日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P114] 3Dプリンタで作成した地形模型を使った伊豆大島三原山における溶岩流シミュレーション

*久我 佳乃子1、秋田 彩貴1 (1.東京都立三鷹中等教育学校)

キーワード:溶岩流シミュレーション、3Dプリンタ、伊豆大島

Ⅰ研究背景・目的
 伊豆大島(図1)は約5万年に形成された火山島である。約1700年前、山腹での大規模噴火によりカルデラが形成された。その後、1777年の大噴火で中央火口丘である三原山が形成された。直近の150年間では、1876年、1912年、1950年、1986年と、約37年周期の中規模噴火が繰り返されてきた。(伊豆大島ジオパーク推進委員会,2024)直近の噴火が39年前であることを考えると、今後近い将来に再び噴火が起こると予想される。そこで本研究では、3Dプリンターにより作成した地形模型を使ったシミュレーションにより、三原山で次の噴火が起こった際の溶岩の流れ方を明らかにすることを目的とした。
 石川ほか(2004)は、溶岩の流出域を予測するシミュレーションシステムの開発により、防災に対する意識を高めることができると述べている。また、佐藤ほか(2024)は、コンピューターシミュレーションにより富士山噴火に伴う溶岩流からの徒歩避難に関する基礎的検討を行い、安全な避難を実施するためには、避難開始時間を短縮することが重要であると示した。このように、溶岩流に対してコンピューターを用いたシミュレーションに関する研究は数多く行われている。一方で、伊豆大島はどこで噴火が起こるか予測しにくい火山である。そのため、実際に噴火が起きた際に、地形模型を使ったアナログ実験によって溶岩がどのように流れるのかを素早く簡易的に予測することは、避難行動を考える上で、非常に有効な方法であると考えられる。

Ⅱ手法
(1)地形模型の作成
 地理院地図より3Dプリンター用データファイル(図2)をダウンロードし、印刷した(図3)。なお、4kmを15cmとし、縮尺を26667:1にした。
(2)溶岩流モデルの作成
 千葉ほか(2017)による実験を参考とし、リンスインシャンプー(以下、シャンプー)を溶岩流に見立てて実験を行った。シャンプーは水と混ぜることで、粘性を変化させることができる。本研究で作成した模型の大きさから、シャンプーと水を7:4で混ぜ、溶岩流モデルを作成した。
(3)溶岩の流れ方のシミュレーション 
ビュレットを用いて一定の間隔で火口に溶岩流モデルを流し、溶岩流の速さや到達範囲などを実験した。

Ⅲ結果
(1)地形模型の作成
 図3の通り、模型を作成した。
(2)溶岩の流れ方のシミュレーション
①山頂の火口(以下、A火口)
 毎秒0.02gで、溶岩流モデルを火口に流した(図4)。1.8gまでは火口内及びその周りに留まり、1.8gを超えると北西方向に流れ出した。この時、1.4km地点まで到達するのに53秒かかった。このことから、模型上での速さは毎秒0.1cmであると分かった。
②山腹の火口
 並んだ3つの火口のうち、最も南の火口(以下、Bs火口)と最も北の火口(以下、Bn火口)に溶岩流モデルを火口に流した。Bs火口では、毎秒0.03gで、溶岩流モデルを火口に流した(図5)。溶岩流モデルはすぐに北東方向に流れ出し、640m地点まで到達するのに33秒かかった。このことから、模型上での速さは毎秒0.07cmであると分かった。Bn火口では、毎秒0.02gで、溶岩流モデルを火口に流した(図6)。溶岩流モデルはすぐに北東方向に流れ出し、640m地点まで到達するのに46秒かかった。このことから、模型上での速さは毎秒0.05cmであると分かった。

Ⅳ考察
 3Dプリンターで作成した地形模型とシャンプーの溶岩流モデルで、流れる方向や模型上での速さを明らかにすることができた。本研究では1986年の中規模噴火での火口のみに溶岩流を流して実験したが、これは三原山のどの地点から溶岩が噴出した場合でも実験が可能である。また、地形模型は他の火山でも作成することができ、応用することができる。このように、本研究の実験では、実際に噴火が起きた時に、コンピューターシミュレーションよりも手軽に、溶岩流の到達範囲や、ある地点まで溶岩が到達するまでの時間を示すことができるため、防災に役立つと考えられる。

謝辞
 本研究にあたり助言を下さったアジア航測の皆さん、三鷹中等教育学校の先生方に感謝申し上げます。

参考文献
 伊豆大島ジオパーク推進委員会(2024)「伊豆大島ジオパーク公式ガイドブック第2版」
 佐藤史弥 孫鵬飛 秦康範(2024)「富士山噴火に伴う溶岩流からの徒歩避難に関する基礎的検討」自然災害科学.43巻.S11号pp.113-126.
 石川智也 石田貴彦 徳丸正孝 村中徳明 橋本潤一 今西茂(2004)「火山噴火による被災地域の予測のための溶岩流シミュレーション」電気学会論文誌C.124巻5号pp.1165-1172.
 千葉達朗 岸本博志 吉本充宏(2017)「赤色立体地図模型を使用したアナログモデル実験」日本地球惑星科学連合2017年予稿集.O04-05.