日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 歴史学×地球惑星科学

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)

10:00 〜 10:30

[MIS24-04] 絵図,旧版地形図,文書資料からみた2024年能登半島地震における高岡市伏木地区液状化発生域の土地履歴

★招待講演

*青山 雅史1 (1.群馬大学共同教育学部)

キーワード:液状化、土地履歴、2024年能登半島地震、絵図、古文書

2024年能登半島地震により,小矢部川河口部左岸の富山県高岡市伏木地区の中心部や臨海部の埋立地では,多数の地点で液状化が発生した。この伏木地区の液状化発生域では,戸建家屋の不同沈下,宅地地盤の沈下といった地盤変状,道路の変状に伴う路面損傷,電柱の沈下・傾斜など,液状化の影響を受けたとみられる被害が多数生じた。この地区の影響化発生域の地形条件を国土地理院治水地形分類図を用いて検討した結果,液状化は氾濫平野や臨海部の盛土地・埋立地,砂州内陸側縁辺部などで発生したことが判明した。また,伏木地区臨海部の埋立地では,2007年能登半島地震においても液状化が発生しており(若松 2011),本地震により再液状化が生じたことになる。
本地震による伏木地区における液状化発生域と,この地区の「液状化しやすさの傾向」を地図に示した「液状化しやすさマップ」(国交省北陸地方整備局・地盤工学会北陸支部 2012)とを比較した。臨海部埋立地の液状化発生域は,このマップにおいて「液状化の可能性が高い(危険度4)」に区分されていた。しかし,伏木中心部の氾濫平野における液状化発生域は,「液状化の可能性がある(危険度3)」に区分されていた領域もあったが,「液状化の可能性が低い(危険度2)」と相対的に液状化リスクが低く想定されていた領域においても液状化やそれによる甚大な被害が発生したことから,本地震による伏木地区の液状化は「液状化しやすさマップ」とは異なる傾向で発生したとみなせる。
甚大な液状化被害が発生した伏木中心部の液状化発生域の土地履歴について,江戸期以降の文書史料や絵図,古地図,旧版地形図などを用いて検討した。江戸期から明治中期の伏木地区の変遷については,当地域に残された石黒信由関係資料(絵図)や藤井家文書などの資料群中に含まれる絵図や文書資料から読み取ることができる。また,伏木地区の変遷については,「伏木史料総覧」(京谷 1949)や「越中伏木地理志稿」(正和 1991)などにおいても述べられている。それらによると,伏木中心部の液状化発生域は1700年前後に水域や低湿地を造成・開墾した「新開地」であり,造成されてからの経過年数が300~400年の埋立地・盛土地であった。その「新開地」は1800年代前期までは農地であったと推測されるが,幕末期から明治期にかけて宅地化・市街地化が進展した。その領域の一部には明治末期まで水田が残存していたが,昭和初期までにはそれらの水田も消失し,市街地化(宅地化)が完了した。
この結果から,地形分類情報や限られた表層地質ボーリングデータだけでは抽出が困難な液状化リスクも,土地履歴を加味して検討することで液状化危険度が高いエリアを抽出できる可能性を示している。