日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] Geosciences at the intersection between disasters and agriculture

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、Hadmoko Danang Sri(Universitas Gadjah Mada)

17:15 〜 19:15

[HGG01-P02] SfM-MVS技術を用いたメラピ火山およびスメル火山における火山砕屑物の密度および粒径分布の評価

*大海 陸人1Gomez Christopher1、Saptra Aditya2 (1.神戸大学大学院 海事科学研究科 海域火山リスク科学研究室、2.スラカルタ・ムハマディヤ大学 地理学部)

キーワード:SfM-MVS、かさ密度

1. はじめに
火山地域における土砂移動は、土石流や火山泥流(ラハール)などの災害発生リスクを高めるだけでなく、流域環境にも大きな影響を及ぼす。そのため、火山砕屑物の密度や粒径分布を正確に把握することは、防災や流域管理において重要である。従来の密度測定手法(コアカッター法、砂置換法など)は、掘削や試料の準備に手間を要し、広範囲や時間的変化を評価するには限界があった。また、従来法では粒子間隔の圧縮・膨張が考慮されず、自然状態での密度変動を十分に反映できないという課題がある。

本研究では、インドネシアのMerapi火山とSemeru火山を対象に、Structure-from-Motion Multi-View Stereo(SfM-MVS)技術を用いたかさ密度推定手法の適用性を検討した。本手法は、粒子間隔の圧縮・膨張を反映した密度データを取得できるという強みを持ち、現場における非破壊的な測定に適している。さらに、採取試料の粒径分布を分析し、火山砕屑物の空間的異質性や堆積特性を評価する枠組みを示す。

2. 研究方法
2.1. 調査地点とサンプリング
本研究では、以下の地域で調査を実施した。

Merapi火山
Gendol川流域 Krasak川流域
Semeru火山
Curah Lengkong周辺

各調査地点で、以下の手順で測定とサンプリングを実施した。

測定エリアの設定
50cm×25cmの矩形枠を設置し、測定領域を明確にした。

初期撮影(SfM用画像撮影)
測定領域を上方および斜め方向から多角的に撮影し、SfM-MVS解析に用いる画像データを取得。

堆積物の掘削と試料回収
設定エリア内の堆積物を慎重に掘削し、崩落が最小限になるよう試料を採取。回収した試料は乾燥後の粒径分析および重量測定に使用。

事後撮影(SfM用画像撮影)
掘削後の地形を多角的に撮影し、掘削前後の体積差分解析に必要な3Dモデルを構築。
2.2. SfM-MVS解析およびバルク密度推定
撮影した画像をAgisoft Metashape-Proを用いてSfM-MVS解析を実施し、3D点群データを作成した。その後、CloudCompareを用いて掘削前後の3Dモデルの差分から体積を算出し、乾燥重量との比較によってかさ密度を推定した。本手法の強みは、粒子間隔の圧縮・膨張が反映された密度データを取得できる点にあり、従来の測定手法に比べて自然状態に近い密度推定が可能である。
また、基準点(GCP)を用いた誤差解析を行い、RMS誤差およびMAE誤差を算出することで、SfM-MVSモデルの精度を評価した。
2.3. 粒径分布解析
回収した堆積物は、乾燥後にふるい分けを行い、各粒径区分ごとの重量比を算出。粗粒・細粒成分の比率がかさ密度や堆積特性に与える影響を考察した。

3. 結果と考察
3.1. SfM-MVSによる体積測定およびバルク密度推定
Merapi火山(Gendol川・Krasak川流域)およびSemeru火山(Curah Lengkong周辺)で実施したSfM-MVS解析では、野外環境下であっても高精度な3Dモデルを構築し、掘削前後の体積差分からかさ密度を推定できることが確認された。本手法の適用により、粒子間の隙間や圧縮・膨張状態が反映された密度データを取得できることが示唆され、より現場の実態に即した密度推定が可能となった。
3.2. 粒径分布および堆積特性
粒径分析の結果、調査地点ごとに粗粒優勢・細粒優勢の差異が見られた。これは降雨や流速の違いによる選択的堆積の影響を反映している可能性が高い。
また、粗粒が多い地点ではかさ密度が高く、細粒優勢な地点では低くなる傾向がみられた。今後、含水率や空隙率を考慮した解析を行うことで、より高精度な密度評価が可能になると考えられる。

4. 結論と今後の展望
本研究では、Merapi火山およびSemeru火山を対象に、粒子間隔の圧縮・膨張を反映したSfM-MVS密度測定手法を適用し、粒径分布解析との統合的な評価を試みた。
野外環境下でも高精度な3Dモデルを構築し、堆積物の体積およびかさ密度を推定できることが確認された。さらに、粒径分析結果との比較により、火山砕屑物の堆積特性や密度変動のメカニズムについて有用なデータを得ることができた。

今後の課題として、以下の点を挙げる。
含水率や空隙率を考慮した精緻な密度モデルの構築 時系列調査による土砂移動ダイナミクスの把握 他の火山地域との比較調査
本手法のさらなる改良と適用範囲の拡大により、火山地域における土砂災害リスク評価や流域管理への貢献が期待される。特に、粒子間の空隙状態を考慮した密度測定が可能な技術として、防災・減災のための有用なツールとなる可能性がある。