日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] キッチン地球科学:多様な到達点を生む実験

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:熊谷 一郎(明星大学理工学部)、鈴木 絢子(東洋大学)、下川 倫子(奈良女子大学)、栗田 敬(東京工業大学 地球生命研究所)

17:15 〜 19:15

[O08-P12] サメ肌の表面構造における気泡の付着性

★招待講演

*岩崎 光希1桂木 洋光1、桂 誠1、仲井 文明1、堀江 琢2 (1.大阪大学、2.東海大学)

キーワード:サメ肌、疎水性、接触角

サメの皮膚表面は、歯状の微細構造が多数存在することで特徴付けられる。これらの微細構造には、水流方向に沿って溝が形成されており、特有の構造的粗さを有する。その形状、大きさ、および間隔は、体表の部位や種によって異なる。例えば、クロヘリメジロザメにおいては、微細構造の大きさが約0.2~0.5mm、間隔が約20~30µm であることが報告されている。硬骨魚類とは異なり、サメは軟骨魚類に分類され、その皮膚表面の微細構造は硬質のエナメル質から構成されている。このような構造は、遊泳時の水抵抗低減に寄与している可能性がある[1]。
一般に、大気中において微細な粗さを有する表面が水滴と接触すると、溝内部に微小な気泡が保持され、疎水性を示すことが知られている。その代表例として、ハスの葉が挙げられる[2]。疎水性を有する微細構造は、流体抵抗の低減に寄与する可能性があり、この概念はサメの皮膚表面にも適用できると考えられる。[3]では、サメ皮膚の撥水性を評価するために、水滴との接触角が測定された。しかし、この手法は実際の遊泳環境とは大きく異なる条件下で行われており、水中環境における疎水性の評価が求められる。
そこで本研究では、水中環境における気泡の付着挙動を利用した界面疎水性評価システムを開発した。表面の濡れ性(または疎水性)の評価方法として、従来は気相環境下において対象表面上に水滴を置き、その接触角を測定する手法が用いられてきた。接触角が0°~90°の場合は親水性、90°~180°の場合は疎水性と分類される。本研究では、この標準的な手法に加え、新たに水中環境下で気泡を対象表面に押し付け、圧縮・付着させた後に剥離する手法を採用した。この手法は、水中環境における表面の疎水性をより適切に評価するものである。気相環境下での接触角測定と比較することで、サメ皮膚の微細構造が果たす役割を詳細に検討することが可能となる。
実験手順としては、まずシリンジの先端を水槽内に浸し、プランジャーを押すことで気泡を生成した。生成された気泡の半径は約2mm である。次に、万能試験機(Shimadzu AGX)を用いて、気泡を対象表面直上に配置した後、シリンジを1mm/minの速度で1.3mm 下降させ、気泡を表面に押し付けた。この状態で10秒間静置し、その後、同じ速度で 4 mm 上昇させ、気泡を剥離させた。気泡圧縮時の接触角を後退接触角、気泡剥離時の接触角を前進接触角と定義した。さらに、この測定値を従来の気相環境下における水滴法で得られた接触角と比較することで、新たな測定手法の妥当性を検証した。ポリマー表面の評価を通じて、本測定手法の有効性を確認した後、実際のサメ皮膚表面に対して測定を行った。測定結果の詳細については、発表時に報告する。