日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE13] 応用地質学の新展開

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:竹下 徹(パシフィックコンサルタンツ(株)・国土基盤事業本部 顧問)、太田 岳洋(山口大学大学院創成科学研究科地球科学分野)、北田 奈緒子(一般財団法人 GRI財団)

17:15 〜 19:15

[HRE13-P02] CNNを用いた表層崩壊リスク評価手法の適用と評価

*水谷 航1菊地 輝行1 (1.公立諏訪東京理科大学)

1. はじめに
 近年、気候変動に伴う豪雨の頻発で、斜面崩壊が社会・経済に甚大な被害をもたらす ようになっている。従来、深層崩壊リスク評価には菊地ら(2023)によって CNN を用 いた 8 種類の地形特性画像を用いたモデルが有効とされたが、表層崩壊は教師データ が比較的豊富であるため、同手法の転用が期待される。また、データ取得や計算コスト の点から、より簡易な CI マップ単独入力モデルとの比較も重要な課題となる。本研究 は、両モデルの性能を比較し、実運用に適した表層崩壊リスク評価手法の確立を目指す ものである。
2. 解析手法
 本研究では、入力画像の違いのみを変えた 2 種類の CNN モデルを構築した。1 つは DEM から算出した 8 種類の地形特性指標を組み合わせたモデル、もう 1 つは中央開発 社提供の CI マップ単独を入力とするモデルである。各入力画像は 100×100 ピクセル のタイルに分割し、Neural Network Console(NNC)の構造自動探索機能を用いて 100 モデルを探索した。
3. 結果
 検証およびテスト領域での評価の結果、8 種類指標モデルは Recall(検出率)が高い 反面、False Positive の増加により Accuracy にトレードオフが見られた。一方、CI マ ップモデルはやや低い Recall ながらも、Accuracy は 8 種類指標モデルと同程度(0.73) を示し、入力データの簡易化による運用面での利点が明確となった。 さらに、CI マップモデルは計算コストやデータ取得の手間を大幅に削減できるため、 広域的な崩壊リスク評価の適用に向いた手法である可能性が示唆された。一方、8 種類 指標モデルは特に Recall を重視した場合に、表層崩壊危険箇所をより高い確率で検出 できる傾向があり、安全側の評価が求められる場面では有用と考えられる。 両者を比較すると、8 種類指標モデルは高精度な判定が可能だが、データ準備や計算 負荷が課題となる。一方、CI マップモデルは手軽に適用できるが、予測精度の観点で は若干の低下が見られたため、利用シーンに応じた使い分けが重要である。 また、本研究の成果は、これまで深層崩壊に焦点を当てた CNN モデルの手法が、表 層崩壊のリスク評価にも十分適用可能であることを示しており、CNN の有用性がより 広範な崩壊現象の解析へ拡大できる可能性を示唆している。
4. 結論
 本研究では、深層崩壊向けの CNN モデルを表層崩壊のリスク評価に転用し、8 種類 の地形特性指標を用いたモデルと CI マップ単独モデルの比較を行った。結果として、 8 種類指標モデルは高い Recall を示すが誤判定が多く、CI マップモデルは簡易な入力 ながらも Accuracy が同程度であることが確認された。 これにより、実運用を考慮した際、CI マップ単独でも実用的なリスク評価が可能で あることが示唆された。また、CNN を用いた手法が表層崩壊にも適用可能であること が、本研究の成果から明らかになった。今後は、対象地域の拡大やカッティングサイズ の変更、さらにはアンサンブル学習等による誤判定低減を通じ、より高精度かつ汎用性 の高いモデルの構築を目指す。