11:35 〜 11:55
[O05-07] 教育実践から見た地質と災害文化
-自然災害との向き合い方をどう教えるか?-
★招待講演
0.「地質」と「災害文化」
タイトルには「地質」とあるが,ここでは広く「地球」「地形」「地理」「地象」「気象」「海象」なども含めた意味で扱う。また「災害文化」とは,災害を経験することで積み上げられてきた知識,災害科学,防災技術,災害伝承・芸術,防災教育などを意味するが,本報告では災害軽減のための教育活動に対して災害文化をどう位置付けるかについて述べる。
1.災害を教える意味は何か? 災害をどこでどう教えるか?
災害は地球の活動が,その中にある人間社会にもたらす作用の一つである。したがって人間が地球上で生きていく限り,災害を避けることはできない。そのため,どのようにすれば災害を軽減できるのかを考える必要がある。訓練やシミュレーションを通して,発災後に生き残る術を身に付けることはもちろん大事であるが,ここでは触れない。むしろ,発災前に備えておくべきことは何かを考える方が,もっと重要である。それには以下のようなことを理解するための教育が必要になるだろう。(1)災害が発生するメカニズムは何か。(2)災害は人間社会にどのような影響をもたらすか。(3)過去にどんな災害が起こってきたか。(4)将来どんなことが起こると予測されるか。(5)災害軽減に対してどう備えていけばよいか。
2.高校教育における自然災害の扱い
現行教育課程で見ると,「地学基礎」で扱われる災害の内容は主に(1)であり,新設の「地理総合」で扱われる内容は主に(2),(3)であることで,両者には棲み分けがあるように見える。つまり「地学基礎」では(2)以降の内容はほとんど触れられていない。とはいえ(1)に関しても,ある自然現象が起こる力学的過程や,それがどのように災害に結び付くかなどについての,物理的・化学的な原理・法則に基づく説明もほとんどなされていない。その意味では,両科目の差はあまりないといえる。また高校理科には「科学と人間生活」とう科目があり,文字通り自然の事象が人間生活にどう関わっているかを学ぶ。そもそも災害は自然の中に人間社会が存在するから生まれるものであり,人間生活の観点を抜きにしては災害を語れない。たとえば,人間社会は自然からの恵みを受けることで成り立ってきた。この災害と恩恵という二面性をまず押さえることで,できれば忘れておきたい災害とも向き合えるのではないか。このようなストーリー性が災害教育には必要と思われるが,それを持たない「地学基礎」の災害に対する存在意義は何であろうか?
3.自然の恵み,災害文化から減災へ
そこで,地学という範疇にとらわれない授業展開を試みることにし,その内容・手順を次のように組み立てた。まず地域の自然の中に展開されてきた人間社会の様子を実感することから始める。これには自然景観の観察やフィールドワークが適当である。その上で,なぜそこに人間生活が営まれているのかを考える。それは自然から受ける恩恵が大きいためであるが,同時に災害リスクも高いことに気づかせる。その中で先人達は災害を乗り越え営みを続け,「災害文化」を生み出してきた。このような自然の二面性と人間の対応を学ぶことが,将来起こるであろう災害を生き残るため何ができるか自分事として考えることに役立つのではないか。
4.実践結果
上記を検証するため,大学生(授業),教員(教員研修,教免講習),一般市民(コミカ,防災カフェ)を対象に講義や実習を行ってみた。ただしフィールドワークには様々な制約があるため,風景写真や地形図・地質図などを見ることで代用した。その結果は,対象ごとに反応がかなり異なるものとなった。特に高校理科教員の,災害教育に対する姿勢に課題があると思われる。
タイトルには「地質」とあるが,ここでは広く「地球」「地形」「地理」「地象」「気象」「海象」なども含めた意味で扱う。また「災害文化」とは,災害を経験することで積み上げられてきた知識,災害科学,防災技術,災害伝承・芸術,防災教育などを意味するが,本報告では災害軽減のための教育活動に対して災害文化をどう位置付けるかについて述べる。
1.災害を教える意味は何か? 災害をどこでどう教えるか?
災害は地球の活動が,その中にある人間社会にもたらす作用の一つである。したがって人間が地球上で生きていく限り,災害を避けることはできない。そのため,どのようにすれば災害を軽減できるのかを考える必要がある。訓練やシミュレーションを通して,発災後に生き残る術を身に付けることはもちろん大事であるが,ここでは触れない。むしろ,発災前に備えておくべきことは何かを考える方が,もっと重要である。それには以下のようなことを理解するための教育が必要になるだろう。(1)災害が発生するメカニズムは何か。(2)災害は人間社会にどのような影響をもたらすか。(3)過去にどんな災害が起こってきたか。(4)将来どんなことが起こると予測されるか。(5)災害軽減に対してどう備えていけばよいか。
2.高校教育における自然災害の扱い
現行教育課程で見ると,「地学基礎」で扱われる災害の内容は主に(1)であり,新設の「地理総合」で扱われる内容は主に(2),(3)であることで,両者には棲み分けがあるように見える。つまり「地学基礎」では(2)以降の内容はほとんど触れられていない。とはいえ(1)に関しても,ある自然現象が起こる力学的過程や,それがどのように災害に結び付くかなどについての,物理的・化学的な原理・法則に基づく説明もほとんどなされていない。その意味では,両科目の差はあまりないといえる。また高校理科には「科学と人間生活」とう科目があり,文字通り自然の事象が人間生活にどう関わっているかを学ぶ。そもそも災害は自然の中に人間社会が存在するから生まれるものであり,人間生活の観点を抜きにしては災害を語れない。たとえば,人間社会は自然からの恵みを受けることで成り立ってきた。この災害と恩恵という二面性をまず押さえることで,できれば忘れておきたい災害とも向き合えるのではないか。このようなストーリー性が災害教育には必要と思われるが,それを持たない「地学基礎」の災害に対する存在意義は何であろうか?
3.自然の恵み,災害文化から減災へ
そこで,地学という範疇にとらわれない授業展開を試みることにし,その内容・手順を次のように組み立てた。まず地域の自然の中に展開されてきた人間社会の様子を実感することから始める。これには自然景観の観察やフィールドワークが適当である。その上で,なぜそこに人間生活が営まれているのかを考える。それは自然から受ける恩恵が大きいためであるが,同時に災害リスクも高いことに気づかせる。その中で先人達は災害を乗り越え営みを続け,「災害文化」を生み出してきた。このような自然の二面性と人間の対応を学ぶことが,将来起こるであろう災害を生き残るため何ができるか自分事として考えることに役立つのではないか。
4.実践結果
上記を検証するため,大学生(授業),教員(教員研修,教免講習),一般市民(コミカ,防災カフェ)を対象に講義や実習を行ってみた。ただしフィールドワークには様々な制約があるため,風景写真や地形図・地質図などを見ることで代用した。その結果は,対象ごとに反応がかなり異なるものとなった。特に高校理科教員の,災害教育に対する姿勢に課題があると思われる。