日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P27] スペクトルから究明する流星プラズマ物理

*加賀屋 諒1 (1.渋谷教育学園幕張高校)

キーワード:流星、分光観測、有効温度

要旨
流星とは、太陽系空間を運動する微細な粒子が地球大気に突入し、プラズマ発行する現象である。流星物質は、彗星や活動的な小惑星から放出されるため、母天体や原始太陽系への理解を深めることができる。本研究では簡易的な防犯カメラとグレーティングシートを用いて自作した機器を用いた。流星スペクトルの観測を行うことで、プラズマの励起温度や各元素の振る舞いの違いを調査し、流星や太陽系へのより深い理解を得る。

1.研究目的
鉄の輝線を用いて流星プラズマの有効励起温度を測定する。また、流星物質に含まれる他の金属の輝線強度と励起温度の関係を調査する。

2. 研究方法
流星プラズマが熱平衡状態にあると仮定し、スペクトル内の輝線が電子遷移によるものとすると、それぞれの輝線の強度について次の(1)式が成り立つ。
I=hcg'AN・(exp(-χ/kT)/4πλB(T)) ・・・(1)
N : 視線方向の円柱内の原子、イオンの個数  
T : 励起温度  
B(T) : Tにおける分配関数  
g’ : 上位レベルの統計的重み  
A : 遷移放出確率(アインシュタイン係数)  
λ : 輝線の波長
χ : 遷移する上位レベルの励起ポテンシャル  
h : プランク定数
c : 光速度  
k : ボルツマン定数
このときの電子の遷移を考えると次の(2)式が成り立つ。
g'A=(8π2ε2/mcλ2)gf ・・・(2)
ε : 電子の電荷量  
m : 電子の質量  
g : 下位レベル統計的重み  
f : 吸収振動子の強さ

これらの式を用いて、該当する輝線のχ、log(gf)、および観測から求めた輝線強度 I から、Tを一次式の傾きとして求めることができる。(Nagasawa 1978)
観測には、市販の防犯カメラに、フィルム状の回折格子(図1)を取り付けて自作した観測機器を用いた(図2)。得られた流星スペクトル(図3)に対し、スペクトルデータベース(NIST)などを用いて、波長同定を行なった(図4)。画像解析にはマカリィを用い、その他の計算にはExcelを用いた。流星スペクトルは、1年間で5個撮影できたが、この予稿では解析の一例を記す。
得られた輝線スペクトルの中のFeⅠの輝線を用いて、その強度及びχ、log(gf) の値から、流星プラズマの励起温度を求めた。図5はプラズマ温度測定の近似曲線を算出した一例である。

3.結果と考察
流星プラズマの温度変化は図6のようになった。また、MgⅠ、NaⅠ、Fe Iの輝線について、その強度変化を励起温度の変化と比較した(図7、図8、図9)。なお、図中のx軸の値は時間変化を表しており、測定に用いたフレームのライン番号であり、時間経過を表している。
注目に値するのは、温度変化を表す図6のx=9において、温度が下がっている現象である。この理由として、カメラの部分的なピクセル欠損、低分散のために輝線がブレンドしていることが考えられる。しかしながら、これがプラズマの物理的変化を表すと考えた場合、興味深い仮説を立てることができる。つまり、x=9において、Mg I、Na Iの輝線強度は増大し流星は最も明るく輝いているのである。この温度低下は、プラズマの急激な膨張による温度変化が原因ではないか。輝線強度が大きくなっていることは、プラズマの体積が増大し放射面積が広くなることで説明することができる。MgⅠについてはx=5、NaⅠについてはx=6,9が強度のピークとなっており、発光機構に違いがあるということが確認できた。それぞれの励起エネルギーなどについて、さらに詳しく調査してみたい。
以上より、本研究の目的であるプラズマの励起温度推定、各元素の振る舞いの違いについて、有意義なデータを得ることができた。加えて、簡易的な防犯カメラとグレーティングシートを用いて自作した観測機器を用いた本研究の研究手法の有用性について確信をもつことができた。

4.参考文献
Nagasawa, Analysis of the spectra of Leonid meteors, 東京大学東京天文台年報, 1978
NIST(National Institute Standards and Technology) https://physics.nist.gov/PhysRefData/ASD/lines_form.html 2025.3.25 参照