日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)、座長:熊澤 貴雄(統計数理研究所)、勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

14:30 〜 14:45

[SSS12-04] 余震の減衰と余効すべりの理解のための微分方程式表現

*橋本 徹夫1横田 崇2 (1.防災科学技術研究所、2.愛知工業大学)

キーワード:改良大森公式、余震減衰、余効すべり、微分方程式

余震系列の改良大森公式は,単位時間の余震数n(t)=K(t+c)-p ---(1)(Utsu, Geophys.Mag., 1961) と表される.なお,積算数は,N(t)=K{c1-p-(t+c)1-p}/(p-1) (Utsu et al., JPE, 1992) である.ここで、式(1)を時間 t で微分すると,dn(t)/dt=-pK(t+c)-(p+1)=-p(t+c)-1K(t+c)-p で,整理すると次の式になる.           
  dn(t)/dt=-p(t+c)-1n(t)---(2).                                                              ここで,比較のために,高校時代に習う放射性物質の崩壊の微分方程式の次の式を考えてみる.             
  dN(t)/dt=-λN(t)---(3)                                                                   両式は係数部分とn(t)またはN(t)の積が大きいほど,それぞれ、減少率が大きくなることを示している。両式を比較すると,λ~p(t+c)-1---(4)である.式(3)の微分方程式の係数は一定で,崩壊速度が時間に依存しないことを示し,一方,式(2)の係数相当部分は時間とともに小さくなることを示している.これは本震発生後に断層およびその周辺空間がわさわさした地震の発生しやすい緩い状態からビシッとしまって固い状態へと変化しているような状況を示していると考える.さらに言えば,本震からの時間が短い場合,係数が大きい,つまり1回の余震の発生に対して余震の生産性が高く,時間が経過するとともに,余震の生産性が低くなることを意味する.これは余震が余震を生み,本震発生後初期により大きな余震の頻度が高く,余震がより多く発生するという効果を含んでいるとも考えられる.余震が余震を生むことで余震発生の主要因ではなく,本質的には,余効変動に関わる原因と同様なものが余震を引き起こしていると考えている.
そこで,余効変動の1つのモデルとして,変位量はD(t)=aln(1+t/b)+c+dln(1+t/e)-fexp(-gt)+Vtと表される(Tobita, EPS, 2016).ここでは,右辺の第 1 項 を主要部分として扱って.時間t で微分すると,dD(t)/dt=a/b(1+t/b)-1が得らる.なお,ここで,dD/dt=v(t)として,v(t)=a/b(1+t/b)-1を,もう一度微分して整理すると,次の式が得られれ,余効すべりも,余震数の減衰と同様の動きを示すことが分かる.                                           
  dv/dt=-1/b(1+t/b)-1v--------(5)                                          
ところで,式(4)の関係を導いた放射性物質の崩壊との比較の事例は,地震活動総説(宇津,1999)に紹介されているが,式(3)は「放射性元素の崩壊による放射能の減衰と同じで,べき分布とならす余震現象の説明にならない」とあり,「破壊の起こる確率が時間とともに変化する場合」として係数μ(t)=(p-1)(t+c)-1が導かれている.これは、我々が単位時間の余震数と放射性物質の個数の微分方程式を比較したため出てきた差と考える.ここで,dNa(t)dt=-μ(t)Na(t)で、t以降の余震の発生数Na(t)を考えるとすると,Na(t)=n(τ)dτ(t~∞の積分,以下同様)と書けて,上記の式に代入し.下記の両辺を比較してμ(t)を算出できる.
左辺=d/dtn(τ)dτ=dn(τ)/dtdτ=n(∞)-n(t)=n(t)  
右辺=-μ(t)K(τ+c)-pdτ=-μ(t)K/(1-p)(∞+c)1-p+μ(t)K/(1-p)(t+c)1-p=-μ(t)(t+c)/(p-1)n(t)
別の微分方程式の表現としては,大森の式について,切断ベルヌーイ型の微分方程式 dn/dt+σn2=0 の解の形で扱われており (e.g. Zavyalov et al., Appl. Sci., 2022),Guglielmi (Izvestiya, 2016)はσが時間に依存することを論じている.しかし,今回表示した1階時間微分の変数分離型の微分方程式の表現ほうが,係数に相当する部分が時間とともに小さくなっていくことを直感的に理解することができると考えている.