谷底低地等)で実施された,低地や河川を横断する間隔30-100mの稠密・多点の微動アレイ観測(Cho et al(2013),先名・他(2024))で得られた,周波数0.5~2Hzの地震動増幅の要因となる,地下の沖積層基底面相当のS波速度構造の詳細な不整形構造とそれに伴う地盤の振動特性について述べる.
高密度微動アレイ観測から推定される地盤構造の解釈と意義
① 地形・地質情報の補間・詳細化
微動探査で得られるS波速度構造の速度層(300m/sなど)の上面深度は,浅い平坦な箇所と深い谷状の箇所から成る.AVS30は,前者で大きく後者で小さい.周辺に点在するボーリングデータと対応させると,前者では沖積層基底面が浅く,後者では深い。これは,東京低地と同様に,S波速度構造は埋没平坦面と埋没谷底に対応した構造を示している.沖積層基底面が侵食面であることを考えると,その形状は堆積層のような水平性を示さないと考えられる.このような埋没地形面の構造を離散的なボーリングデータのみから推定する作業には原理的に困難で,構造の推定には大きな認識論的不確実性が伴い、地形情報からの推定も難しい.稠密な微動観測データで得られたS波速度構造とAVSを用いて離散的なボーリングの情報を補間することにより,沖積層基底面の成す埋没平坦面と埋没谷の分布範囲,2つの地形間の斜面の位置と傾斜など,詳細な3次元地盤構造モデルの構築に必要な定量的で詳細な地盤情報を得ることができる.
➁ 台地・低地の地盤の形成過程の解明への寄与
このような埋没谷は氷期の海水準低下のピーク期に,埋没平坦面はその前の海水準が低下しつつある時期に形成されたと推定される.今回の調査により,東京低地や中川低地以外の南関東の台地部周辺ないしその中の谷底低地の地下にも同様の埋没地形面が分布することが示された.これは,この地域の第四紀後期の地史の解明において重要な知見である.今後,埋没地形面の広域対比や形成時期等の検討が望まれる.
③ 地震動予測の精度向上への貢献
厚い沖積層が分布し,家屋に被害をもたらす周波数帯の揺れの増幅が大きい埋没谷と,この周波数帯の地震動増幅が大きくない埋没平坦面の分布範囲を特定することは,人口・構造物が密集する都市化した沖積低地の地震動を高精度で予測するために必須の課題である.稠密微動探査により,他の手法より低予算で効率的にこの情報を得ることができる.
今後の展開
微動観測は,調査・解析者の技量などによらない認識論的不確実性の小さい手法であり.場所の制約が弱く,ボーリングより低予算で効率的に実施できる.多くの地点で微動観測データを得ることは,地震防災のみでなく,基礎的な地盤構造の理解においても有効である.
地震防災のための地震動予測には,地震基盤から地表までの地盤の速度構造モデル(先名ほか,2023など)が用いられる.これらのモデルの多くは250mメッシュで構築されているが,実際の地盤,特に工学的基盤以浅の地盤構造は,このスケールよりも小さい範囲で変化する場合が多く,さらに高精度のモデルが必要とされている.一方,これらのモデルにおいて,東京低地・中川低地では,低地の中央部に比べて台地に近い地域でAVS30が大きくなっている.それぞれの地域は,沖積層の厚い「埋没谷底」と沖積層が薄い「埋没平坦面」(産総研,2021)に対応しており,中澤ほか(2023)は,埋没谷底の位置で周波数1Hz付近の振動の増幅が大きいことを報告している.このように地震動の増幅に大きく影響する低地の地下の埋没地形の分布を詳細に解明することは,首都直下地震,南海トラフの巨大地震等で想定される平野部の大都市の地震リスクの事前評価において重要であるが,埋没地形の分布範囲や特性の詳細の解明は,十分にはできていない.
本報告では,地盤モデルの高精度化を目指して関東地域の低地部(利根川・江戸川・桜川等の流域や台地内の谷底低地等)で実施された,低地や河川を横断する間隔30-100mの稠密・多点の微動アレイ観測(Cho et al(2013),先名・他(2024))で得られた,周波数0.5~2Hzの地震動増幅の要因となる,地下の沖積層基底面相当のS波速度構造の詳細な不整形構造とそれに伴う地盤の振動特性について述べる.
高密度微動アレイ観測から推定される地盤構造の解釈と意義
① 地形・地質情報の補間・詳細化
微動探査で得られるS波速度構造の速度層(300m/sなど)の上面深度は,浅い平坦な箇所と深い谷状の箇所から成る.AVS30は,前者で大きく後者で小さい.周辺に点在するボーリングデータと対応させると,前者では沖積層基底面が浅く,後者では深い。これは,東京低地と同様に,S波速度構造は埋没平坦面と埋没谷底に対応した構造を示している.沖積層基底面が侵食面であることを考えると,その形状は堆積層のような水平性を示さないと考えられる.このような埋没地形面の構造を離散的なボーリングデータのみから推定する作業には原理的に困難で,構造の推定には大きな認識論的不確実性が伴い、地形情報からの推定も難しい.稠密な微動観測データで得られたS波速度構造とAVSを用いて離散的なボーリングの情報を補間することにより,沖積層基底面の成す埋没平坦面と埋没谷の分布範囲,2つの地形間の斜面の位置と傾斜など,詳細な3次元地盤構造モデルの構築に必要な定量的で詳細な地盤情報を得ることができる.
➁ 台地・低地の地盤の形成過程の解明への寄与
このような埋没谷は氷期の海水準低下のピーク期に,埋没平坦面はその前の海水準が低下しつつある時期に形成されたと推定される.今回の調査により,東京低地や中川低地以外の南関東の台地部周辺ないしその中の谷底低地の地下にも同様の埋没地形面が分布することが示された.これは,この地域の第四紀後期の地史の解明において重要な知見である.今後,埋没地形面の広域対比や形成時期等の検討が望まれる.
③ 地震動予測の精度向上への貢献
厚い沖積層が分布し,家屋に被害をもたらす周波数帯の揺れの増幅が大きい埋没谷と,この周波数帯の地震動増幅が大きくない埋没平坦面の分布範囲を特定することは,人口・構造物が密集する都市化した沖積低地の地震動を高精度で予測するために必須の課題である.稠密微動探査により,他の手法より低予算で効率的にこの情報を得ることができる.
今後の展開
微動観測は,調査・解析者の技量などによらない認識論的不確実性の小さい手法であり.場所の制約が弱く,ボーリングより低予算で効率的に実施できる.多くの地点で微動観測データを得ることは,地震防災のみでなく,基礎的な地盤構造の理解においても有効である.
