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[O11-P97] 重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する 第3報
キーワード:重力可変装置、火星重力、水の浸透
1. 背景と目的
われわれ共同研究校4校はそれぞれ重力可変装置を製作し改良を重ねてきた.昨年,これらの装置を用いて火星表面の水の流れをシミュレートすることを再計画し実験を始めた.これまでの火星探査で,堆積岩の存在や液体が流れた痕跡などが報告された. 2015年には,水(液体)が流れている証拠が確認された.火星表面での重力は地球の約0.4倍でしかない.火星表面で,水はどのように流れているのだろう.また,火星の砂は水をどう染みこませているのだろう.昨年,火星の重力下での水の浸透実験を実施し.地球重力との比較を行った.今回は,地球重力・火星重力だけではなく,さらに2つの重力値で実験を行った.また,砂の粒径を4つ用意して浸透速度の比較を行った.
2. 重力可変装置
アトウッドの滑車を応用して重力可変装置を製作した.落下棟の上部に自転車の車輪を滑車として利用したタイプと,約100cmの間隔をあけて2個の滑車を設置した2タイプの装置を設計し製作した.落下カプセルと上昇カプセルをワイヤーで繋ぎ,滑車に吊るした.上昇カプセルを手で支えておき,実験準備が終了後,手を離してカプセルを解放する.落下カプセルにはCrossbow 社製の加速度計CXL17LF3を取り付け,重力加速度を測定した.落下カプセルはビーズクッションで受け止め,装置への衝撃を吸収させた.
3. 水の浸透実験概要と注水装置の改良
砂が水に染み込む様子を観察するための装置を改良したが,基本的な仕組みは変わっていない.上部容器に水を貯めておき,目的の重力値になった時に,この貯めておいた水をあらかじめ砂(ガラスビーズ)を詰めておいた下部容器の中に注ぐ.水が染みこむ様子をカメラ(オリンパス Tough TG-5)で高速度撮影(240fps)した.昨年度の注水装置を3箇所改良した.(1)上部容器の底の穴を塞いでいたゴム栓の代わりに,円錐形の金属栓を用いた.この金属栓にはたこ糸がつけられており,この糸の先は落下棟の天板に接続されている.落下カプセルを落下させたときに,目的の重力に達した位置でこの栓が抜け,上部容器に蓄えられていた水が下部容器の砂の上に流れ落ちる.金属栓に変更したために,栓が抜ける時に生じていた落下カプセルの振動が発生しなかった.(2)上部容器の位置を上下に移動できるようにμステージを利用した.(3)下部容器を円筒形のパイプに変更した.また,流し込む水の量を10ccとした.
4. 水の浸透実験結果
水が砂に染みこむ様子を1G(地上重力),0.7G,0.4G(火星重力),0.2Gの4つの重力値で比較した.また4つの粒径の砂(直径0.7〜1.0mm,1.0〜1.4mm,1.5〜2.0mm,2.0〜2.5mm)を用いた.水が砂の表面に届いた瞬間を時間軸の原点として,浸透する深さを1/240秒毎に測定した.重力の大きさの違いにより,また砂の粒径の違いにより水の浸透速度が異なった.傾向として,粒径が大きいほど浸透速度が大きい,また,重力が大きいほど浸透速度が大きい.また,各粒径で毛細管現象によって持ち上げられた水の高さを比較した.粒径の小さい方が水面の高さは高くなる.
5. 考察
重力および砂の粒径と浸透速度の相関関係について考察した.水の浸透速度は最終的に一定速度になっているので,水の落下を妨げる要因として毛細管現象を最も大きな要因と考えられる.地上重力で下部容器に砂を詰めた状態での毛細管現象による水が吸い上げられた高さを測定した.この値から導出される力が抵抗として働いて,終端速度を作ったと考えている.2017年に重力と毛細管現象について行った実験結果をもとに,今回測定した浸透速度の違いを説明可能か検証する.
6. 今後の展望
さらに実験データを蓄積して,重力および砂の粒径と浸透速度の相関関係について確定をしていきたい.低重力下での水の浸透を元に宇宙農業へ繋げる基礎データとなるようにしっかり検証をおこなう.さらに,斜面を流れる水についても,実験的に重力の影響を確認する装置の製作を進めていきたい.
7. 参考文献
「惑星地質学」宮本英昭,平田成,橘省吾編集,東京大学出版会 2008年.
C. Sunday et al. Cite as: Rev. Sci. Instrum. 87, 084504 (2016).
G. Viera-Lopez et al. astro-ph.IM arXiv:1703.10315v1 (2017).
E.W. Washburn, Phys. Rev. 17 (3) (1921).
N. Fries, M. Dreyer, Journal of Colloid and Interface Science Vol. 320, Issue 1, (2008).
われわれ共同研究校4校はそれぞれ重力可変装置を製作し改良を重ねてきた.昨年,これらの装置を用いて火星表面の水の流れをシミュレートすることを再計画し実験を始めた.これまでの火星探査で,堆積岩の存在や液体が流れた痕跡などが報告された. 2015年には,水(液体)が流れている証拠が確認された.火星表面での重力は地球の約0.4倍でしかない.火星表面で,水はどのように流れているのだろう.また,火星の砂は水をどう染みこませているのだろう.昨年,火星の重力下での水の浸透実験を実施し.地球重力との比較を行った.今回は,地球重力・火星重力だけではなく,さらに2つの重力値で実験を行った.また,砂の粒径を4つ用意して浸透速度の比較を行った.
2. 重力可変装置
アトウッドの滑車を応用して重力可変装置を製作した.落下棟の上部に自転車の車輪を滑車として利用したタイプと,約100cmの間隔をあけて2個の滑車を設置した2タイプの装置を設計し製作した.落下カプセルと上昇カプセルをワイヤーで繋ぎ,滑車に吊るした.上昇カプセルを手で支えておき,実験準備が終了後,手を離してカプセルを解放する.落下カプセルにはCrossbow 社製の加速度計CXL17LF3を取り付け,重力加速度を測定した.落下カプセルはビーズクッションで受け止め,装置への衝撃を吸収させた.
3. 水の浸透実験概要と注水装置の改良
砂が水に染み込む様子を観察するための装置を改良したが,基本的な仕組みは変わっていない.上部容器に水を貯めておき,目的の重力値になった時に,この貯めておいた水をあらかじめ砂(ガラスビーズ)を詰めておいた下部容器の中に注ぐ.水が染みこむ様子をカメラ(オリンパス Tough TG-5)で高速度撮影(240fps)した.昨年度の注水装置を3箇所改良した.(1)上部容器の底の穴を塞いでいたゴム栓の代わりに,円錐形の金属栓を用いた.この金属栓にはたこ糸がつけられており,この糸の先は落下棟の天板に接続されている.落下カプセルを落下させたときに,目的の重力に達した位置でこの栓が抜け,上部容器に蓄えられていた水が下部容器の砂の上に流れ落ちる.金属栓に変更したために,栓が抜ける時に生じていた落下カプセルの振動が発生しなかった.(2)上部容器の位置を上下に移動できるようにμステージを利用した.(3)下部容器を円筒形のパイプに変更した.また,流し込む水の量を10ccとした.
4. 水の浸透実験結果
水が砂に染みこむ様子を1G(地上重力),0.7G,0.4G(火星重力),0.2Gの4つの重力値で比較した.また4つの粒径の砂(直径0.7〜1.0mm,1.0〜1.4mm,1.5〜2.0mm,2.0〜2.5mm)を用いた.水が砂の表面に届いた瞬間を時間軸の原点として,浸透する深さを1/240秒毎に測定した.重力の大きさの違いにより,また砂の粒径の違いにより水の浸透速度が異なった.傾向として,粒径が大きいほど浸透速度が大きい,また,重力が大きいほど浸透速度が大きい.また,各粒径で毛細管現象によって持ち上げられた水の高さを比較した.粒径の小さい方が水面の高さは高くなる.
5. 考察
重力および砂の粒径と浸透速度の相関関係について考察した.水の浸透速度は最終的に一定速度になっているので,水の落下を妨げる要因として毛細管現象を最も大きな要因と考えられる.地上重力で下部容器に砂を詰めた状態での毛細管現象による水が吸い上げられた高さを測定した.この値から導出される力が抵抗として働いて,終端速度を作ったと考えている.2017年に重力と毛細管現象について行った実験結果をもとに,今回測定した浸透速度の違いを説明可能か検証する.
6. 今後の展望
さらに実験データを蓄積して,重力および砂の粒径と浸透速度の相関関係について確定をしていきたい.低重力下での水の浸透を元に宇宙農業へ繋げる基礎データとなるようにしっかり検証をおこなう.さらに,斜面を流れる水についても,実験的に重力の影響を確認する装置の製作を進めていきたい.
7. 参考文献
「惑星地質学」宮本英昭,平田成,橘省吾編集,東京大学出版会 2008年.
C. Sunday et al. Cite as: Rev. Sci. Instrum. 87, 084504 (2016).
G. Viera-Lopez et al. astro-ph.IM arXiv:1703.10315v1 (2017).
E.W. Washburn, Phys. Rev. 17 (3) (1921).
N. Fries, M. Dreyer, Journal of Colloid and Interface Science Vol. 320, Issue 1, (2008).
