日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P28] 愛知県知多半島南端,内海断層近くの師崎層群に記録された古流向と古傾斜

*牧野 航大1、*足立 健人1 (1.名古屋高等学校)

キーワード:transverse erosional marks、斜交葉理、変形荷重痕

1. 背景と目的 南海トラフ巨大地震が起きたとき,南海トラフに混濁流が流れ込むであろう。深海で起きるその堆積のようすを推定する手がかりが内海断層近くの師崎層群に残されている。宮川他(2021)は内海断層が師崎層群堆積時には正断層としてはたらき,1000m程度の高さの断層崖をつくっていたと指摘した。名古屋高校地球科学部(2025)は変形荷重痕から復元される古傾斜の方向とクロスラミナの示す古流向が一致しないことから,師崎層群堆積時に内海断層の当時の断層崖に突き当たった混濁流が断層崖から離れるほど低くなる斜面をつくって堆積していた可能性を指摘した。古流向・古傾斜の測定数を増やし,層準ごとの古流向・古傾斜の特徴を調べるために追加調査を行った。
2. データおよび解析方法 愛知県知多郡南知多町豊浜坂井地先の海岸に干潮時に露出する中新統師崎層群豊浜層の堆積構造のうち,クロスラミナから古流向,transverse erosional marks(mud ripple)から古流向,変形荷重痕の変形方向から古傾斜を,クリノメーターを用いて方向を計測,または,geoclino for iPhoneを用いて層理面と古流向・古傾斜方向を同時に測定記録した。具体的な方法としては,Allen(1971)を参考に,transverse erosional marks は幅が広く深くえぐれた方が,上流であるとして,古流向を測定した。また,Moretti 他(2001)を参考に,荷重痕が斜め下に突き出しているように見える方向の逆向きを古傾斜方向とした。
3. 結果 概ね沖側(下位)のクロスラミナは内海断層に沿った南東向きの古流向を示すものが多いのに対して,国道側(上位)のクロスラミナは東向きから東南東向きの古流向を示すものが多い。transverse erosional marksの示す古流向はほぼ内海断層の走向に沿って東側へ流れる方向であった。ところが,直上のクロスラミナは内海断層から離れる方向への古流向を示した。変形荷重痕の示す古傾斜の方向は内海断層から離れる方向で,直上のクロスラミナは内海断層に並行で東向きの古流向を示していた。その他のクロスラミナはほぼ内海断層に並行で東向きの古流向を示したが,若干の層準のクロスラミナは内海断層から離れる方向および内海断層に平行で西向きの古流向を示した。また,キリガイダマシの化石が螺塔を内海断層の走向に沿って東側に向けた状態で見つかることが多く,普段の水流が内海断層に沿って,西から東への向いて流れていたことの傍証となりうる。そして,国道近くでは,玄能石コンクリーションの存在が複数確認された。
4. 考察と今後の課題 古流向は内海断層に沿うものと古傾斜に沿うものの2つが卓越した。当時壁をつくっていた内海断層に沿っての水流が卓越しており,混濁流が断層に沿って流れたときと断層崖をさかのぼったときと断層崖を下ったときがあったと考えれば,古水流の分布を説明できる。沖側では古流向が内海断層に平行であるのに,国道側では古流向のバリエーションが大きくなるのは,沖側が内海断層により近く,断層崖に沿って,水流が流れることが多かったからではないか。逆に,国道近くの露頭では断層崖から500m離れているために,断層崖の影響が少なく,自由蛇行できたために古流向の変位の幅が,同一層準であるにもかかわらず大きくなったものと考えられる。そして,Transverse erosional marks の見られる2層準と変形荷重痕の見られる2層準は連続性が良く鍵層として使える可能性がある。これらと特徴的な凝灰岩層を使って豊浜層の標準層序を打ち立てたい。
5.謝辞 transvers erosional marks と玄能石コンクリーションが見られる露頭は私有地である。調査とサンプリングを許可しただいた地権者のご家族の方に感謝する。
6.文献
ALLEN, J. R. L., 1971, Transverse erosional marks of mud and rock: their physical basis and geological significance. Sediment. Geol., 5: 167-385.
宮川歩夢・阿部朋弥・住田達哉・大坪誠,2021,知多半島から西三河平野にかけての活断層形状の解明-半地溝の盆地反転による知多半島の形成と1945年三河地震の震源断層. GSJ 地質ニュース Vol. 10 No. 1.
Moretti M, Soria JM, Alfaro P and Walsh N,2001,Asymmetrical soft sediment deformation structures triggered by rapid sedimentation in turbiditic deposits (Late Miocene, Guadix Basin, southern Spain). Facies, 44: 283-294.
G.Owen,2003,Subsurface Sediment Mobilization,From: VAN RENSBERGEN, R, HILLIS, R.R., MALTMAN, A.J. & MORLEY, C.K. (eds) 2003.Geological Society, London, Special Publications, 216, 21-34. 0305-8719/03/
宮川歩夢・阿部朋弥・住田達哉・大坪誠,2021,GSJ 地質ニュース Vol.10 No.1p4-8.https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol10.no1_p4-8.pdf
名古屋高等学校地球科学部,2025,愛知県高等学校文化連盟自然科学専門部令和6年度研究発表会集録https://kbrs.web.fc2.com/taikai/ronbun/R6/5-nagoya.pdf