日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[M-ZZ45] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、土井 恵治(土佐清水ジオパーク推進協議会)

17:15 〜 19:15

[MZZ45-P12] ジオパークにおける探究学習活動とその効果(その3)―問題解決型学習がもたらす効果-

*大野 希一1 (1.一般社団法人 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会)

キーワード:鳥海山・飛島ジオパーク、探究学習、問題解決型学習

発表者はこれまで、鳥海山・飛島ジオパークの構成自治体の一つである山形県飽海郡遊佐町の町立遊佐中学校(以降、遊佐中)で行われている探究学習活動の教育効果を検証した事例を発表してきた。過去2年間にわたって探究学習の効果を検証してきたところ、探究学習を受講した生徒の変化にはいくつかの傾向があることが明らかになってきた。それらのうち、ポジティブな傾向は以下の通りである: ジオパークプログラムがめざす目的や理念に対する生徒の理解が向上した。 ジオパークを通じた地域学習には意義がある、と考える生徒が増加した。 「ジオパーク学習は楽しい」と感じる生徒が増加した。 また、ネガティブな傾向は以下の通りである: 「ジオパーク学習は難しい」と感じる生徒は増加した。 「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」と感じる生徒は減少した。  過去2年間の結果を踏まえ、私は2024年度はこれまでとは異なる探究学習プログラムを同校で実施した。今回ではその実施方法を紹介するとともに、今年度の学習効果の結果およびそれらの過去の結果とを比較した結果を紹介する。

2024年度の遊佐中での探究学習は、最初からテーマの検討に入るのではなく、最初に問題解決型学習を実施した。具体的には、夏休みまでの間に「川の水温は上流・中流・下流で同じか違うか?」「遊佐町内に湧き出す湧水の湧出量はどこも同じか違うか?」という2つのテーマを現地および室内にて解き明かす活動を実施することで、探究学習の一連の流れを生徒に経験させた。9月以降は、生徒自身が探究学習のテーマと仮説およびその検証方法を考え、実践する、という方法を採った。

昨年度と同様、探究学習活動が始まる前の2024年5月と終了後の2025年1月に、生徒に同じアンケート(藤岡・他(2023)を一部改変)を課し、それらを比較することで学習活動の効果を検証した。その結果、「ジオパークプログラムが何かを(何とか)説明できる」「価値がある」「ジオパーク学習に満足している」「ジオパーク学習は楽しい」と回答する生徒は、探究学習前より学習後の方が増加した。その一方で、「ジオパーク学習は難しい」と感じた生徒も増加したが、「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」という生徒の数は減少した。これらの傾向は過去2年間と変わらないが、ジオパーク学習に対する満足度や「楽しい」と感じる生徒の増加率は今までで最も大きくなった。これは夏休み前に実施した問題解決型学習が、生徒の探究学習活動のプロセスの理解に繋がったことを暗示する。また、夏休み前の問題解決型学習の実施は、授業の支援にあたる学習支援員やジオパーク事務局の研究員と生徒とのコミュニケーションを促進させるきっかけとなった。その結果、探究学習の際の生徒指導がより踏み込んだ形で行うことが可能となり、授業中に「何をすればいいのかわからない」という生徒は過去2年間に比べて減少した。夏休み前に行った問題解決型学習が、結果的に生徒たちの主体的な学びの姿勢を育むことに繋がったと考えられる。

2024年度には、探究学習活動自体に対する生徒の意識調査も実施した。「テーマ設定」「仮説立て」「手法の検討」「実施」「結果のまとめ」「考察」「発表」という、一連の探究学習活動の流れの中で、生徒が最も難しいと感じたことは「考察」であり、「仮説立て」がそれに次いだ。一方で「テーマ設定」や「手法の検討」、そして「発表」については、生徒たちはむしろ楽しんで取り組んでいたことが明らかになり、当初の推察とは異なる結果となった。この意識調査の結果は、生徒たちが通常の授業では行うことができない友達との共同作業を通じて、自分たちなりの結論を導き出していくプロセスを楽しんでいたことを示唆している。

一方で、鳥海山・飛島ジオパークの地域資源を活用して探究学習活動を実施したにもかかわらず、生徒たちの鳥海山・飛島ジオパークに対する興味が深まっていないことは、大きな課題である。「ジオパーク学習は楽しい」という気持ちを、ジオパーク活動の実施に繋げていくための工夫や働きかけが必要である。