13:45 〜 15:15
[O11-P96] 仙台高校周辺に分布する鉄バクテリア
キーワード:鉄バクテリア、二価鉄、水質調査、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法
1.研究の背景と目的
鉄バクテリアとは、Fe²⁺をFe³⁺に変換する際に得られるエネルギーを使い生命活動を行う生物で、酸化鉄の殻をもち、Fe2+を多量に含む地下水が湧出する場所などで繁殖する。繁殖に伴い水面に油膜に似た酸化鉄の被膜を形成し、赤褐色沈殿物を生成する。
宮城県仙台市にある仙台高校周辺において側溝や池などの多くの水辺で、赤褐色沈殿物や油膜状物質を発見し(写真1)、これらも鉄バクテリアによるものなのか調査した。これまでの研究では、油との比較や、顕微鏡での観察、水中のFe2+濃度の測定等を行い、赤褐色沈殿物と油膜状物質は、鉄バクテリアによって発生した物質である可能性が高いと考えた。しかし、鉄バクテリアの菌体は確認できておらず、赤褐色沈殿物や油膜状物質の構成元素分析は行っていない。そのため今年度の研究では、より詳しい顕微鏡観察や水質測定を行うことにより、調査地域の鉄の状態を把握し、鉄バクテリアの種類の特定することと、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)を利用して赤褐褐色沈殿物や油膜上物質の構成元素を確認することを目的とした。
2.実験方法
2-1水質測定Field New 4in1 ORP測定器(FN006A)を使用し、水中のpH,酸化還元電位,水温を測定する。
2-2光学頭微鏡で鉄バクテリアの形状の特徴を観察する。酸化鉄の鞘の中にいる菌体を見るために、塩酸と水を1:2の割合で混ぜた溶液を、プレパラートとカバーガラスの間に横から2滴垂らした後に観察を行った。
2-3走査電子顕微鏡(JSM-7001F、JSM-7000F)を使用し、光学顕微鏡で見ることができなかった倍率での観察をした。エネルギー分散型X線分光法で元素分析を行った。試料はプレパラート上に1~2滴垂らし、乾かした後に、オスミウムで蒸着を行った。
3.結果
3-1水質測定の結果、表1のとおり、pHは中性付近で、酸化還元電位は負の値であった。
3-2光学顕微鏡観察の結果、鉄バクテリアと思われるものが2種類見られた。1種類は直線状の鞘の中に、幅が約2µmの菌体が並んでいる形状で(写真2)、この種類は数多く見られた。もう1種類は、幅が約1µmでリボンをねじったような形状で、数は少なかった。
3-3電子顕微鏡観察の結果、直線状の鞘の太さは約0.8µm~1.2µmで、表面はざらざらとした凹凸があり、鞘には穴が開いていた。リボン形状の幅は短い所で約0.5µm、太い所で約1.2µmであり、表面は繊維状であった。どちらの種類にも、周りの所々に球形の塊がついているのが見られた。 構成元素分析の結果、赤褐色沈殿物を構成する鉄バクテリアと思われる物質や球体の物質、油膜状物質には鉄と酸素が多く含まれているとわかった。写真3から8に、電子顕微鏡写真と鉄と酸素の元素マッピング図を示す。
4.考察
水質測定結果をEh(電位)-pHにプロットすると、図1のようになり、Fe²⁺が優占的に存在しており、鉄バクテリアが繁殖しやすい環境であるとわかった。今回仙台高校周辺で発見した、中性付近で直線状の鞘をもつ鉄バクテリアはLeptothrix ochracea(レプトスリックス オクラケア)、リボン状の鉄バクテリアはGallionella ferruginea (ガリオネラ フェルギネア)という種類の鉄バクテリアであると考える。また、赤褐色沈殿物や油膜状物質の主な構成元素は鉄と酸素であり、鉄バクテリアによって発生した物質で間違いないと考える。
5.謝辞
本研究は中谷財団より科学教育振興助成を受けて活動を行いました。
電子顕微鏡観察を行うにあたり、東北大学理学研究科地学専攻の電子顕微鏡をお借りしました。中村教博先生には電子顕微鏡観察についての様々なアドバイスを、伊藤嘉紀先生に丁寧な技術指導を頂きました。心より感謝申し上げます。
6.参考文献
・文献1 小池 良洋(2011)油膜と鉄バクテリアの判別方法 中部電力技術開発ニュースNo.143 17-18
・文献2 島田 式典・本田 数博(2008)愛名緑地ビオトープの鉄細菌による赤褐色沈殿物の観察 神奈川自然誌資料(29)61-64
・文献3 竹野 直人 Eh-pH図アトラス 熱力学データベースの相互比較 産業技術総合研究所深部地質環境研究センター
・文献4 加藤 真悟(2015) 中性pH付近で生育する鉄酸化菌の生理形態とその生物地球化学的重要性 地球科学49 1-17
・文献5 日本産業規格JIS K 0350-80-10 工業用水中の鉄細菌試験方法
・文献6 日本の水道生物–写真と解説- 改定版 平成5年 社団法人日本水道協会
・文献7 環境微生物図鑑 株式会社講談社(1995)
鉄バクテリアとは、Fe²⁺をFe³⁺に変換する際に得られるエネルギーを使い生命活動を行う生物で、酸化鉄の殻をもち、Fe2+を多量に含む地下水が湧出する場所などで繁殖する。繁殖に伴い水面に油膜に似た酸化鉄の被膜を形成し、赤褐色沈殿物を生成する。
宮城県仙台市にある仙台高校周辺において側溝や池などの多くの水辺で、赤褐色沈殿物や油膜状物質を発見し(写真1)、これらも鉄バクテリアによるものなのか調査した。これまでの研究では、油との比較や、顕微鏡での観察、水中のFe2+濃度の測定等を行い、赤褐色沈殿物と油膜状物質は、鉄バクテリアによって発生した物質である可能性が高いと考えた。しかし、鉄バクテリアの菌体は確認できておらず、赤褐色沈殿物や油膜状物質の構成元素分析は行っていない。そのため今年度の研究では、より詳しい顕微鏡観察や水質測定を行うことにより、調査地域の鉄の状態を把握し、鉄バクテリアの種類の特定することと、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)を利用して赤褐褐色沈殿物や油膜上物質の構成元素を確認することを目的とした。
2.実験方法
2-1水質測定Field New 4in1 ORP測定器(FN006A)を使用し、水中のpH,酸化還元電位,水温を測定する。
2-2光学頭微鏡で鉄バクテリアの形状の特徴を観察する。酸化鉄の鞘の中にいる菌体を見るために、塩酸と水を1:2の割合で混ぜた溶液を、プレパラートとカバーガラスの間に横から2滴垂らした後に観察を行った。
2-3走査電子顕微鏡(JSM-7001F、JSM-7000F)を使用し、光学顕微鏡で見ることができなかった倍率での観察をした。エネルギー分散型X線分光法で元素分析を行った。試料はプレパラート上に1~2滴垂らし、乾かした後に、オスミウムで蒸着を行った。
3.結果
3-1水質測定の結果、表1のとおり、pHは中性付近で、酸化還元電位は負の値であった。
3-2光学顕微鏡観察の結果、鉄バクテリアと思われるものが2種類見られた。1種類は直線状の鞘の中に、幅が約2µmの菌体が並んでいる形状で(写真2)、この種類は数多く見られた。もう1種類は、幅が約1µmでリボンをねじったような形状で、数は少なかった。
3-3電子顕微鏡観察の結果、直線状の鞘の太さは約0.8µm~1.2µmで、表面はざらざらとした凹凸があり、鞘には穴が開いていた。リボン形状の幅は短い所で約0.5µm、太い所で約1.2µmであり、表面は繊維状であった。どちらの種類にも、周りの所々に球形の塊がついているのが見られた。 構成元素分析の結果、赤褐色沈殿物を構成する鉄バクテリアと思われる物質や球体の物質、油膜状物質には鉄と酸素が多く含まれているとわかった。写真3から8に、電子顕微鏡写真と鉄と酸素の元素マッピング図を示す。
4.考察
水質測定結果をEh(電位)-pHにプロットすると、図1のようになり、Fe²⁺が優占的に存在しており、鉄バクテリアが繁殖しやすい環境であるとわかった。今回仙台高校周辺で発見した、中性付近で直線状の鞘をもつ鉄バクテリアはLeptothrix ochracea(レプトスリックス オクラケア)、リボン状の鉄バクテリアはGallionella ferruginea (ガリオネラ フェルギネア)という種類の鉄バクテリアであると考える。また、赤褐色沈殿物や油膜状物質の主な構成元素は鉄と酸素であり、鉄バクテリアによって発生した物質で間違いないと考える。
5.謝辞
本研究は中谷財団より科学教育振興助成を受けて活動を行いました。
電子顕微鏡観察を行うにあたり、東北大学理学研究科地学専攻の電子顕微鏡をお借りしました。中村教博先生には電子顕微鏡観察についての様々なアドバイスを、伊藤嘉紀先生に丁寧な技術指導を頂きました。心より感謝申し上げます。
6.参考文献
・文献1 小池 良洋(2011)油膜と鉄バクテリアの判別方法 中部電力技術開発ニュースNo.143 17-18
・文献2 島田 式典・本田 数博(2008)愛名緑地ビオトープの鉄細菌による赤褐色沈殿物の観察 神奈川自然誌資料(29)61-64
・文献3 竹野 直人 Eh-pH図アトラス 熱力学データベースの相互比較 産業技術総合研究所深部地質環境研究センター
・文献4 加藤 真悟(2015) 中性pH付近で生育する鉄酸化菌の生理形態とその生物地球化学的重要性 地球科学49 1-17
・文献5 日本産業規格JIS K 0350-80-10 工業用水中の鉄細菌試験方法
・文献6 日本の水道生物–写真と解説- 改定版 平成5年 社団法人日本水道協会
・文献7 環境微生物図鑑 株式会社講談社(1995)
