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[SSS10-P27] 石英粉末試料を用いた回転摩擦試験によるboundary shearの発達過程の解明
キーワード:摩擦実験、数値解析
地震時の断層すべり挙動の理解は,断層のすべり量の評価および解放されるエネルギーの推定において極めて重要である.地下の岩石がせん断を受けて断層を形成し,変位を増大させる過程において,リーデル面やY面といった特定の方向性をもつ面構造が発達することがあり,これらは複合面構造と呼ばれる.また,複合面構造の発達のみならず,様々なfoliationの構造が発達し,剪断帯の厚化が生じることは広く知られている.さらに,剪断帯の内部には,複合面構造とは異なる,上盤もしくは下盤に沿ってひずみ・変位が集中するboundary shearの形成が,フィールドでの断層の内部構造の観察や摩擦実験後の試料の観察により報告されている(例えば,Marone and Scholz, 1989; Niemeijer et al., 2010).また,先行研究として粒状物質の剪断変形に関する数値解析が行われており,摩擦挙動は上昇,下降および定常状態という三段階の変化を見せ,定常状態の終盤においては,ガウジ層と運動側の圧力プレートとの境界付近に boundary shearに相当すると考えられる粒子速度の明瞭な不連続面が確認された(宮本ほか,2022).しかし,このboundary shearの発達の物理的描像およびその素過程について,ほとんど解明されていないのが現状である.そこで,本研究では,boundary shearの発達過程の解明を目的とし,以下に記す室内摩擦実験および微小構造観察を実施した.また,並行して数値解析を実施する予定である.研究方法として、室内岩石摩擦実験では,京都大学設置の回転式摩擦試験機を用いた.試料及び実験条件の設定においては,せん断の状態を定性的に表現する無次元量であるInertial numberの値を先行研究(宮本ほか,2022)による値(1×10⁻⁴)とほぼ同一にすることにより,スケール効果の除去を試みた.具体的には,試料に粒径を24.98μmに調整した人工石英砂を用い,すべり速度は0.07 m/s,垂直応力は5 MPaとした.試料は,実験開始時の模擬断層ガウジの厚さが約1 mmとなるように2 g使用した.すべり距離は最大13 mとし,pre-compactionのみ行った実験前の試料および,2,6,13 mの各すべり距離における試料の薄片を作成して偏光顕微鏡による変形組織の観察を実施した.室内実験と並行して,フリーソフトウェアであるLIGGGHTSを用いて3次元個別要素法による摩擦実験を模擬した数値解析を行う.ヤング率とポアソン比に石英での実測値(Ohno et al., 2006)を設定した.粒径1, 1.5, 2 mm の粒子を計1,700個(平均粒径1.2 mm)用い,すべり速度は0.16 m/s,垂直応力は25 MPaとする.垂直応力下における解析開始時点でのガウジ厚は約17 mmである.室内摩擦実験の結果,すべり距離13 mと長めに設定したときの薄片観察において,境界面での粒子の局地的な細粒化と変色が確認され,この変形がboundary shearに相当するものだと考えられる.一方で,すべり距離が2 mで最後の急激な弱化が始まる手前で止めたときの薄片観察では,境界付近での細粒化は確認されず,構造に違いが確認された.また,摩擦挙動の変化として,すべり距離が5 m程度に達すると摩擦が急激に減少し,その低い値でほぼ一定の値を示すことが確認できた.今後の計画として,すべり距離13 mの室内摩擦実験後試料の薄片観察により,boundary shearに相当するものが確認されたものの,数値解析との比較の精度をあげるために実験条件を見直し,より実現性の高い条件で実験を実施していく.発表では実験結果の速報と合わせて,数値解析の結果との比較から,boundary shearの発達と摩擦挙動,すべり距離,さらに粒子の状態(応力鎖や粒子速度の空間分布)の時間遷移との関係について精査した結果を報告する予定である.