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[MIS10-02] 江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物に使われている石材の産地推定

キーワード:文化地質学、帯磁率、文化財、石材、山陰海岸ジオパーク、ジオパーク
江戸時代末期に,現在の鳥取市青谷地区を中心に活躍した石工である尾崎六朗兵衛(通称「川六」,生年不明-慶応元(1865)年没:鳥取市あおや郷土館,2016)は,地元産の安山岩を用いて狛犬や灯籠を作製したとされている(大森,2007)。しかし,川六の作品について岩石学的な記載はされておらず,使われている岩石の産地は明らかとなっていなかった。そこで榎村ほか(2025)は,川六作品の石造物の肉眼観察を行い,石材は安山岩と玄武岩に大別できることを明らかにした。本発表では,川六の石造物と露頭について,,岩石記載と帯磁率を比較することで,石材産地の候補を推定する。本研究は,江戸時代末期の因幡地方における,石材という地質資源とその消費の一端を明らかにするための基礎資料となるものである。
調査地の地質は,鳥取市青谷町亀尻地区を模式地とする鮮新世亀尻玄武岩を,鮮新世鉢伏安山岩と呼ばれる安山岩質溶岩が覆っており,各溶岩流でできた山の合間に河川が流れ,平野部は河川堆積物が堆積している(村山・大沢,1957)。亀尻玄武岩は,上部層が玄武岩,下部層が粗粒玄武岩である(村山・大沢,1957)。
調査対象は,鳥取市あおや郷土館(2016)の川六製品のリストにある38基の石造物と,鳥取市青谷町亀尻地区の露頭である。石造物は鳥取県鳥取市西部と鳥取県湯梨浜町東部に分布している。露頭は通称「亀尻石」の採石地跡である。調査では,岩石の肉眼観察の上,帯磁率計測と検鏡記載を行った。帯磁率計測の方法は,岩石の表面が出来るだけ平らな箇所で,帯磁率計のセンサー中央部から石造物の端の半径が 64 mm以上,石造物の厚さが 38 mm以上になる場所を選定し,20回測定し平均値を求めた(Emura et al., 2024)。
薄片観察の結果,亀尻玄武岩下部層の岩石は等粒状組織で,斜長石・橄欖石・普通輝石を含み、それらの大きさは最大約2 mm であった。亀尻玄武岩下部層は等粒状組織であったが、本研究では,先行研究を踏襲して便宜上玄武岩と呼ぶ。亀尻玄武岩下部層と,玄武岩の石造物の一部(多くの地蔵尊と狛犬)の岩相は類似している。これらの石造物の帯磁率の20回測定の平均値の最小値は2.58×10-3[SI] ,最大値は5.79×10-3[SI],亀尻玄武岩下部層の露頭の帯磁率は4.18×10-3[SI]である。岩相は両者とも似ていたが、13点の石造物部材と露頭の帯磁率の平均値においてT検定を行ったところ,有意差がある。この結果からは,露頭の岩石は川六の石造物の一部に使われていることは言えない。しかし,露頭の測定箇所は1箇所のみであることや,岩相自体は似ていることから更にデータを蓄積し再検討したい。今後の展望として,石材の産地候補となるほかの露頭を探し,石造物との比較を行う予定である。
引用文献 : Emura,A. et al.:Magnetic susceptibility measurement using simulated rock samples and application to the stone used in Himeji Castle, a World heritage site. presented at International Geological Congress ; August 26,2024 ; Busan。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平:江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物における石材の特徴,第8回文化地質研究会学術大会:2025年3月;豊岡。村山正朗・大沢穠(1957):5 萬分の 1 地質図幅説明書 鳥取北部・鳥取南部。大森昌衛(2007):石工物語(8)一山陰地方の石材と石工一。65ページ,地学教育と科学運動,55。鳥取市あおや郷土館(2016):没後150年記念川六因州が誇る幕末の名石工。
調査地の地質は,鳥取市青谷町亀尻地区を模式地とする鮮新世亀尻玄武岩を,鮮新世鉢伏安山岩と呼ばれる安山岩質溶岩が覆っており,各溶岩流でできた山の合間に河川が流れ,平野部は河川堆積物が堆積している(村山・大沢,1957)。亀尻玄武岩は,上部層が玄武岩,下部層が粗粒玄武岩である(村山・大沢,1957)。
調査対象は,鳥取市あおや郷土館(2016)の川六製品のリストにある38基の石造物と,鳥取市青谷町亀尻地区の露頭である。石造物は鳥取県鳥取市西部と鳥取県湯梨浜町東部に分布している。露頭は通称「亀尻石」の採石地跡である。調査では,岩石の肉眼観察の上,帯磁率計測と検鏡記載を行った。帯磁率計測の方法は,岩石の表面が出来るだけ平らな箇所で,帯磁率計のセンサー中央部から石造物の端の半径が 64 mm以上,石造物の厚さが 38 mm以上になる場所を選定し,20回測定し平均値を求めた(Emura et al., 2024)。
薄片観察の結果,亀尻玄武岩下部層の岩石は等粒状組織で,斜長石・橄欖石・普通輝石を含み、それらの大きさは最大約2 mm であった。亀尻玄武岩下部層は等粒状組織であったが、本研究では,先行研究を踏襲して便宜上玄武岩と呼ぶ。亀尻玄武岩下部層と,玄武岩の石造物の一部(多くの地蔵尊と狛犬)の岩相は類似している。これらの石造物の帯磁率の20回測定の平均値の最小値は2.58×10-3[SI] ,最大値は5.79×10-3[SI],亀尻玄武岩下部層の露頭の帯磁率は4.18×10-3[SI]である。岩相は両者とも似ていたが、13点の石造物部材と露頭の帯磁率の平均値においてT検定を行ったところ,有意差がある。この結果からは,露頭の岩石は川六の石造物の一部に使われていることは言えない。しかし,露頭の測定箇所は1箇所のみであることや,岩相自体は似ていることから更にデータを蓄積し再検討したい。今後の展望として,石材の産地候補となるほかの露頭を探し,石造物との比較を行う予定である。
引用文献 : Emura,A. et al.:Magnetic susceptibility measurement using simulated rock samples and application to the stone used in Himeji Castle, a World heritage site. presented at International Geological Congress ; August 26,2024 ; Busan。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平:江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物における石材の特徴,第8回文化地質研究会学術大会:2025年3月;豊岡。村山正朗・大沢穠(1957):5 萬分の 1 地質図幅説明書 鳥取北部・鳥取南部。大森昌衛(2007):石工物語(8)一山陰地方の石材と石工一。65ページ,地学教育と科学運動,55。鳥取市あおや郷土館(2016):没後150年記念川六因州が誇る幕末の名石工。