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[SEM16-P17] 異なる加熱雰囲気がもたらす考古地磁気強度の差異とその信頼性について
キーワード:考古地磁気強度、加熱雰囲気、綱川・ショー法、弥生土器
日本における過去数千年の地磁気強度の永年変化の標準曲線は、方位の標準曲線とともに地球外核のダイナミクスを探る基礎的データとして重要である。また、地磁気強度が大きく変化する時代であれば、年代不明の考古遺物の焼成年代を推定する手がかりとなる。日本の考古地磁気強度の標準曲線の構築のためには信頼性の高い考古地磁気強度を得る必要がある。本研究では、加熱雰囲気の異なる状況で、福岡県春日市の御供田遺跡から発掘された弥生土器に対して綱川・ショー法による古地磁気強度の測定実験を行った。45個の土器サンプルから一つずつ真空中と空気中で熱磁気分析を行ったところ、真空中よりも空気中の方が加熱と冷却の誘導磁化曲線が可逆的であった。また、真空中加熱と空気中加熱によって綱川・ショー法を実行した結果、26個中19個の土器サンプルに所属する89個中60個のスペシメンが真空中加熱で、8個中7個の土器サンプルにおける23個中17個のスペシメンが空気中加熱でそれぞれ綱川・ショー法の合格基準に合格した。合格率は真空中加熱(67%)よりも空気中加熱(73%)の方がわずかに高い。同じ土器片サンプルの姉妹スペシメンから得られた考古地磁気強度は、真空中加熱と空気中加熱とで差がある。特に、土器編年で同じ時代に作成されたと判明しているサンプル45とサンプル46の考古地磁気強度のサンプル平均は、真空中加熱の場合は標準偏差の範囲で一致しないが、空気中加熱の場合は一致する。加熱前後の非履歴残留磁化(ARM)の変化を示すARM0-ARM1プロットは、真空中加熱ではほとんど全てが曲線になっていて、最も変化の大きいものは放物線のような形状になっていた。空気中加熱では曲がってはいるが変化がわずかのもの、曲がっていないが変化が比較的大きなものに分類される。これらのARM0-ARM1プロットの曲率は、真空中加熱では0–1.40(ヒストグラムのピークは0.5–0.6および1.2–1.3)、空気中加熱では0–0.53(ヒストグラムのピークは0–0.1)であった。ヒストグラムのピークを比較すると空気中加熱の方がARM0-ARM1プロットの曲率が真空中加熱よりも小さい。これらの結果は、今回の弥生土器試料に対する空気中加熱を用いた綱川・ショー法が真空中加熱を用いた綱川・ショー法よりも信頼性の高い手法だということを示している。真空中加熱の綱川・ショー法で合格率が高いことは問題だが、ARM0-ARM1プロットの曲率をTsunakawa-Shaw法の新しい合格基準に用いることで信頼性の低い結果を排除できるかもしれない。