日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P80] 盆地状地下構造における下水汚染拡散・流動解析と新タンクモデル検証
― カルバマゼピン・井戸水変動観測を用いた検証

*原 航平1、*南出 賢亮1、*都筑 亮佑1 (1.海城高等学校)

キーワード:タンクモデル、地下水、環境

本研究は、新宿区立おとめ山公園の井戸水を用いて、地下水流動と下水由来汚染の実態を推定することを目的とする。地下水位データをもとに新たなタンクモデルを提案し、公園地下が三方を高台に囲まれた盆地状構造であるという仮説を検証する。難分解性物質カルバマゼピンを指標に、降雨前後の濃度と水位変化を観測し、流動解析を行う。高台部の帯水層はローム層、凝灰質粘土層、武蔵野礫層で構成され、井戸の帯水層は武蔵野礫層である。井戸の底面は東京湾中等潮位(T.P.)18.35m、武蔵野礫層はT.P.18m~T.P.23m、地面はT.P.21mとなっている。また、一旦水が圧力から解放されると、圧力の高い方へは逆流しないことを前提とする。なお、カルバマゼピン濃度測定・地下水位計測は、公園内の蛍舎の井戸を使用させていただいた。
公園周辺は三方を高台に囲まれた盆地状地形で、崖線上側の武蔵野礫層と繋がっている。礫層高台部の水位が一定値を超えると、水と汚染物質が地下に流入し、カルバマゼピン濃度が上昇すると考えられる。地下は斜面で流出係数が高く、閾値超過分は速やかに流出する。
水位計のHOBOを使用し、3月7日から30分おきに地下水位を観測した。その平均値をとり、観測値として評価に使用した。
また、カルバマゼピンの濃度に関しては、1~3月に蛍舎井戸にて原則3日おきに水を採取し、LS/MS/MS法で分析した。その上で、前日4日間の合計雨量と濃度をグラフにプロットした。
次に、タンクモデルを構築した。データ量の制限と拡張性の観点から、物理・機械学習モデルではなくタンクモデルを採用した。
公園周辺の地形は三方を高台に囲まれた盆地状構造になっており、崖線高台部のローム層を上段タンク、高台部の武蔵野礫層を下段タンク1、公園地下部を下段タンク2とする分岐流出タンクモデルで地下水流動を近似した。その内、高台部の2つのタンクのパラメータ(流出係数、閾値、貯留係数)は下河邊2022のものを使用した。その内、高台部の2つのタンクのパラメータ(流出係数、閾値、貯留係数)は下河邊2022のものを使用した。上段タンクの中間流出係数a1は2.3×10⁻³、閾値h1は6.4mm、貯留係数S1は2.8×10⁻²、下段タンク1への流出係数b1は3.2×10⁻³。下段タンク1の流出係数a2は1.4×10⁻³、閾値h2は14.9mm、S2は1.1×10⁻²、さらに下段への流出係数b2は1.0×10⁻⁵とした。また、公園地下部は高台部下段タンクと同じ武蔵野礫層を帯水層に持つため、b2とS2は新たに同定せず、下河邊2022のものを使用した。下段タンク2からは、さらに下段のタンクへの流出係数b2と閾値h3を超えた分は基底流出係数a4をかけたものが流出する。ここではh3とa4を同定する。
同定方法は、地下水位の観測データと計算データ(モデル)の誤差を最小にするためにExcelのソルバーのエボリューショナリ機能を用いて3000回計算した。しかし、自動収束しなかったためそこからは手動で同定を行った。

パラメータの同定結果は、流出係数a3が8.0*10-1、閾値h3が35.8mmであった。その時カルバマゼピンは、上段部での地表面または浅層への浸透を経て、地下水の中に含まれた状態で下段へ移動したと推定される。
また、カルバマゼピンの濃度は、概ね2.75ng/Lで推移しているが、降雨の後には0.1~0.5ng/Lほど濃度が上がることがわかった。

次に、モデルのタンクモデルの再現性を推定する指標であるNash係数を取った。Nash係数とは誤差の指標であり、-∞<NSE<1をとる。Nash係数は0.63であり、相当モデルの精度が高いと言える。
新しいタンクモデルの再現性の高さから、公園の地下が盆地状の地形になっていることが明らかになった。
降雨の後はカルバマゼピンの濃度が僅かに上がっており、高台部からカルバマゼピン濃度の高い水が流入していると言える。なお、高台部下段タンクからの直接流入である示す湧水のカルバマゼピン濃度は8.3ng/Lであった。また、研究で明らかにした流出係数は通常の自然地下水層に比べて大きいものであるが、公園周辺は斜面であるため妥当な値であるといえ、閾値を高く設定することで、実際の地下水位変動を再現した。高流出係数は、下段タンク2に流入した水が速やかに排出されていることを示す。一方で、水位の減少についてはモデルでは十分に表現できておらず、aがさらに大きい、または閾値が低い可能性がある。これらの結果から、盆地地形は、山・高台側が汚染物質によって汚染されていた場合、降雨後に高台部から汚染物質が集積しやすいことを示した。
これまでに、汚染メカニズムと盆地状のタンクモデルを組み合わせて汚染メカニズムの流動解析をした先行研究はあまりなく、本研究は革新的だといえる。この知見はおとめ山公園に限らず、同様の地形における地下水汚染のメカニズム解明に広く応用可能である汎用性の高い知見であるといえる。

謝辞
日本薬科大学教授 村橋毅教授
顧問 山田直樹先生
顧問 岩出昌先生
おとめ山公園職員 浅見幹夫氏
塚原悠一郎氏
加藤義成氏
守田叶佑氏
松岡晃誠氏 

参考文献
佐藤良介「新宿区おとめ山を公園湧水の実態調査と浸透施設導入効果の検討」2012年
下河邊太智「数値モデルを用いた湧水を取り巻く地下水の実態把握〜新宿区お留山公園周辺地域を例として〜」2022