13:45 〜 15:15
[O11-P55] 栗駒山麓ジオパークにおける中新世の露頭の構造解析
〜凝灰岩中における礫の形成メカニズムの解明〜
キーワード:栗駒山麓ジオパーク、火砕流、海底火山
1.背景と目的
宮城県栗原市に位置する栗駒山麓ジオパークでは、過去に幾度にもわたって発生した自然災害の経験を未来に伝えるため、栗駒山麓の地形や景観を教育や研究に活用している。本ジオパークの範囲内には、中新世、特に日本海拡大期に堆積した露頭が複数分布している。しかし、それらの詳細な分布や成因については不明な点が多い。そこで、本研究では細倉鉱山周辺や金成のクロスラミナなど、複数の露頭で調査を行った。
本研究では、行者滝下流に位置する露頭で調査を行い、凝灰岩内部に含まれる礫の形成メカニズムを明らかにする。行者滝は栗駒山麓ジオパークのジオサイトとしてサイトマップに記載されているが、学術的な研究はほぼ行われていない。本研究の目的は、この露頭の解析を通じて露頭の形成過程を明らかにし、栗駒山麓ジオパークの価値を高めることである。
2.データおよび解析方法
野外調査において柱状図の作成、露頭の解析、岩石のサンプリングを行った。露頭の産状
を記載し、露頭に含まれる礫の測定と形状分類を行った。また、採取したサンプルで岩石薄片を作成した。それらに加え、岩手県南技術研究センターにて走査型電子顕微鏡を用いて、岩石サンプルの化学分析を行った。
3.結果
3-1.露頭の構造解析
露頭は主に粗粒な凝灰岩からなり、基質部は全体的に緑色を呈している。内部には長径が2.4〜8.0cm程度の礫が取り込まれていた。また、露頭の一部で礫が集中して分布し赤みがかった箇所が2箇所ほどみられ、貫入構造が確認できる。今回は凝灰岩中に取り込まれた礫を19個採取し、その礫の種類と形態を測定した結果、安山岩礫の多くは引き伸ばされておらず、反対に凝灰岩や泥岩では引き伸ばされた形状のものがみられた。また貫入構造に含まれる礫は安山岩礫、凝灰岩礫ともに引き伸ばされたものが少ないといった違いが見られた。貫入構造の礫は凝灰岩の露頭とは異なる岩石構成であることから、下方から上方へ貫入した砕屑岩脈であると考えられる。
3-2.岩石薄片の観察
露頭の基質部では、凝灰質であり2〜4mm程度の黒い粒が複数みられた。また、露頭に含まれる礫について岩石薄片および研磨面を基に分類したところ、安山岩、凝灰岩、泥岩の礫が確認できた。凝灰岩礫の中では流動した構造がみられ、内部に未固結の岩石片や黒色の火山ガラスを取り込み、扁平な形状をしたものが多く含まれていた。こうした特徴を持つ礫をここでは「礫A」と仮称する。
3-3.サンプルの化学分析
行者滝の凝灰岩露頭における基質部、安山岩礫、礫Aの3種類について、化学分析を行い、重量%で含有量を算出した。その結果、基質部と安山岩礫については化学組成が大きく異なっており、SiO₂、Fe₂O₃でその傾向が顕著であった。また、礫Aの全岩組成は基質部と似通っていた(SiO₂58.17%と57.79%、K₂O1.17%と1.27%など)。礫A内部にみられる黒色部と白色部についても分析を行ったところ、それらの化学組成は全岩組成と大きく異なっていた。特に、黒色部についてはSiO₂、Al₂O₃の含有量が多かったことから、黒色の火山ガラスであると分かる。
4.考察
基質部が緑色の凝灰岩かつ緑色であり、水冷自破砕溶岩が見られることから、本露頭は海底火山の噴火によって形成されたグリーンタフであると考えられる。
泥岩の礫は火砕流の基底部によって海底の泥が取り込まれて礫状になったものであると考えた。
本露頭にはレンズ質の黒曜岩などの溶結凝灰岩は認められなかったが、礫Aでは内部に黒色の火山ガラスや岩石が引き伸ばされた構造が見られるなど一部溶結した組織が認められることから凝灰岩の露頭全体としては強溶結ではなく弱溶結を受けたものであると考えられる(荒牧, 1979)。さらに、化学分析において礫Aと基質部の化学組成が似通っていたことから、礫Aは水冷の影響が及ばない火砕流内部の流動変形によって火山ガラスや未固結の岩片を取り込んで溶結し、礫状になったと考えた。また、安山岩の礫の化学組成は、凝灰岩の各構成物質とは異なることから、凝灰岩形成前(もしくは直前)に噴出したマグマ物質が取り込まれたものと考えた。
5.結論
本研究では、行者滝の露頭は海底火山活動によって形成され、火砕流の弱溶結部で火砕流の構成物質が流動変形を起こし、扁平な形状の礫になったと結論付けた。以上のことから、本露頭は凝灰岩内部における礫の形成メカニズムを明らかにする重要なジオサイトとして高い価値を有する場所であると考える。
参考文献
7万5千分の1地質図幅「鬼首」
遠藤邦彦、小林哲夫.第四紀.共立出版株式会社,2012,フィールドジオロジー9.
保柳康一、松田博貴、山岸宏光.シーケンス層序と水中火山岩類.共立出版株式会社,2008,フィールドジオロジー4
西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.株式会社ナツメ社,2020.
柴正博.地質調査入門.駿河湾団体研究グループ,2003.
西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.株式会社ナツメ社,2020.
宮城県栗原市に位置する栗駒山麓ジオパークでは、過去に幾度にもわたって発生した自然災害の経験を未来に伝えるため、栗駒山麓の地形や景観を教育や研究に活用している。本ジオパークの範囲内には、中新世、特に日本海拡大期に堆積した露頭が複数分布している。しかし、それらの詳細な分布や成因については不明な点が多い。そこで、本研究では細倉鉱山周辺や金成のクロスラミナなど、複数の露頭で調査を行った。
本研究では、行者滝下流に位置する露頭で調査を行い、凝灰岩内部に含まれる礫の形成メカニズムを明らかにする。行者滝は栗駒山麓ジオパークのジオサイトとしてサイトマップに記載されているが、学術的な研究はほぼ行われていない。本研究の目的は、この露頭の解析を通じて露頭の形成過程を明らかにし、栗駒山麓ジオパークの価値を高めることである。
2.データおよび解析方法
野外調査において柱状図の作成、露頭の解析、岩石のサンプリングを行った。露頭の産状
を記載し、露頭に含まれる礫の測定と形状分類を行った。また、採取したサンプルで岩石薄片を作成した。それらに加え、岩手県南技術研究センターにて走査型電子顕微鏡を用いて、岩石サンプルの化学分析を行った。
3.結果
3-1.露頭の構造解析
露頭は主に粗粒な凝灰岩からなり、基質部は全体的に緑色を呈している。内部には長径が2.4〜8.0cm程度の礫が取り込まれていた。また、露頭の一部で礫が集中して分布し赤みがかった箇所が2箇所ほどみられ、貫入構造が確認できる。今回は凝灰岩中に取り込まれた礫を19個採取し、その礫の種類と形態を測定した結果、安山岩礫の多くは引き伸ばされておらず、反対に凝灰岩や泥岩では引き伸ばされた形状のものがみられた。また貫入構造に含まれる礫は安山岩礫、凝灰岩礫ともに引き伸ばされたものが少ないといった違いが見られた。貫入構造の礫は凝灰岩の露頭とは異なる岩石構成であることから、下方から上方へ貫入した砕屑岩脈であると考えられる。
3-2.岩石薄片の観察
露頭の基質部では、凝灰質であり2〜4mm程度の黒い粒が複数みられた。また、露頭に含まれる礫について岩石薄片および研磨面を基に分類したところ、安山岩、凝灰岩、泥岩の礫が確認できた。凝灰岩礫の中では流動した構造がみられ、内部に未固結の岩石片や黒色の火山ガラスを取り込み、扁平な形状をしたものが多く含まれていた。こうした特徴を持つ礫をここでは「礫A」と仮称する。
3-3.サンプルの化学分析
行者滝の凝灰岩露頭における基質部、安山岩礫、礫Aの3種類について、化学分析を行い、重量%で含有量を算出した。その結果、基質部と安山岩礫については化学組成が大きく異なっており、SiO₂、Fe₂O₃でその傾向が顕著であった。また、礫Aの全岩組成は基質部と似通っていた(SiO₂58.17%と57.79%、K₂O1.17%と1.27%など)。礫A内部にみられる黒色部と白色部についても分析を行ったところ、それらの化学組成は全岩組成と大きく異なっていた。特に、黒色部についてはSiO₂、Al₂O₃の含有量が多かったことから、黒色の火山ガラスであると分かる。
4.考察
基質部が緑色の凝灰岩かつ緑色であり、水冷自破砕溶岩が見られることから、本露頭は海底火山の噴火によって形成されたグリーンタフであると考えられる。
泥岩の礫は火砕流の基底部によって海底の泥が取り込まれて礫状になったものであると考えた。
本露頭にはレンズ質の黒曜岩などの溶結凝灰岩は認められなかったが、礫Aでは内部に黒色の火山ガラスや岩石が引き伸ばされた構造が見られるなど一部溶結した組織が認められることから凝灰岩の露頭全体としては強溶結ではなく弱溶結を受けたものであると考えられる(荒牧, 1979)。さらに、化学分析において礫Aと基質部の化学組成が似通っていたことから、礫Aは水冷の影響が及ばない火砕流内部の流動変形によって火山ガラスや未固結の岩片を取り込んで溶結し、礫状になったと考えた。また、安山岩の礫の化学組成は、凝灰岩の各構成物質とは異なることから、凝灰岩形成前(もしくは直前)に噴出したマグマ物質が取り込まれたものと考えた。
5.結論
本研究では、行者滝の露頭は海底火山活動によって形成され、火砕流の弱溶結部で火砕流の構成物質が流動変形を起こし、扁平な形状の礫になったと結論付けた。以上のことから、本露頭は凝灰岩内部における礫の形成メカニズムを明らかにする重要なジオサイトとして高い価値を有する場所であると考える。
参考文献
7万5千分の1地質図幅「鬼首」
遠藤邦彦、小林哲夫.第四紀.共立出版株式会社,2012,フィールドジオロジー9.
保柳康一、松田博貴、山岸宏光.シーケンス層序と水中火山岩類.共立出版株式会社,2008,フィールドジオロジー4
西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.株式会社ナツメ社,2020.
柴正博.地質調査入門.駿河湾団体研究グループ,2003.
西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.株式会社ナツメ社,2020.
