13:45 〜 15:15
[O11-P124] 流星の自動観測装置の製作と流星群の分析
キーワード:流星、彗星、機械学習
1 はじめに
流星の観測と分析は、宇宙空間の彗星・小惑星や高層の地球大気を探ることにつながる。本部では1953年からペルセウス座流星群の眼視観測を続け、現在は数日の徹夜観測を行っている。可能ならば毎日観測し、その傾向を分析したいが、徹夜観測の日を増やすのは難しい。そこで我々は、2023年に安価な防犯カメラと電波による2手法で流星を自動観測する機器を自作し、常時流星を観測するシステムの開発を目指した。映像から流星を検出するプログラムを開発したが、誤検出が見られた。2024年は新たに機械学習による流星判別プログラムを開発し、精度の向上を図った。ビデオの観測記録からは、対地・日心軌道の特定を可能にし、ほうおう座流星群の流星を同定することに成功した。電波は独自に開発した反射領域の3Dシミュレーションや新たに考案した式によるヘッドエコーの経路特定によってビデオデータとの同定を容易にした。
2 研究方法
本研究での流星の観測方法と、それからわかる事の概略図を図1のようにまとめた。ビデオ・電波の2手法の観測により様々なことが考察できる。
3 結果と考察
・ビデオ・電波観測装置の製作と検出プログラムの開発
ビデオは2023年に安価な赤外線防犯カメラを5台設置して全天を網羅する装置を製作し(図2)、今回は土台を改良した。カメラ保護用の自動日除け装置の実用化を目指している。電波は2023年にアンテナを本校屋上に設置し、福井や豊川等から電波を受信して流星エコーを観測した。今回は両者とも出力動画・画像から機械学習で流星を自動検知するプログラムの開発を行った(図3, 4)。
・ペルセウス座流星群・ほうおう座流星群の経路特定
観測装置で得たデータやSonotaCoネットワークのデータを用い、自作の経路特定支援ソフトや、流星軌道解析ソフトであるUFOOrbitを利用して流星群の経路を特定した(図5)。ペルセウス座流星群は3Dの対地軌道や日心軌道の特定に成功した。また、「幻の流星群」とも呼ばれるほうおう座流星群由来とされる流星を、ダストトレイルの接近が予測された昨年11月に観測した。観測から求めた日心軌道は母天体のものと近似したため、この流星はほうおう座流星群の群流星の可能性が高い。
・電波反射領域の3Dシミュレーション
電波データから流星群を分析するには電波とビデオのデータを同定する必要がある。しかし、エコー画像からではエコーの到来方向が不明であるため極めて難しい。そこで、電波の幾何学上の観測領域すなわち反射領域について、渡部潤一・小川宏・内海洋輔などによって議論がされてきた。内海(2002)によると、反射領域は図6のような回転楕円体になる。先行研究ではExcelで計算していたため、2Dでしか出力できていなかった。
本研究では、小川氏の協力のもと、独自のPythonプログラムで計算し、3Dでの出力も可能にした(図7)。これによってデータの同定が容易になり、実際に、電波の2送信局とビデオで同時観測した流星の経路と反射領域をプロットした(図8)。この結果から、この流星においては、流星が反射領域を通過するか否かによってエコーを捉えるか否かが決まったと考えられる。
・ヘッドエコー観測における流星経路特定
電波観測ではエコー画像から経路を特定するのは困難である。そこで近年、鈴木和博などによりヘッドエコーから経路を特定する試みが始まっている。ヘッドエコーとは、流星頭部で反射され、流星体の速度によるドップラーシフトを有するエコーのことである。
本研究では、先行研究を利用して独自の経路特定の方法を試案した。そして実際に考案した連立方程式を解き、流星の経路を予測したところ、実経路と予測経路が一致した(図11)。考案した方法は電波の経路特定・電波とビデオの同時流星の同定に利用できる可能性がある。
3 まとめ・今後の展望
ビデオ・電波の観測装置を製作し、機械学習によるリアルタイム流星検知システムが完成した。ビデオは3Dで経路特定を行い、電波は反射領域を3Dで可視化することに成功した。また、電波からの経路特定を行うためにヘッドエコーの観測における独自の方法を試案し、経路の予測に成功した。反射領域やヘッドエコー観測の正確性の考察にはデータが不足しているため、今後もデータの収集を続ける。また、他の流星群の観測も引き続き行っていく。
参考文献
1)天文気象部(2024).『流星の自動観測システム「TenGu」ver2.0の開発』「第13回高校・高専気象観測機器コンテスト」
2)ATOM.「ATOMCam2」
3)流星電波観測国際プロジェクト
4)内海洋輔(2002).『HRO流星レーダーの観測領域の計算』
5)小川宏(2003).『流星電波観測における反射領域の議論』
6)長谷川均(2024).『ATOMCamで検出された流星検出と位置測定』「流星電波観測報告会2024」
7)SonotaCo.com
8)斎藤馨児,長沢工(1984).『流星Ⅰ 観測の実際』恒星社厚生閣
9)鈴木和博(2024).「KROによる落下人工衛星経路の推定」
流星の観測と分析は、宇宙空間の彗星・小惑星や高層の地球大気を探ることにつながる。本部では1953年からペルセウス座流星群の眼視観測を続け、現在は数日の徹夜観測を行っている。可能ならば毎日観測し、その傾向を分析したいが、徹夜観測の日を増やすのは難しい。そこで我々は、2023年に安価な防犯カメラと電波による2手法で流星を自動観測する機器を自作し、常時流星を観測するシステムの開発を目指した。映像から流星を検出するプログラムを開発したが、誤検出が見られた。2024年は新たに機械学習による流星判別プログラムを開発し、精度の向上を図った。ビデオの観測記録からは、対地・日心軌道の特定を可能にし、ほうおう座流星群の流星を同定することに成功した。電波は独自に開発した反射領域の3Dシミュレーションや新たに考案した式によるヘッドエコーの経路特定によってビデオデータとの同定を容易にした。
2 研究方法
本研究での流星の観測方法と、それからわかる事の概略図を図1のようにまとめた。ビデオ・電波の2手法の観測により様々なことが考察できる。
3 結果と考察
・ビデオ・電波観測装置の製作と検出プログラムの開発
ビデオは2023年に安価な赤外線防犯カメラを5台設置して全天を網羅する装置を製作し(図2)、今回は土台を改良した。カメラ保護用の自動日除け装置の実用化を目指している。電波は2023年にアンテナを本校屋上に設置し、福井や豊川等から電波を受信して流星エコーを観測した。今回は両者とも出力動画・画像から機械学習で流星を自動検知するプログラムの開発を行った(図3, 4)。
・ペルセウス座流星群・ほうおう座流星群の経路特定
観測装置で得たデータやSonotaCoネットワークのデータを用い、自作の経路特定支援ソフトや、流星軌道解析ソフトであるUFOOrbitを利用して流星群の経路を特定した(図5)。ペルセウス座流星群は3Dの対地軌道や日心軌道の特定に成功した。また、「幻の流星群」とも呼ばれるほうおう座流星群由来とされる流星を、ダストトレイルの接近が予測された昨年11月に観測した。観測から求めた日心軌道は母天体のものと近似したため、この流星はほうおう座流星群の群流星の可能性が高い。
・電波反射領域の3Dシミュレーション
電波データから流星群を分析するには電波とビデオのデータを同定する必要がある。しかし、エコー画像からではエコーの到来方向が不明であるため極めて難しい。そこで、電波の幾何学上の観測領域すなわち反射領域について、渡部潤一・小川宏・内海洋輔などによって議論がされてきた。内海(2002)によると、反射領域は図6のような回転楕円体になる。先行研究ではExcelで計算していたため、2Dでしか出力できていなかった。
本研究では、小川氏の協力のもと、独自のPythonプログラムで計算し、3Dでの出力も可能にした(図7)。これによってデータの同定が容易になり、実際に、電波の2送信局とビデオで同時観測した流星の経路と反射領域をプロットした(図8)。この結果から、この流星においては、流星が反射領域を通過するか否かによってエコーを捉えるか否かが決まったと考えられる。
・ヘッドエコー観測における流星経路特定
電波観測ではエコー画像から経路を特定するのは困難である。そこで近年、鈴木和博などによりヘッドエコーから経路を特定する試みが始まっている。ヘッドエコーとは、流星頭部で反射され、流星体の速度によるドップラーシフトを有するエコーのことである。
本研究では、先行研究を利用して独自の経路特定の方法を試案した。そして実際に考案した連立方程式を解き、流星の経路を予測したところ、実経路と予測経路が一致した(図11)。考案した方法は電波の経路特定・電波とビデオの同時流星の同定に利用できる可能性がある。
3 まとめ・今後の展望
ビデオ・電波の観測装置を製作し、機械学習によるリアルタイム流星検知システムが完成した。ビデオは3Dで経路特定を行い、電波は反射領域を3Dで可視化することに成功した。また、電波からの経路特定を行うためにヘッドエコーの観測における独自の方法を試案し、経路の予測に成功した。反射領域やヘッドエコー観測の正確性の考察にはデータが不足しているため、今後もデータの収集を続ける。また、他の流星群の観測も引き続き行っていく。
参考文献
1)天文気象部(2024).『流星の自動観測システム「TenGu」ver2.0の開発』「第13回高校・高専気象観測機器コンテスト」
2)ATOM.「ATOMCam2」
3)流星電波観測国際プロジェクト
4)内海洋輔(2002).『HRO流星レーダーの観測領域の計算』
5)小川宏(2003).『流星電波観測における反射領域の議論』
6)長谷川均(2024).『ATOMCamで検出された流星検出と位置測定』「流星電波観測報告会2024」
7)SonotaCo.com
8)斎藤馨児,長沢工(1984).『流星Ⅰ 観測の実際』恒星社厚生閣
9)鈴木和博(2024).「KROによる落下人工衛星経路の推定」
