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[SVC30-P01] 長時間型検知管を用いた簡易な火山ガスモニタリング
キーワード:火山ガス、火山活動活発化、モニタリング、噴気
近年、火山ガスの監視には、さまざまな電気化学式や分光式のセンサーが利用されるようになった。しかしこれらの方式は、初期費用に加え、火山ガスが原因の腐食による部品交換、校正が必要なため、ランニングコストが高額になる。2015年に噴火した箱根火山の中心である大涌谷の噴気口付近に、我々は2018年から長時間型検知管を設置し、火山活動の度合いと火山ガスの比率の関係を調べている。2024年末までに、ガス観測の総数は188に達した。ここでは、これらの観測結果について報告する。
拡散式(パッシブ型)検知管ともよばれる長時間型検知管は、ガラス管に検知剤を封入したガス検知管の一種である。吸引により管内にガスを導入する通常の検知管とは異なり、拡散を利用して測定を行う。すなわち、測定開始時にガラス管の一端を折って外気と検知剤を接触させると、対象ガスが拡散しながら検知剤と反応する。検知剤は反応により変色するので、変色層の厚さから対象ガスの時間平均濃度を測定できる。工場や作業現場で作業者の曝露評価に広く用いられ大量生産されているため、品質が安定しており、安価(1本数百円)であるのが長所である。我々が使用しているのはガステック社製のパッシブドジチューブという製品で、 測定するガスはSO2(No.5D)、HCl(No.14D)、H2S(No.4D)の3種である(括弧内は製品コード)。カタログ上の測定時間は1~10時間(H2Sは1~48時間)である。この3種類の検知管をビニールテープで束にして、①大気に直接さらす、②シリカゲルを敷いた開放容器に入れる、の2つの方法で、噴気孔近傍に約1時間留置することで、複数ガスの同時観測を行っている。結果は以下の通りである。
時系列変化:長時間型検知管で観測をしている大涌谷15-2噴気孔の噴気については、噴気に含まれる全ガス種を定量する従来のガス測定(Ozawa, 1968)も行っている。両手法による火山ガスの比率(SO2/H2S)の時系列変化は一致しており、火山の深部膨張が検出されるたび、SO2/H2S比の増加が観測された。このことから、長時間型検知管は、従来の方法と同様に火山ガスのモニタリングに有効であることがわかった。
同時測定の比較:7日以内に測定された両方法によるSO2/H2S値を比較した。2019年には、従来法によるSO2/H2S比は長時間型検知管によるものよりも系統的に高かったが、2023年には、従来法の値の方が顕著に小さくなった。このような差異は、両方法が測定した噴気孔の違いに起因する可能性がある。15-2噴気は、噴出孔の集合体であるが、従来法は15-2Eと呼ばれる小規模な噴気孔からのガスだけを採取しているのに対し、長時間型検知管は15-2Rと呼ばれる主要な噴気孔からのガスに大きく影響されていると考えられる。 2つの方法による観測値の差は、測定された噴気孔からのガス組成の違いを反映している可能性が高い。 その結果、長時間型検知管と従来法の値の間には正の相関が認められたものの、相関係数rは0.56にとどまり、相関は弱いものとなった。
シリカゲルの利点:噴気孔からの水蒸気は拡散管や検知剤の表面で凝縮しやすく、測定を妨げる。しかし、シリカゲルを入れた容器ではこのような凝縮は極めて起こりにくい。逆に、容器内に導入される水蒸気が不十分なため、観測される濃度が著しく低くなる場合がまれにある。また、火山ガスの濃度が低い場合、シリカゲルが火山ガスを吸収することで比率に影響が出る可能性がある。そのため、直接暴露との並行観測が推奨される。
拡散式(パッシブ型)検知管ともよばれる長時間型検知管は、ガラス管に検知剤を封入したガス検知管の一種である。吸引により管内にガスを導入する通常の検知管とは異なり、拡散を利用して測定を行う。すなわち、測定開始時にガラス管の一端を折って外気と検知剤を接触させると、対象ガスが拡散しながら検知剤と反応する。検知剤は反応により変色するので、変色層の厚さから対象ガスの時間平均濃度を測定できる。工場や作業現場で作業者の曝露評価に広く用いられ大量生産されているため、品質が安定しており、安価(1本数百円)であるのが長所である。我々が使用しているのはガステック社製のパッシブドジチューブという製品で、 測定するガスはSO2(No.5D)、HCl(No.14D)、H2S(No.4D)の3種である(括弧内は製品コード)。カタログ上の測定時間は1~10時間(H2Sは1~48時間)である。この3種類の検知管をビニールテープで束にして、①大気に直接さらす、②シリカゲルを敷いた開放容器に入れる、の2つの方法で、噴気孔近傍に約1時間留置することで、複数ガスの同時観測を行っている。結果は以下の通りである。
時系列変化:長時間型検知管で観測をしている大涌谷15-2噴気孔の噴気については、噴気に含まれる全ガス種を定量する従来のガス測定(Ozawa, 1968)も行っている。両手法による火山ガスの比率(SO2/H2S)の時系列変化は一致しており、火山の深部膨張が検出されるたび、SO2/H2S比の増加が観測された。このことから、長時間型検知管は、従来の方法と同様に火山ガスのモニタリングに有効であることがわかった。
同時測定の比較:7日以内に測定された両方法によるSO2/H2S値を比較した。2019年には、従来法によるSO2/H2S比は長時間型検知管によるものよりも系統的に高かったが、2023年には、従来法の値の方が顕著に小さくなった。このような差異は、両方法が測定した噴気孔の違いに起因する可能性がある。15-2噴気は、噴出孔の集合体であるが、従来法は15-2Eと呼ばれる小規模な噴気孔からのガスだけを採取しているのに対し、長時間型検知管は15-2Rと呼ばれる主要な噴気孔からのガスに大きく影響されていると考えられる。 2つの方法による観測値の差は、測定された噴気孔からのガス組成の違いを反映している可能性が高い。 その結果、長時間型検知管と従来法の値の間には正の相関が認められたものの、相関係数rは0.56にとどまり、相関は弱いものとなった。
シリカゲルの利点:噴気孔からの水蒸気は拡散管や検知剤の表面で凝縮しやすく、測定を妨げる。しかし、シリカゲルを入れた容器ではこのような凝縮は極めて起こりにくい。逆に、容器内に導入される水蒸気が不十分なため、観測される濃度が著しく低くなる場合がまれにある。また、火山ガスの濃度が低い場合、シリカゲルが火山ガスを吸収することで比率に影響が出る可能性がある。そのため、直接暴露との並行観測が推奨される。
