日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 海底のメタンを取り巻く地圏-水圏-生命圏の相互作用と進化

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:宮嶋 佑典(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ)、浅田 美穂(産業技術総合研究所)、ジェンキンズ ロバート(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、青木 伸輔(香川大学農学部)

17:15 〜 19:15

[MIS20-P05] メタンハイドレート賦存域における音響的ブランキング現象と海底下不均質構造

*松下 隼土1鶴我 佳代子1青山 千春1 (1.東京海洋大学)

キーワード:メタンハイドレート、音響的ブランキング、地震波シミュレーション、反射法地震探査

表層型メタンハイドレート(以下MHと略)賦存域の海底下には「ガスチムニー構造」と呼ばれる地質学的特徴がみられる。この領域は、反射法地震探査やサブボトムプロファイラーによる探査では、しばしば「音響的ブランキング現象」と呼ばれる音響データの反射空白域として観測されることが知られている(松本ほか,2024)。音響的ブランキング現象は、MHの分布や海底下構造内の物性不均質を反映する現象と考えられるが、従来の研究ではMHの存在指標の一つとして位置付けることに留まり、MHやガス・流体などの物質分布などとの定量的関係は明らかではない。
そこで本研究では、MH賦存域における海底下の構造探査データの解釈の一助となるべく、MH賦存域の海底下構造にみられる特徴を取り入れた海底下構造モデルを作成波動場の数値計算および模擬的な反射法処理によって作成した地震探査断面から音響的ブランキング現象と海底下の不均質構造との関係の定量化を試みた。
波動場シミュレーションに用いた海底下構造モデルは、村本ほか(2007)や佐伯ほか(2009)を参考に、海底下に4層の水平成層構造を有する基礎構造をベースモデルとし、MHやガス・流体(水)などの不均質を海底付近に配置し、Larsen(2000)の有限差分法E3Dによる2次元波動場計算を行った。作成した地震記録データから、反射法地震探査を模したデータ処理を行い、海底下構造の反射断面を得た。各海底下構造モデルで得られた反射断面は、不均質以下の地層境界での反射振幅を比較し、ブランキング現象相当の特徴を振幅減少率などを用いて定量的に評価した。
シミュレーションの結果、層状にMHを配置するなどの単純なモデルでは20%程度の振幅減少にとどまった一方、部分的にMHやガスを配置したモデルでは、60%を超える振幅減少により音響的ブランキング現象が発生した。また、モザイク状にMHを配置した複雑なモデルでは、80%を超える振幅減少が生じることが分かった。さらに、強い音響的ブランキング現象を生じたモザイク状にMHを配置したモデルとその他モデル間での比較を行うことで、音響的ブランキング現象発生因子の分離を試みた。その結果、観測された約80%の振幅減少のうち、水平方向の不均一性による影響が約40%、複雑な構造による散乱等が約20%、MHの物性による影響が約10%、鉛直方向の不均一性による影響が約10%を占めることが示された。これらの結果から音響的ブランキング現象は、重合不良を生じる水平方向への不均一な構造によって生じ、小規模な不均質による散乱によって強化されることが分かった。したがって、通常の反射法地震探査では、音響的ブランキング現象内部を直接観測することは困難であるということがわかった。しかしながら、反射断面上の音響的ブランキングが持つ特徴(ブランキングの程度、下位反射境界の振幅、周波数応答など)は音響的ブランキング発生構造内部の状態を反映していることから、その不均質の状態を(資源量、存在形態など)を間接的に推定できる可能性があると考えられる。
以上の結果より、本研究では、音響的ブランキング現象には海底下に存在する水平方向の不均一性、複雑な構造による散乱等が大きな影響を与えていることが明らかになった。また、音響的ブランキングが持つ定性的特徴およびその定量評価データを活用することが、ブランキング現象を生じる海底下構造を推定する上で有効な手段となり得ることが示された。
今後、本課題はマイグレーション等の高度な処理を行い、さらに詳細に検討する必要がある。また、資源量評価に向けては、AI等を用いた反射断面図上での音響的ブランキングの定量的評価方法、ブランキングの周波数応答を用いたMHのミクロなサイズの推定方法などのさらなる検討が必要である。