日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[M-ZZ45] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、土井 恵治(土佐清水ジオパーク推進協議会)

17:15 〜 19:15

[MZZ45-P07] ジオパークに対する学術研究成果の還元とその課題

*鈴木 比奈子1高橋 尚志2原田 拓也3 (1.専修大学、2.東北大学災害科学国際研究所、3.栗駒山麓ジオパーク推進協議会)

キーワード:栗駒山麓ジオパーク、ジオパーク学術研究助成、研究成果の還元

・はじめに
日本ジオパークネットワークのWebサイトを見ると、多くのジオパークが毎年学術研究助成の募集を出している。各地域によって金額の差はあれ、少なくない金額を助成し、研究者はそれらをみて応募している。各ジオパークではそれらの応募内容を審議し、採択している。採択される研究者は、そのジオパークの学術アドバイザーである場合もあるが、必ずしもそうであるとは限らない。学術研究助成は、たまたまその地域のその内容を研究しようとした研究者が、地域に携わる機会、つまりジオパークと地球科学者との関係性が構築される機会なのである。では、こういった助成金を元に研究した成果は、どのように地域に還元されているのだろうか。地域と研究者の関係性はどのように構築されているのであろうか。研究者側も還元するためにどのような課題を抱えているのだろうか。郡山(2019)では、最新研究事例をどのように活用するかが課題と指摘している。地球科学研究者らが明らかにした科学的事実は、専門学会や学術論文などで公表されるが、それが対象地域の地元住民やコミュニティに有機的に還元される事例は少ない。しかし、ジオパークの学術研究助成によって得られた研究成果が地域に還元されることは、地球科学におけるアウトリーチのひとつの形となりうる。本稿では、栗駒山麓ジオパーク(以下、栗駒Gp)での取り組みと実践を例に、ジオパークの運営側と研究者の双方の立場から、最新研究と地域への還元方法について議論する。

・ジオパーク側の意図
栗駒Gpでは、栗駒山麓ジオパーク学術研究等奨励事業と題して、毎年数件採択し、栗駒山麓における地域研究を促進してきた。研究対象となる内容は、栗駒Gpの地形・地質等、地球科学分野、防災教育、地域社会のつながりに関する人文・社会科学分野、その他栗駒Gpの活用に資する学術研究である。2023年度からはさらにテーマ設定を行い、上限金額を引き上げた公募を行っている。2024年度は、荒砥沢地すべり周辺に関する研究(特に、地質層序、地質年代、植生等)、伊豆沼・内沼周辺に関する研究(地形発達等)、栗駒火山周辺に関する研究(生態学、気象学等)であった。これは多様な研究成果を求めるとともに、栗駒山麓Gpが現在最も課題としている内容を科学的に調査、研究してもらうことで、速やかなフィードバックに結びつくという考えからである。研究成果は、数年前から年度末に成果発表会を実施することとなり、ジオパークエリア内に住む住民やジオパーク関係者に発信することとしていた。

・研究者の課題
 筆者の一人は、若手研究者として数年にわたり学生やシニア研究者らとともに栗駒Gpエリアの火山地形や地形発達史などの研究を受託してきた。学術アドバイザーではなく、事務局に直接的な知りあいが居ないという立場であったが、複数人の大学生・大学院生とともに現地調査を実施し、これからの栗駒Gpおよびその周辺のジオサイトにおいて重要となる最新の研究成果を発表してきた。一方で、研究成果の地域への還元に課題があった。学術的に高度な内容をジオパークのガイドプログラムに反映するためには、ジオパーク運営側と直接的な関係性の構築が必要であるが、ジオパーク事務局と研究者が直接的な知り合いではなかったこと、コロナ禍という時期的な問題から、双方で遠慮が生まれてしまっていた。加えて、調査を実施する上では、地元住民の地権者や土地管理者への交渉や許可申請などが順調に進まないこともしばしばあった。

・コミュニケーションの方法
 ジオパークの運営側、研究者側、ともに関係性の構築の糸口がつかめない部分があった。そこで栗駒Gpでは、事務局側でその研究内容に対する担当者を決め、地権者との交渉や調整などの研究協力を行うこととした。これは、研究採択者とジオパーク運営側との関係性を深めたいという意図からである。研究者側もこの意図をくみ取り、地権者との交渉の依頼や地形、地質調査の実施を事務局へ連絡、作業の協力や調査の同行などを詳細に依頼し実行した。これらを続けていくことで、研究者側の円滑な現地調査の実施に対する協力体制、事務局側の研究課題の解消や課題に対してより専門的な研究者を紹介するなどの関係性などが構築されていった。

・おわりに
学術研究助成を通して、研究者と事務局の立場から実践した例を紹介した。これらの取り組みは、2024年度の研究成果と今後の研究課題に結びついたほか、ジオガイドへのフィードバックに反映されることとなり、学術研究助成の意義が再確認された。相互の関係性構築には、個人間のコミュニケーションが必須であるが、これらを制度的に組み込むことで、より適切な成果の発信に近づいていく。

郡山鈴夏(2019)山陰海岸ジオパークにおける学術研究奨励事業の取り組み,JpGU2019,MIS08-P03.