日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P81] 地表環境(地表圏、水圏、大気圏)をコントロールする ~フラクタル構造の可能性~

*角谷 良祐1、*奥田 茉萌1、*長谷川 仁弥1、*筒井 康介1、*倉本 翔1 (1.京都府立嵯峨野高等学校)

キーワード:シェルピンスキー四面体、熱放射環境、流体、透過性

1 . 背景・目的
 シェルピンスキー四面体が組み合わされてできたフラクタル日除けは、放熱効果が高いため日除け自体の温度が上がりにくく、日除けからの熱放射を低く保つことができる(e.g. 酒井, 2011)。島田ら(2023)は、樹脂製のフラクタル日除けと一枚板の形状の日除けの比較を通して、フラクタル構造が日除け内部の熱を逃がしにくくしている可能性を指摘した。本研究では、シェルピンスキー四面体の構造と周囲の空気の動きが熱放射環境に与える影響を明らかにすることを目指した。

2 . 方法
 実験では3Dプリンターで作製した3種類のシェルピンスキー四面体を用いた。四面体の一辺は10cmであり、各面から大きさの等しい三角形をくり抜く回数が0回のものを四面体[0]、1回のものを四面体[1]、2回のものを四面体[2]とした。樹脂はABS 1.75mm を用いた。
 実験① 定温乾燥器で温めた3種類の四面体を室内に放置し、四面体が80℃から25℃に冷めるまでの温度を放射温度計(測定精度±2℃)を用いて10秒毎に計測した。計測時の室温は21.5-22℃であった。
計測は、次の2通りの条件で行った。サーキュレーターで1.1m/sの風を四面体に
条件ⅰ)当てていない状態  
条件ⅱ)当てている状態

 実験② 2つの定滑車にナイロン製糸 (5.0号)をかけ、一端に四面体、他端に10gの重りを吊るした。水で満たされた深さ70cmの水槽に四面体を沈め、重りの落下に伴い水面へと引き上げた。この様子を机上の三脚に固定したiSightカメラ(fps60) で撮影した。0.25秒を1区間と定め、落下開始時から1区間毎に重りが落下した距離を測定した。四面体の上昇速度は重りの落下速度と等しいとみなし、区間毎の平均速度の変化量から四面体の終端速度を算出した。
                                  
3 . 結果及び考察
 四面体[0],[1],[2]それぞれの質量は19.23g、19.68g、19.50gであり、加熱後の樹脂の密度は1.05g/cm3 であった。
 ①四面体が約80℃になってから50秒間で低下した温度は、条件ⅰ)では
四面体[0]:18.9℃ 四面体[1]:19.3℃ 四面体[2]:20.2℃ となり、くり抜き回数の差による温度低下に明確な差は見られなかった。
一方、条件ⅱ)では、四面体[0]:27.6℃ 四面体[1]:30.7℃ 四面体[2]:34.5℃ となり、くり抜き回数が多い四面体ほど、速やかに温度が低下した。
                                 
 ②各区間での四面体の上昇速度は常に四面体[2]、[1]、[0]の順に大きかった。終端速度は四面体[0]で144mm/s、四面体[1]で181mm/s、四面体[2]で193mm/sであり、くり抜き回数が多くなるほど大きくなった。          
                                  
 条件ⅱ)ではくり抜き回数の増加に伴う四面体の構造変化が温度低下を大きくしたと考えられる。一方で条件 i)では、構造の変化が条件 ii)と同様であるにも関わらず温度低下に差が見られなかった。この時条件 i)とii)で異なっている条件は風のみであるため、構造変化が温度低下に影響を与えるかどうかは風によって決まったと考えられる。
②の結果となった原因としては、四面体の構造変化によって四面体が受ける抵抗が小さくなったことが考えられる。今回は、媒質として水を用いたが、空気を媒質としても同じ傾向が当てはまると考えている。①の結果となったのは、空気が通り抜けやすいという構造を四面体がもつことによって、熱放射された空気が入れ替わったからだと考えられる。

4.今後の展望 
 今回は四面体全体が受ける抵抗を測定したが、四面体表面の変化ではなく内部構造が抵抗に与える影響を明らかにしたい。また、空間内の熱の移動をシミュレーションにより数値的に解析したい。実験の結果から、日除け以外にも海岸構造物としてフラクタル構造が利用できる可能性があると考える。今後は四面体の強度などを明らかにし、そのような活用が実現できるかどうかを検討したい。

5 . 参考文献
1)e.g. 酒井敏他,2011. フラクタル日除けによる放射環境改善効果 日本ヒートアイランド学会論文集 Vol.6
2)清水すみれ、本村彩葉、島田飛鳥、井尻隆車、綿貫然太、大八木陽貴、中司凛太朗,2023.フラクタル日除けの放射環境への影響の定量的評価
3)島田飛鳥、清水すみれ、本村彩葉、井尻隆車、綿貫然太、大八木陽貴、中司凛太朗,2023.フラクタル図形の日除けへの利用に向けた特性評価

6 . 謝辞
 本研究は、文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール支援事業の助成金により遂行しました。