17:15 〜 19:15
[MZZ45-P04] 立山黒部ジオパークを題材とした映像教材の有効性:感想と理解度の関係についての分析
キーワード:教育効果、地学教育、学習効果、山岳地域、アンケート調査、水循環
はじめに
映画「剣の山」は,2017年に立山黒部ジオパークを通じて地球の営みの理解を促すための教材として製作された.本映画は,隆起運動や水の侵食作用によって変化する山の高さを要点の一つとし,山が平野にもたらす恵みとして湧水も取り上げている.また,本映画は,山で父親を亡くした高校生「剣」を主人公とするドラマであるほか,プラネタリウムドーム内で上映可能な全天周映像であることを特徴とする.
黒部市吉田科学館では,黒部市内の小学校第6学年の児童を対象とした本映画の学習視聴を実施している.これまでのアンケートの結果では,本映画の視聴前に山の高さの変化や湧き水のしくみへの理解度が乏しい児童について,視聴から1か月後に一定数の児童は理解度が向上するものの,理解度が同程度である児童も認められた.そこで,本研究では,児童が本映画からどのような印象を受けているかをアンケート調査によって明らかにし,本映画の視聴前後の理解度との関係を検証した.
調査方法
まず,学習視聴の前には,事前アンケートを実施し,設問Aにより山の高さの長期的な変化の理解度を確認し,設問Bにより湧き水のしくみの理解度を確認した.次に,学習視聴の直後には,感想のみを記入する事後アンケートを実施した.さらに,学習視聴から1か月経過後には,再び事後アンケートを実施し,設問Aと設問Bにより理解度を確認した.結果の分析では,事前アンケートにおいてそれぞれの設問について不正解であった児童について,共起ネットワークによる分析とクラスター分析により,感想で用いられた語彙と理解度の変化を対応させた.
結果
全児童(N = 219)の回答から得た共起ネットワークからは,「削る」,「地球」,「高い」,「プレート」,「称名滝」などの語彙からなる語群1,「映画」,「主人公」,「剣」,「お父さん」,「亡くなる」などの語彙からなる語群2 に分類された.語群1は,主に本映画の科学的な要素を示す語群である.一方,語群2は,本映画の脚色部分の要素を示す語群である.
クラスター分析では,事前アンケートの設問Aで不正解であった児童群A(n = 116)と,事前アンケートの設問Bで不正解であった児童群B(n = 158)とを分け,両児童群の回答について,語彙を基にWard法によるデンドログラムを作成し,それぞれ7クラスターに分類した.児童群Aで特徴的であったクラスターは,「主人公」,「お父さん」「剣」などを特徴語とするクラスターA-1(n = 16),「プレート」,「地球」,「削る」などを特徴語とするクラスターA-6(n = 25)である.児童群Bで特徴的であったクラスターは,「プレート」,「称名滝」,「高い」を特徴語とするクラスターB-2 (n = 26),「地球」を特徴語とするクラスターB-5(n = 20),「主人公」,「自然」,「亡くなる」などを特徴語とするクラスターB-7(n = 16)である.
児童群Aのうち,事後アンケートで設問Aが正解に変わった児童は,116名中44名であった.クラスターA-1においては,正解に変わった児童が16名中10名であり,過半数であった.児童群Bのうち,設問Bが正解に変わった児童は,158名中61名であった.クラスターB-2においては,正解に変わった児童が26名中15名であり,過半数であった.カイ二乗検定の結果は,児童群Aについて,クラスターA-1とクラスターA-6においてp < .05の有意差を示し,児童群Bについて,クラスターB-2とクラスターB-5,クラスターB-2とクラスターB-7においてp < .05の有意差を示した.
考察
上記結果を基にすると,クラスターA-1とクラスターB-7の児童は,語群2の語彙による言及が主であり,ストーリーの脚色部分に印象を受けた児童であると考えられる.これらの児童は,ほかの児童より設問Aの理解度が向上しやすいものの,設問Bではほかの児童と顕著な差異が認められない.したがって,ストーリーの脚色部分は,理解度に対して限定的な影響を与える可能性がある.クラスターA-6とクラスターB-2の児童は,語群1の語彙による言及が主であり,地球や大地の営みに印象を受けた児童であると考えられる.これらの児童は,ほかの児童より設問Bの理解度が向上しやすいものの,設問Aではほかの児童と顕著な差異が認められない.すなわち,これらの児童は,山の高さについて,隆起または侵食作用のいずれか一方の印象に偏って記憶した可能性がある.本手法の問題点としては,事前アンケートで不正解の児童のみを対象として分類するため,各クラスターのサンプルサイズが有意差の検出には不十分となりやすい点が挙げられる.今後は,同様の調査を継続し,多様な語彙を含めた検証を進める必要がある.
映画「剣の山」は,2017年に立山黒部ジオパークを通じて地球の営みの理解を促すための教材として製作された.本映画は,隆起運動や水の侵食作用によって変化する山の高さを要点の一つとし,山が平野にもたらす恵みとして湧水も取り上げている.また,本映画は,山で父親を亡くした高校生「剣」を主人公とするドラマであるほか,プラネタリウムドーム内で上映可能な全天周映像であることを特徴とする.
黒部市吉田科学館では,黒部市内の小学校第6学年の児童を対象とした本映画の学習視聴を実施している.これまでのアンケートの結果では,本映画の視聴前に山の高さの変化や湧き水のしくみへの理解度が乏しい児童について,視聴から1か月後に一定数の児童は理解度が向上するものの,理解度が同程度である児童も認められた.そこで,本研究では,児童が本映画からどのような印象を受けているかをアンケート調査によって明らかにし,本映画の視聴前後の理解度との関係を検証した.
調査方法
まず,学習視聴の前には,事前アンケートを実施し,設問Aにより山の高さの長期的な変化の理解度を確認し,設問Bにより湧き水のしくみの理解度を確認した.次に,学習視聴の直後には,感想のみを記入する事後アンケートを実施した.さらに,学習視聴から1か月経過後には,再び事後アンケートを実施し,設問Aと設問Bにより理解度を確認した.結果の分析では,事前アンケートにおいてそれぞれの設問について不正解であった児童について,共起ネットワークによる分析とクラスター分析により,感想で用いられた語彙と理解度の変化を対応させた.
結果
全児童(N = 219)の回答から得た共起ネットワークからは,「削る」,「地球」,「高い」,「プレート」,「称名滝」などの語彙からなる語群1,「映画」,「主人公」,「剣」,「お父さん」,「亡くなる」などの語彙からなる語群2 に分類された.語群1は,主に本映画の科学的な要素を示す語群である.一方,語群2は,本映画の脚色部分の要素を示す語群である.
クラスター分析では,事前アンケートの設問Aで不正解であった児童群A(n = 116)と,事前アンケートの設問Bで不正解であった児童群B(n = 158)とを分け,両児童群の回答について,語彙を基にWard法によるデンドログラムを作成し,それぞれ7クラスターに分類した.児童群Aで特徴的であったクラスターは,「主人公」,「お父さん」「剣」などを特徴語とするクラスターA-1(n = 16),「プレート」,「地球」,「削る」などを特徴語とするクラスターA-6(n = 25)である.児童群Bで特徴的であったクラスターは,「プレート」,「称名滝」,「高い」を特徴語とするクラスターB-2 (n = 26),「地球」を特徴語とするクラスターB-5(n = 20),「主人公」,「自然」,「亡くなる」などを特徴語とするクラスターB-7(n = 16)である.
児童群Aのうち,事後アンケートで設問Aが正解に変わった児童は,116名中44名であった.クラスターA-1においては,正解に変わった児童が16名中10名であり,過半数であった.児童群Bのうち,設問Bが正解に変わった児童は,158名中61名であった.クラスターB-2においては,正解に変わった児童が26名中15名であり,過半数であった.カイ二乗検定の結果は,児童群Aについて,クラスターA-1とクラスターA-6においてp < .05の有意差を示し,児童群Bについて,クラスターB-2とクラスターB-5,クラスターB-2とクラスターB-7においてp < .05の有意差を示した.
考察
上記結果を基にすると,クラスターA-1とクラスターB-7の児童は,語群2の語彙による言及が主であり,ストーリーの脚色部分に印象を受けた児童であると考えられる.これらの児童は,ほかの児童より設問Aの理解度が向上しやすいものの,設問Bではほかの児童と顕著な差異が認められない.したがって,ストーリーの脚色部分は,理解度に対して限定的な影響を与える可能性がある.クラスターA-6とクラスターB-2の児童は,語群1の語彙による言及が主であり,地球や大地の営みに印象を受けた児童であると考えられる.これらの児童は,ほかの児童より設問Bの理解度が向上しやすいものの,設問Aではほかの児童と顕著な差異が認められない.すなわち,これらの児童は,山の高さについて,隆起または侵食作用のいずれか一方の印象に偏って記憶した可能性がある.本手法の問題点としては,事前アンケートで不正解の児童のみを対象として分類するため,各クラスターのサンプルサイズが有意差の検出には不十分となりやすい点が挙げられる.今後は,同様の調査を継続し,多様な語彙を含めた検証を進める必要がある.