日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS09] 地震波伝播:理論と応用

2025年5月30日(金) 10:45 〜 12:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹尾 明子(東京大学地震研究所)、澤崎 郁(防災科学技術研究所)、加藤 政史(株式会社地球科学総合研究所)、二宮 啓(産業技術総合研究所)、座長:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、二宮 啓(産業技術総合研究所)


11:15 〜 11:30

[SSS09-06] 円筒形モルタル試料中の空隙が透過弾性波に与える影響

*中山 雅之1、榎吉 拓哉1川方 裕則1 (1.立命館大学)

キーワード:空隙、散乱、弾性波、コーダ波、実験、不均質

一般に,地殻を構成する岩石は複数の鉱物種から構成される不均質媒質である.不均質媒質中を地震波が伝わると,地震波が強く散乱され,波動場が乱される.西澤 (2005) は,不均質サイズの異なる花崗岩試料に対して弾性波透過実験を行い,得られる波動場の特徴が不均質サイズによって異なることを明らかにした.一方,表層地盤のような多孔質媒質は,鉱物と空隙の弾性定数のコントラストが大きく強い不均質を持ち,弱い不均質媒質中の弾性波の伝達関数を近似的に記述する既存の理論 (例えば,Sato and Fehler, 1998) を適用できない可能性がある.Kawakata (2023, 2024) は,強い不均質を持つ媒質中を伝わる弾性波の伝播特性を明らかにするために,天然の斑れい岩 (弱い不均質を持つ試料),空隙を模擬した中空のポリプロピレン製の球 (PP球) をセメントモルタル中に複数埋設したアナログ試料 (強い不均質を持つ試料) に対して弾性波透過実験を行った.しかしながら,得られた弾性波記録の挙動が複雑であったことに加え弾性波信号強度が低かったため弾性波の伝播特性を明らかにすることはできなかった.本研究では,よりシンプルな状況を考え,信号強度を高めるために圧電トランスデューサを受信に用いて,一つの空隙が弾性波の伝播特性へ与える影響を調べることにした.空隙を一つ含むアナログ試料 (S-PP) と空隙を含まないアナログ試料 (S-Intact) に対して弾性波透過実験を行い,両者の弾性波伝播特性の違いを調べた.

セメントモルタルと水を質量比40:7で混ぜ合わせた試料を作成した (以降,単にセメントモルタル).S-PPの作成方法について,型の約半分までセメントモルタルを流し込んだ後,空隙を模擬した中空のPP球 (直径9.5 mm) を試料中央に設置し約半日放置した.ただし,セメントモルタルを流し込む際には気泡が生じる (Inanishi et al., 2022) ため,想定していない空隙により透過波が散乱される可能性がある.そこで,できる限り気泡を除去するために,音響スピーカを使用して試料底部から振動を与えながら固めた.PP球が隠れる程度までモルタルを加え,PP球が動かないことを確認し,型の上部までモルタルを流し込み,同様に振動させながら2日以上放置した.S-Intactの作成方法について,振動させながら2日以上放置した.完成した試料のサイズはともに,直径56 mm,高さ~120 mmであった.試料の両端に送振子 (圧電素子) と受振子 (広帯域圧電トランスデューサ) を貼り付けた.パルス・ジェネレータから-100 Vのパルス信号 (幅1μs) を送振子に繰り返し印加した.受信波形をサンプリング周波数10 Mspsで収録し,それらを2500回スタックした.

S-PPおよびS-Intactそれぞれで得られた波形について,エンベロープの両対数グラフとスペクトログラムを図1に示す.エンベロープに関して,S-Intactでは直線的に減衰するのに対して,S-PPでは指数関数的に減衰した.スペクトログラムに関して,0.04 MHzより高周波ではS-PPのほうが,直達波およびコーダ波の減衰が強くなる傾向が見られた.一方,0.04 MHzより低周波では,S-PPにおいてコーダ波が卓越した.収録波形から推定したP波速度 (~3 km/s) を考慮すると,波長は0.04 MHzにおいて75 mmであった.PP球の直径が約10 mmであることから波長はPP球の直径の8倍程度となる.つまり,0.04 MHzより高周波では後方散乱が卓越することにより直達波およびコーダ波の減衰が生じたと考えられる.一方,0.04 MHzより低周波では前方散乱が卓越することにより直達相の直後付近に強いコーダ波が生じたと考えられる.今後は,両者のコーダ減衰の様子に違いが生じた原因をより詳細に調べる予定である.

謝辞: 本研究は,JSPS科研費JP22H01336の助成を受けた.