日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI31] 情報地球惑星科学とデータ利活用

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、村田 健史(情報通信研究機構)、深沢 圭一郎(総合地球環境学研究所)、木戸 ゆかり(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、村田 健史(情報通信研究機構)

11:00 〜 11:15

[MGI31-07] 赤色立体地図による湯之奥金山遺跡の人工地形評価

*小俣 珠乃1,2、小松鈴 美鈴3千葉 達朗4、猪狩 祥平4、鈴木 太郎4、伊藤 佳世3、林 忠誉5,8、熊谷 洸希5,7田中 香津生5,6木戸 ゆかり1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.日本地球科学教育普及協会、3.甲斐黄金村・湯之奥金山博物館、4.アジア航測株式会社、5.加速キッチン、6.早稲田大学、7.東京大学、8.University College London)

キーワード:湯之奥金山、赤色立体地図

湯之奥金山は山梨県峡南地域毛無山に存在する中山,内山,茅小屋金山の総称で,戦国時代から江戸時代にかけて最盛期を迎えた金山遺跡である.地形学的には天子山地内毛無山の山腹にあり,地質学的には甲府盆地の南東側に広がる御坂山地から続く地層の一角にある.日本列島の地質構造の観点で湯之奥金山を見ると,金鉱床ができた地質学的経緯は少し複雑である.湯之奥金山を含む地域は南部フォッサマグナと呼ばれ,日本列島の形成過程と大きく関わっている.

筆者らは,湯之奥金山の研究調査および次世代向け教育活動を通じて,湯之奥金山の歴史的,地質的価値について情報を集め共有してきた.その際,web公開されている様々な地形図を解析した際に,湯之奥金山遺跡地域だけでなく,遺跡周辺の斜面全体が自然地形と異なっている特徴が見られたため,今回,高精度赤色立体地図を制作することで,遺跡斜面についてより詳細な調査を実施した.

本研究では、既往の航空レーザ測量成果を基にして,湯之奥金山周辺地域においてメッシュサイズ25cmおよび湯之奥金山から流れ出す下部川および周辺の栃代川,雨河内川流域を含む範囲はメッシュサイズ50cmの赤色立体地図を作成した.特にメッシュサイズ25cmの赤色立体地図は、1989 年から1991年の調査時に作成された測量地図と比較しても,中山,茅小屋,内山金山に見られるテラス地形とよく整合していた.

湯之奥金山一帯は風化しやすい地質で構成された地域にも関わらず,中山金山を構成する毛無山南側斜面一帯は風化による地層の崩れもほとんど見られず,凹凸の非常に少ない斜面となっている.その他に平坦地形や坑道、等高線に並行に人為的に作成されたと見られる数多くの筋が見られた。この筋は現代の鉱山開発でも似たような筋が見られ,山の上から下にかけて,等高線に沿って斜面が削り取られた痕跡を示唆するものである.これらの斜面が人為的だとすると,斜面は中山金山の人工的に造成された平面などの基盤部に当たる地形であるので,造成より前の段階で斜面ができているはずである.中山金山では,現地に残る陶器のかけらが15世紀後半以降のものであり,16世紀の初頭から露頭掘の採掘が開始したとされている.そうすると,この斜面の造成は坑道掘に先立つはずで,16世紀の初頭かその前の段階で,中山金山域の斜面は造成されたと考えられる.
現在の中山金山遺跡と指定されているエリアはテラスの見られる地域を中心した約16ヘクタールであり,テラスなどの人為的な地形改変の規模は,この範囲に留まると考えられている.しかし,今回作成した赤色立体地図を見ると,人工的な地形改変はテラスのみにとどまらず,毛無山登山道の斜面全体に及んでいる.広さにすると,東西約3km,南北約1.5km,標高900mから1,850m,面積にして約150ヘクタールと,非常に大規模である可能性が高いと考えられる.

本研究は公益財団法人科学技術広報財団が一般財団法人新技術振興渡辺記念会、令和6年度上期の研究助成を受けて実施された。