日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] International Volcanology

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:Conway Chris(Geological Survey of Japan, AIST)、松本 恵子(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、山田 大志(京都大学防災研究所 火山活動研究センター)、川口 允孝(東京大学地震研究所)


17:15 〜 19:15

[SVC30-P05] 支笏カルデラ及び後支笏カルデラ火山に関する岩石学的研究

*鈴木 捷太1栗谷 豪1中川 光弘1 (1.北海道大学)


キーワード:支笏カルデラ、マグマ混合、後カルデラ火山活動、苦鉄質包有物

支笏カルデラは約4万6000年前の大規模噴火(spfa-1及びspfl)により形成された(Uesawa et al., 2016; 中川ほか, 2018)。その後、カルデラの縁辺部には3つの後カルデラ火山が形成された。風不死岳は約2万6000年前までに(古川・中川, 2010; 石橋ほか, 1973)、恵庭岳は約2万年前までに(町田・新井, 2003)、樽前山は約9000年前(古川ほか, 2006)に活動を開始した。恵庭岳と風不死岳については、それぞれEn-a、n.En-b降下軽石を噴出した後に溶岩主体の活動に移った。一方樽前山の活動は軽石主体であり、Ta-d~Ta-aの 4つに区分される降下火砕物を噴出し、以降の歴史時代は溶岩ドーム活動に遷移した。本研究では、支笏カルデラ形成噴火後のマグマ系の再活性化過程解明の前段階として、後カルデラ火山の各噴出物について薄片観察と全岩化学組成分析を行った。樽前山の全岩化学組成データについては、平賀(2001修論)と森田(2023修論)も参照した。また恵庭岳と風不死岳の溶岩中には苦鉄質包有物が認められ、1試料ずつ全岩化学組成分析と薄片観察を行った。また、支笏カルデラ形成時の試料については中川ほか(2006)の全岩化学組成データを参照した。以上の結果を比較しマグマ系の関係について考察を行った。
樽前山の試料は玄武岩質~安山岩質であり(SiO2=51.6~62.6 wt.%)、斑晶鉱物は斜長石、単斜輝石、直方輝石、鉄チタン酸化物であり、苦鉄質な試料においてかんらん石が認められた。全岩化学組成について、ハーカー図ではTa-c1以前と以後で傾向が異なる(以後、Ta-c1以前を樽前前期、Ta-c2以降を樽前後期と呼ぶ)。樽前前期の噴出物は低カリウム系列を示し、ユニットごとに異なる直線または曲線トレンドを示す。樽前後期の噴出物は中カリウム系列を示し、全体として一定のトレンドを示すが、歴史時代以降その組成範囲は狭くなり苦鉄質側に遷移する。恵庭岳の試料は安山岩~デイサイト質であり(SiO2=54.8~63.6 wt.%)、斑晶鉱物は基本的に樽前山と同様だが、山頂付近の溶岩では角閃石が認められる。またEn-a以降の溶岩について活動期ごとの比較を行うと、活動の進行と共にかんらん石の量比が増加することが確認できた。風不死岳の試料は安山岩質~デイサイト質であり(SiO2=59.6~64.4 wt.%)、斑晶鉱物は斜長石、単斜輝石、直方輝石、鉄チタン酸化物であり、一部の試料には石英、角閃石も含まれ、苦鉄質な試料についてはかんらん石も含まれる。石英斑晶は融蝕構造を示し、一部の試料でかんらん石と石英の共存が認められた。また恵庭岳と風不死岳で見られる苦鉄質包有物は、斜長石、単斜輝石、直方輝石、かんらん石から構成され、斑状組織を示す。全岩化学組成は、恵庭岳の包有物がSiO2=54.7wt.%、風不死岳の包有物がSiO2=52.5wt.%である。ハーカー図では、恵庭岳の包有物が同火山のトレンドの苦鉄質側の延長に位置するが、風不死岳の包有物は同火山のトレンド上には位置せず樽前前期の試料の組成範囲にプロットされる。支笏カルデラ形成時の試料は、流紋岩質のAタイプと安山岩-デイサイト質のPタイプに分けられ(中川ほか, 2006)、Al2O3やMg2O等のハーカー図で異なる傾向を示す。上記の全ての試料でハーカー図上のトレンドはそれぞれ異なる。樽前前期や支笏カルデラ形成時の試料については、K2OやAl2O3を含む多くのハーカー図で明確に他と異なる組成範囲とトレンドを示す。恵庭岳では、SiO2量の増加に伴うBa、Zr、Vの増加率は他と比べて小さく、MgOの減少率は他と比べて大きい。また、風不死岳では、Y、CaO、P2O5で特徴的な下降トレンドが認められる。さらにBa/Rb-SiO2図において、いずれの火山の噴出物もBa/Rb比が一定にならず負の傾きを持つことが確認された。
上記の石英の融蝕構造やかんらん石と石英の共存に加え、樽前山の試料における非平衡な斑晶の共存(Nakagawa et al., 2011)や恵庭岳の溶岩における輝石の逆累帯構造(増田, 1990卒論)も踏まえると、後支笏カルデラ火山ではいずれもマグマ混合が起こっていたと考えられる。さらに、それぞれSiO2量の遷移とかんらん石の増加から、少なくとも樽前山と恵庭岳においては活動の進行と共に苦鉄質マグマの混合が進行したことが推察される。また、風不死岳の苦鉄質包有物の組成範囲が樽前前期と重なること、両火山が地理的に近いことから、風不死岳と樽前前期の活動は同源の苦鉄質マグマを起源としていた可能性が高い。恵庭岳の苦鉄質包有物については、同火山のトレンドの苦鉄質側の延長に位置することから恵庭岳のマグマ混合における苦鉄質端成分と考えられる。そして、3つの後カルデラ火山とカルデラ形成時の噴出物の特徴や傾向が相互に異なることから、マグマ系がそれぞれ異なることが示唆される。さらに、いずれの火山においてもSiO2量の変化に対して液相濃集元素比が一定ではないことから親子関係の無いマグマが混合に関与したと考えられる。今後は各火山の珪長質端成分マグマの起源や後カルデラ活動における苦鉄質マグマの変遷について検討する必要がある。