日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE13] 応用地質学の新展開

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:竹下 徹(パシフィックコンサルタンツ(株)・国土基盤事業本部 顧問)、太田 岳洋(山口大学大学院創成科学研究科地球科学分野)、北田 奈緒子(一般財団法人 GRI財団)

17:15 〜 19:15

[HRE13-P04] 応用地質学と地盤工学の協働に向けた一提案:地質学の基礎の普及

*竹下 徹1 (1.パシフィックコンサルタンツ(株)・国土基盤事業本部 顧問)

キーワード:応用地質学と地盤工学の協働、地質学の基礎の普及、大雨土砂災害の減災、高レベル放射性廃棄物の地層処分、3次元地質構造の表現法、岩石鉱物の準分類者育成コース

近年、地球温暖化に伴うと考えられている集中豪雨が毎年のように繰り返され、土砂災害が頻発している。想定外の大雨や異常な高時間降雨量に起因する河川の氾濫や土石流に伴う災害は避けられないとも言える一方、災害が高い確度で予想される地域の住宅建設や道路の設計等に問題はなかったのか疑問が残る。また、世界的なカーボンニュートラルの流れの中で、原発再稼働の前提となる放射性廃棄物の地層処分研究の推進が急務であるほか、二酸化炭素地中貯留が注目されている。さらに、化石燃料の代替エネルギーとして、地熱発電や洋上風力発電等の再生可能エネルギーの開発が進んでいる。これらの自然災害防災、地層処分、二酸化炭素地中貯留および地熱開発は、応用地質学を基礎として実現される。このように最近、応用地質学の需要が高まっている一方、課題を解決出来る人材が十分育っていない。このような状況の中、最近地盤工学会は、「応用地質学と地盤工学の協働について―地盤工学からの提言―」という学会としての提言を行った(2023年7月)。この提言は、近年頻発する地盤災害は、応用地質学と地盤工学を専門とする者がこれまで十分協働して来なかったことに原因の一端があるという、従来からも指摘されて来た問題点を解決するために発せられているが、上記した応用地質学・地盤工学の需要の高まりや人材育成のための教育の危機がその背景にある。
私は、長年複数の大学の地質学科(現在、学科名は地球惑星科学科に名称変更されている)で教育および研究に携わって来た。私の研究は直接応用地質学に関わるものでなく、純粋に理学的な研究であった一方、研究室の卒業生は地質学の研究者以外に応用地質学関連の職を会社・官公庁で得た。私自身も退職後、建設・地質コンサルタントの外部顧問として活動している。そのような経歴を通し、私は日本における応用地質学と地盤工学の乖離の問題や、地質学教育の危機的状況を以前から憂慮し、解決策を常に考えて来た。その結果、一個人として出来ることは「地質学の基礎の普及」のために努力する以外にないという結論に達した。実際の所、学問の大衆化は国全体の学問のレベルの向上に意外に大きな力を持っている。例えば、米国では地質学や地形学が国民の身近にあるが、それはNational Geographic誌やテレビ放送が大きく影響している。同様に、1990年代にヨーロッパで始まったジオパーク認定プログラムは、ヨーロッパの地質学の大衆化に大きな役割を果たしている。
応用地質学と地盤工学の協働は、それぞれの分野を専門にしている人が、互いの分野を学ぶことから始まる。最近、私は地質学を理解してもらうため、野外地質観察を企画・実施するほか、砂箱実験による褶曲・逆断層の形成や発泡スチロールを地形に見立て3元地質構造を表現する実験(高橋雅樹, 2017, GSJ 地質ニュース Vol. 6, No. 1)を初心者に対して行っている。また、私は大学退職直後にパラタクソノミスト養成講座岩石初級(https://www.museum.hokudai.ac.jp/lifelongeducation/parataxonomist/)を一般市民向けに開講したが、そこで知ったことは現在、多くの方が地質学に強い関心を持っていることであった。したがって、今後、地道に市民講座を実施し、それによって市民の自然災害防災への知識、放射性廃棄物の地層処分等の基礎知識を高めていくことは可能であると考える。