日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG34] ラジオアイソトープ移行:福島第一原発事故環境動態からの展開

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:津旨 大輔(筑波大学)、赤田 尚史(弘前大学)、加藤 弘亮(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、乙坂 重嘉(東京大学大気海洋研究所)、座長:乙坂 重嘉(東京大学大気海洋研究所)、津旨 大輔(筑波大学)

14:20 〜 14:35

[MAG34-03] 森林源流域でのリター除去による137Cs流出の変化

*永田 祐太郎1恩田 裕一2、平松 翼3、戸村 光佑1榊原 厚一3高橋 純子2 (1.筑波大学 地球科学学位プログラム、2.筑波大学 放射線・アイソトープ地球システム研究センター、3.信州大学 理学部理学科)


キーワード:Cs-137、森林源流域、溶存有機炭素、除染

福島第一原子力発電所事故の影響を受けた森林では宅地から20mの範囲でしか除染が行われておらずその大部分が未除染のままとなっている。森林からは河川を通じて137Csが流出しており出水時には溶存態137Csの濃度が上昇することが観測されている。その要因として地下水面の上昇による土壌浸透水の流出や堆積リターからの溶脱が考えられている。またK+との置換による懸濁態からの脱離も溶存態137Csの起源として考えられている。そこで本研究では福島県川俣町山木屋地区の森林源流域において河道近傍のリターを除去することで堆積リターが流域からの137Cs流出に及ぼす影響を調査した。137Cs濃度の他にK+、溶存有機炭素(DOC)濃度を測定しそれぞれイオン交換、有機物溶出の指標とした。サンプリングは1か月毎に行い降雨出水時には追加で集中観測を行った。
 出水イベントでのサンプリングは除染前に2024年7月14日から15日かけての総降水量51.5mmのイベント、除染後に2024年11月2日から3日にかけての総降雨量28mmのイベントで行った。除染前後で流量当たりの137Cs流出量を比較すると溶存態137Csが0.0069 Bq/Lから0.0178 Bq/Lと2.5倍に上昇し、懸濁態137Csは45.891 Bq/Lから40.112 Bq/Lと大きな変化はみられなかった。除染前の出水時では平水時の平均濃度と比較して溶存態137Cs、DOCが10倍、K+濃度が5倍に上昇し、137Cs、DOC濃度は流量ピーク後も平水時より高い値を維持していた。 除染後では溶存態137Csが3倍、DOCが4倍、K+が2.5倍と濃度の上昇率が低下した。また出水イベントでの溶存態・懸濁態137Cs流出量は除染前で422 Bq、49,151 Bqで対し除染後は222 Bq、138,574 Bqと溶存態での流出量が減少し懸濁態での流出量が増加、懸濁態の割合が99.15%から99.84%へと増加した。出水ピーク後に溶存態137CsとDOC濃度は高濃度を維持し、K+濃度は平水時平均まで低下したことから出水時の溶存態137Cs濃度上昇の要因としてはイオン交換よりも有機物からの溶出の影響が大きいことが考えられる。
 これらの結果から,河道近傍のリターを除去することが出水時の溶存態137Cs濃度上昇の程度を低下させる可能性が示唆され、リター被覆がなくなることで流域での土砂生産が活発化し懸濁態137Csの流出量が増加することが確認された。一方平水時においては懸濁態137Cs流出量に変化が見られないのにも関わらず溶存態137Cs濃度が上昇し、DOC濃度も上昇していたことからリター除去による地温の上昇により堆積有機物の分解が加速し溶存態137Csが溶出していることが示唆された。