日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 山の科学

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、今野 明咲香(常葉大学)

17:15 〜 19:15

[MIS12-P05] 大井川中流塩郷堰堤下流における令和4年台風第14号による流量増加とその砂礫碓への影響

*今野 明咲香1 (1.常葉大学)

キーワード:大井川、ダム建設、砂礫碓、流量増加

大井川は,上流に赤石山脈の間ノ岳を持つ急流河川であり,河川内には網状流路が発達している。1900年代に流域全域にわたり多数のダムや堰堤が建設されたことにより,水量は著しく減少した。特に,1960年に完成した塩郷堰堤直下の鵜山の七曲り地域では,激しい取水により下流約22㎞にわたってほとんど水が流れない「河原砂漠」と化した(蔵治・溝口,2007)。その後「水返せ」運動という住民運動によりわずかに放流されるようにはなったものの,本来川に流れるはずの水の90%を送水管へ流出させることが認められており,依然として水量は少ない状況である。これまで発表者は,塩郷ダムの直下で樹木が繁茂している砂礫碓に着目し,空中写真の判読やレベル測量,礫径の計測を行い,この砂礫碓がいつから,どのようにして形成されたか,塩郷堰堤建設によって調整された水量と比較して検討してきた。本発表ではそれらの結果に加えて,2022年9月から設置したインターバルカメラでの水位変化記録と流域の水量データを比較し,どのような水量増加イベントで砂礫碓が沈水するのかを明らかにし,河畔林が成立した砂礫碓への影響を検討した。
砂礫碓に生育する樹木に設置したインターバルカメラで,2022年9月16日~2023年3月3日まで,10分間隔で定点撮影を行った。撮影期間全体を通して河畔林付近にはほぼ河川水域は観察されなかったが,2022年9月18日に鹿児島に上陸した令和4年台風第14号の影響による水量増加の影響で,砂礫碓の広範囲が濁流により沈水した。この時の流量変化を知るために約15㎞下流の神座観測所の流量を調べたところ,台風直前の流量は160m3/sであり,台風が接近した9月23日20時頃から急激に流量が増加し9月24日6時に最大値4134 m3/sを記録した。
河川から比高2m以上の場所に成立した河畔林にまで水位が上昇したかどうかは,インターバルカメラでは確認できなかったが,その後の現地踏査でも,大きく植生が攪乱された様子は見られなかったことから,ダム建設以降に定着した河畔林は,今回の台風のようは水量増加イベントでも浸食や攪乱は起こらないため,今後も維持する可能性が高いと考えられる。