日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山防災の基礎と応用

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、森田 雅明(東京大学地震研究所)、座長:及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、森田 雅明(東京大学地震研究所)

10:00 〜 10:15

[SVC31-05] ドローンポートを用いた草津白根火山の監視ー草津町役場からの飛行試験ー

*寺田 暁彦1、田村 正義2 (1.東京科学大学総合研究院多元レジリエンス研究センター火山・地震研究部門、2.株式会社NSi真岡)

キーワード:ドローンポート、火山監視、減災、草津白根火山、DOCK2

1.はじめに
火山噴火災害の現場においては,発生する事象の特徴に応じた防災対応が求められる.そのためには,各機関・担当者間において,現場で何が起きているのかに関する共通認識を迅速に得ることが重要である(Fearnley and Beaven, 2018 ; Andreastuti et al., 2023; Witham et al., 2024).しかし,火山現象の機序は複雑なため,それは必ずしも容易ではない.
火山で何が起きたのかを認識するための手段として,離発着や飛行,充電などの一連の動作を全て自動化したドローンが考えられる(例えば,Mersha et al., 2020 ; Malyuta et al., 2020).すなわち,あらかじめ設定した時刻に離陸し,設定された経路を飛行しながら撮影等の動作を行ったうえ,着陸後には機体電池への充電を自動的に行う.あるいは,インターネット回線を通じたドローン操縦を遠隔地から実施できる.機体に装着されたカメラが撮影した映像は,任意のパソコン等にリアルタイム表示できる.
このようなシステムにおいては,必ずしも離着陸場所付近に操縦者が出向く必要がないため,火山の活動状況に応じて,昼夜を問わず迅速に飛行調査を開始できる.さらに,災害対策本部等の遠隔地において,操縦者と防災担当者が同じ空撮映像を見ながら,観察したい場所を飛行させることができる.火山学などの専門家が同席すれば,発生した事象をより迅速かつ的確に把握できるだろう.本発表では,草津白根山の山頂付近のドローンを,約6 km 離れた草津町役場にて草津町長の立ち合いのもとで運用した経過を紹介する.

2.方法
本飛行試験ではDJI社DOCK2を使用した.ドローン機体を除く総重量は約 34 kgで,2名程度で設置できる.可視および赤外線カメラを搭載した機体は,通常,箱型の収納ケース(ドローンポート)に収められている.離陸・着陸時に収納ケースの天板が自動開閉することで,現場で人の手を介することなく離陸,着陸,および収納できる.機体は収納後に自動的に充電されるほか,機体に保存された可視および赤外線画像がDJI社所定のクラウドツールにアップロードされる.
本試験では,レベル3飛行に該当する目視外飛行の許可・承認申請を,国土交通省航空局に対して行った.目視外としたのは,遠隔地に配置された操縦者自身の目で機体を目視できないためである.レベル3飛行においては立入管理区域内へ第三者が立入りを防ぐための措置が必要である.今回の飛行領域は,草津町が災害対策基本法第63条に基づき設定した警戒区域内にあることを考慮した.また,ドローンが飛行中であることを示す看板を設置したうえ,周辺に監視員を配置した.さらに,飛行区域を所管する林野庁吾妻森林管理署に対してドローンに関する入林届を提出した.飛行区域には特別保護地区が含まれるため,環境省から鳥獣保護に関する指導を受けた.草津町が呼びかけているドローン飛行自粛の要請については,同町から了解を得た.

3.飛行試験
飛行許可を受けた操縦者を,離発着場から東へ約 6 km,標高差約 900 m の草津町役場庁舎3階応接室に配置した.同室内に設置したデスクトップ型パソコンをインターネット回線に接続し,所定のクラウドサーバを通じてドックとの通信を確立した.また,応接室内の大型液晶スクリーンにパソコン表示画面を出力し,同役場関係職員が閲覧した.
飛行実験は2024年6月26日に実施した.まず,ドローンは事前にプログラムされた経路を自律飛行した.草津町長は,ドローンから送信されてくる可視映像と赤外線映像を自ら切り替え,火山専門家の解説を受けながら火口およびその周辺を観察した.離陸から約9分経過後,機体動作を手動飛行へ切り替えた.操縦者は,草津町長の指示に基づき飛行方向やカメラ視線方向の変更などの機体操縦を行い,草津町長は,操縦に関わらないカメラの光学ズーム操作と写真撮影を行い,火口周辺を任意に観察できることを確認した.

4.議論
本飛行試験では,町長が必要と判断したときは,操縦担当者に具体的な指示を出しながら火口周辺を自ら観察することに特段の障害のないことが確認された.ドローンポートを使用することで,現在進行している火山現象について,町長と専門家がより迅速に共通認識を得ることが期待される.また,火山専門家が行う火山観測飛行についても,その目的や意図を共有することで,災害現場における火山観測をより円滑なものとするだろう.また,現場の状況確認を担当する職員の作業性・安全性が向上すると思われる.
その一方で,本システムを火山災害現場で運用することで,従来とは異なる情報共有・伝達の流れが実現する可能性がある.そのような体制を有効に機能させるには,平時に当該地域における運用試験を行い,災害前から意思疎通を図っておくことが重要と考えられる.