日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P77] 鹿児島県奄美大島久慈白糖工場跡出土煉瓦の胎土分析

*川崎 良徳1 (1.鹿児島県立古仁屋高等学校)

キーワード:胎土分析、煉瓦、蛍光X線分析、白糖工場、奄美大島

1.緒言
 鹿児島県大島郡瀬戸内町所在の久慈白糖工場は,幕末に奄美大島に建設された工場の一つである。銀座煉瓦街等を設計したトーマス・ウォートルスによるものであり、発掘調査から出土した煉瓦遺構は、日本における煉瓦導入期の様相を考える上で重要な発見となった(鹿児島県立埋蔵文化財センター,2018)。その一方で、出土した煉瓦がどこで製作されたのか明らかとなっていない。そこで本研究では、蛍光X線分析を用いて出土煉瓦の胎土の特徴を化学組成から検討し、製作地を明らかとすることを目的とする。
2. データおよび解析方法
 胎土分析に供した資料は、瀬戸内町久慈白糖工場跡より出土した煉瓦27点である。考古学的な観点から主に形態的に4分類された普通煉瓦を中心に、分析に供する採取部分の確認を行った。表面の付着物等をクリーニング後に、煉瓦内面を中心に鏨や超硬カッター等を用いて研削した。タングステンカーバイト製乳鉢で粉末にし、計量後、マッフル炉で揮発製成分を除去した。試料にホウ酸リチウムを混和し、剥離剤としてヨウ化リチウム溶液を添加し、ビートサンブラーで試料を錠剤と波長分散型蛍光 X 線分析装置(リガク社製 ZSX Primus II)を用いて元素分析を行った。 先行研究(松井ほか,2019)を参考として煉瓦の胎土を構成する主成分と考えられるナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)の12元素の測定を行った。
3. 結果  
 考古学形態分類で平面の片方が凹む普通煉瓦であるⅠ-a類・Ⅰ-b類(aとbの細分はサイズ差)は、胎土は粒子が粗く脆弱である一方、平面の両面が凹む普通煉瓦であるⅡ類は、焼成が良好で堅緻であるという特徴がある。分析を行った元素間で2元素分布図を作成したところ、Ca-K分布図、Na-Ca分布図で2つの分布帯の存在が確認できた。
 Ca-K分布図では、Ⅰ-a類・Ⅰ-b類はKの含有量が多く、Caの含有量が少ない傾向にある。Ⅱ類は、Kの含有量は少なく、Caの含有量が多い傾向にある。これは先行研究(松井ほか,2019)(今村,2021)でも指摘されていたが、より分布帯の差異が明瞭となった。
 Na-Ca分布図では、Ⅰ-a類・Ⅰ-b類よりⅡ類がNaの含有量が多い傾向にあることがわかった。いずれの分析からもⅠ-a類・Ⅰ-b類とⅡ類の間に大きな差異があることが明らかとなった。
4. 考察と今後の課題
 Ⅰ-a類・Ⅰ-b類と、Ⅱ類において、元素組成に大きな差があることから胎土に用いた粘土の母岩の状況を反映していることが考えられる。煉瓦製作には、製作地の近隣の粘土を用いたという前提に立つと製作地が異なる可能性が高い。またⅠa類とⅠb類において、元素組成に大きな差がないことから考古学的形態差のみに差異があり製作地が同じである可能性が高いと考えられる。
 本研究では、先行研究(松井ほか,2019)では非破壊分析だったためにⅠ-a類とⅠ-b類で明瞭にはまとっていなかったが、これが非常にまとまりのうる化学組成であることが明らかとなった。また、新たにNaの含有量の多寡でも差異あることが確認できた。
 今後推定の根拠となる製作地と考えられ久慈地区周辺の母岩の化学的特性の分析や、島内に点在する残り3カ所の白糖工場跡出土の煉瓦に関する分析を加えることにより、日本における煉瓦製作導入期の状況が明らかになってくることが期待できる。
参考文献
鹿児島県立埋蔵文化財センター編 2018 『敷根火薬製造所跡・根占原台場・久慈白糖工場跡』 鹿児島県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書194

松井敏也・深見梨沙子 2019 「久慈白糖製造工場跡出土レンガの圧縮強度試験と蛍光X線分析」『研究紀要・年報縄文の森から』11 pp.95-pp.100 鹿児島県立埋蔵文化財センター

今村結記2021「久慈白糖工場跡出土の普通煉瓦の生産地に関する一考察」『南九州縄文通信№23 原点回帰・南の考古学 前迫亮一代表還暦記念論集』pp.195-pp.202 南九州縄文研究会 前迫亮一代表還暦記念論集刊行会