日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P16] 簡易アルカリろ紙法による桜島での火山ガス観測とガス放出モデルの提唱

*茶屋道 玲1、*牛嶋 康太1、重吉 絢斗1、黒瀬 こころ1、菱田 琉斗1、内野 亮太1 (1.学校法人池田学園池田中学・高等学校)

キーワード:アルカリろ紙法、火山ガス

1.はじめに
 桜島は噴火の有無に関わらず,水蒸気,SO2,HCl,HFなどの多くの火山ガスを常時噴出している。そこで,我々は桜島の火山活動を把握し,将来の噴火予測を目指して,現在の桜島から放出されている酸性火山ガス(SO2,HCl,HF)の組成比変動の測定に挑んだ。2022年4月から1ヶ月毎に,県内11か所で観測し,観測した火山ガスと噴火回数,降灰量などと比較を行い,各火山ガスの挙動を明らかにした。これらの結果と桜島の噴火形式をもとに,私たちは噴火前後における火山ガス放出モデルを提唱した。
2.方法

2-1簡易アルカリろ紙法
 アルカリろ紙法とは,塩基が付着したろ紙に酸性火山ガスを中和反応で吸着させるものである。アルカリろ紙はNa2CO3 水溶液(70g/L)に蒸留水で湯煎して洗浄した後に簡易デジケータ内で乾燥させたろ紙(5×2cm)をつけて,一晩乾かし作成した。そして,降灰や降雨からろ紙を守るためにペットボトルとプラコップなどを用いて簡易曝露架台「ソーダ君」(Fig.1)を作成,生徒の協力を得て,県内11カ所に1ヶ月毎に設置している。
2-2 自作吸光光度計
回収したアルカリろ紙は30分間70℃の蒸留水で湯煎して,その濾液で自作吸光光度計「輝ちゃん」(Fig.2)を用いて分析を行った。比濁法には青色LEDを用い,受光素子を用いた。HClはCl-として,SO2はSO32-として,HFはF-として吸着するのでそれぞれ塩化銀比濁法,硫酸バリウム比濁法,SPANDS法等にて濃度決定を行う。いずれにおいても試薬との反応前後の光電流の値を記録し,その光電流の比から吸光度を求め,予め作成したFig.4のような検量線で濃度を求めた。
3.結果と考察
3-1火山活動の指標としてのCl-/SO2,F-/SO2,F-/Cl-と日平均噴火回数の比較
平林は1980年代に「HCl/SO2比が大きくなる時に火山活動が活発になり,1979年の噴火のない月のピークについて噴火の前兆現象である」と報告している。我々も桜島の火口から3㎞圏内にある赤水,有村,湯之平において火山ガスの捕集量から求めたCl-/SO2と期間内の噴火回数を比較した。結果がFig.4である。Cl-/SO2の値が大きいときには噴火回数が多くなることもあるが,明確な関係性が見られなかったため,火山活動の化学的指標の評価として知られているF-/SO2,Cl-/SO2,F-/Cl-の相関を求めた。(Fig.6)F-/SO2の相関係数が最も高かったことから,平林が前兆現象の指標としていたCl-/SO2よりもF-/SO2が指標として有用であることが分かった。

3-2 火山活動の指標としての各火山ガス付着量と爆発回数の割合の比較
Fig.7は有村における各火山ガス付着量(SO2,Cl-,F-)と爆発回数の割合との比較をしたものである。Fig.7より,F-の相関が他の火山ガス成分の相関より高かったことから,桜島の爆発的噴火の指標としてF-の濃度変動が有効ではないかと考えられる。

3-3 化学的噴火予測や火山活動の指標としての火山ガス付着量と火山灰量の比較
噴火時の火山灰と火山ガスの挙動を明らかにするために,火山ガスと一日あたりの平均降灰量を比較した。Fig.5よりSO2は火山灰量が大きい時期とSO2の量が大きい時期がおおむね一致していることから,SO2と火山灰はほぼ同一に挙動すると考えられる。

3-4 桜島の噴火前後における火山ガス放出モデル
これらの結果から,噴火前後における火山ガス成分放出モデルを作成した。(Fig.8)観測結果から,800℃で脱ガスが起こるHFの量が多いため,活動が活発でなく,蓋が形成されない現在は,マグマの温度が高く,HFが多く放出されていると考えられる。一方,火山活動が活発な時や爆発的噴火の前には,火口には蓋が形成されることにより,マグマから発泡した水蒸気,HF,HCl,SO2等が火道内にたまっていくが,一部の火山ガスは抜け出る。そして噴火時,たまっていたガスが放出され,大気中にあるガスを巻き込みながら,噴煙が形成される。爆発時の最高温度は540℃と報告されていることから,400℃以上で脱ガスするSが脱ガスし,SO2が発生しているときがあると考えられる。

4. 今後の課題
今後は火口により近い観測地点を増やすこと,センサーを用いて連続測定を行うことなどがある。これらを行うことで,化学的指標による大規模噴火の予測を進展させ,鹿児島市の火山防災に役立てていきたいと考えている。

5. 参考文献
1)平林順一, 桜島における火山ガスの成分変化と火山活動,京大防災研究所年報 第24号B-1,昭和56年,11~20
2)山田悦他 ,パッシブサンプラー法による京都山間部における大気汚染物質濃度の経年変化観測(1996~2005),分析化学/61巻 (2012) 4号 ,p391~326)
3)光永 晴美他,有害物質を使用しないアルカリろ紙法による大気中硫黄酸化物分析法の確立,分析化学67巻 (2018) 12号 ,p743~747
4)全環研東海・近畿・北陸支部,パッシブ簡易測定法の実用化検討,全国環境研会誌,Vol.29,No.1(2004)
5) 鹿児島地方気象台,桜島噴火観測表(2022年~2024年)
6) 野上 健治, 井口 正人, 他, 火山噴火様式と火山噴出物中の揮発性成分の挙動に関する研究, 京都大学防災研究所年報第47号B 平成16年4月