17:15 〜 19:15
[SVC32-P30] 世界各地の火山における噴火前傾斜変動の網羅的検知と時間関数による分類
キーワード:傾斜変動、火山噴火
1. はじめに
火山噴火に先行する傾斜変動は多くの火山で共通に観測され、噴火直前過程を知る上で重要なシグナルと考えられる。先行研究の多くは個別事例や個別火山を対象にしており、噴火前傾斜変動の一般的な特徴はあまり解明されていない。Maeda (2023, JVGR)は日時が分単位で既知かつ連続波形データが公開されている日本国内の火山噴火について先行する傾斜変動を網羅的に調べ、3104/7890(39%)の噴火、3970/22958(17%)の波形において噴火前傾斜変動を見出した。本発表では海外の噴火事例について同様の手順で傾斜変動を網羅的に調査し、検知された国内外の傾斜変動を時間関数の相似性に基づき分類して特徴把握を進めたのでそれについて報告する。
2. 海外における噴火前傾斜変動の検知
International Federation of Digital Seismograph Networks (FDSN)において名前にvolcanoを含む地震観測網を検索し、その一覧の中でEarthScope Data Centerから波形データが提供されている48観測網(2024/5/31時点)を用いた。各観測網の観測点情報を2024/5/31時点でのGlobal Volcanism Program (GVP)の完新世火山リストと照合し、最終噴火年以前において火山から水平距離10 km以内の広帯域地震計により観測が行われている28火山を研究対象とした。各火山の噴火日時を各国のモニタリング機関のWEBサイトと査読付き国際誌で調査した。対象期間は各火山における広帯域地震計による観測開始日から2023年末までとした。この調査の結果、16火山61噴火事例について噴火日時情報を分単位まで得ることができた。各噴火に先行する傾斜変動の有無と開始・終了時刻をMaeda (2023)と同様の手法で調査したところ、8火山12噴火16波形について先行する傾斜変動が検知された。傾斜変動の先行割合は12/61噴火(20%)、16/173波形(9%)となった。
3. 時間関数による分類
Maeda (2023)で検知した国内火山の噴火前傾斜変動3970波形と本研究で検知した海外火山の16波形を合わせ、波形の類似度により以下の手順でグルーピングを行った。まず検知された傾斜変動の継続時間と振幅が[0,1]となるように規格化した。次に2つの波形si(t)、sj(t)間のミスフィット値Mij={2∫01[si(t)-sj(t)]2dt/[∫01si(t)2dt+∫01sj(t)2dt]}1/2を全ての波形ペアについて計算した。Mijが閾値を下回る波形ペア数が最多となる波形をグループ1のマスター波形とし、この波形とのMijが閾値を下回る波形をグループ1に分類した。残りの波形に同様の手順を適用してグループ2を定義し、以下同様にグループ3、4、…を定義した。Mijの閾値を0.01から0.30まで0.01刻みで動かして上記の方法でグルーピングを行い、波形数2以上の各グループ内で平均した波形と個々の波形との残差に基づきAICを計算した結果、最適な閾値が0.10と求まった。このとき波形数4以上のグループ数は73個であった(Fig. 1)。
各グループ内で平均した波形を目視で確認したところ、傾斜変動が時間とともに加速するタイプ(加速型)、減速するタイプ(減速型)に加え、途中で加速から減速に転じるタイプ(加速→減速型)やその逆タイプ(減速→加速型)のものも多数観察された。そこで、波形を3つの区間に分割してそれぞれ直線フィッティングを行い、その傾きの変化に基づく上記の4類型への分類を試みた。試行錯誤の結果、各区間に全体の20%以上の時間長を確保し、傾きの変化が最大になる分割点を採択することで目視の特徴と合う分類結果が得られた(Fig. 2)。各グループおよび4類型それぞれに占める火山別の波形数を調べたところ、加速型は桜島に多く、減速型は総数が少ないが諏訪之瀬島に比較的多いという特徴が見出された(Fig. 3)。御嶽山2014年噴火と霧島硫黄山2018年噴火の直前の傾斜変動が同一グループに分類されたが、このグループの波形数は4個と少なく、他のグループの波形とは特徴を大きく異にすることも明らかとなった(Fig. 1, 2)。今後は波形の特徴を説明する数値モデルの作成を試みる予定である。
4. 謝辞
EarthScope Data Centerから提供されている連続波形データを使用した。JSPS科研費JP21H05203の助成を受けた。
火山噴火に先行する傾斜変動は多くの火山で共通に観測され、噴火直前過程を知る上で重要なシグナルと考えられる。先行研究の多くは個別事例や個別火山を対象にしており、噴火前傾斜変動の一般的な特徴はあまり解明されていない。Maeda (2023, JVGR)は日時が分単位で既知かつ連続波形データが公開されている日本国内の火山噴火について先行する傾斜変動を網羅的に調べ、3104/7890(39%)の噴火、3970/22958(17%)の波形において噴火前傾斜変動を見出した。本発表では海外の噴火事例について同様の手順で傾斜変動を網羅的に調査し、検知された国内外の傾斜変動を時間関数の相似性に基づき分類して特徴把握を進めたのでそれについて報告する。
2. 海外における噴火前傾斜変動の検知
International Federation of Digital Seismograph Networks (FDSN)において名前にvolcanoを含む地震観測網を検索し、その一覧の中でEarthScope Data Centerから波形データが提供されている48観測網(2024/5/31時点)を用いた。各観測網の観測点情報を2024/5/31時点でのGlobal Volcanism Program (GVP)の完新世火山リストと照合し、最終噴火年以前において火山から水平距離10 km以内の広帯域地震計により観測が行われている28火山を研究対象とした。各火山の噴火日時を各国のモニタリング機関のWEBサイトと査読付き国際誌で調査した。対象期間は各火山における広帯域地震計による観測開始日から2023年末までとした。この調査の結果、16火山61噴火事例について噴火日時情報を分単位まで得ることができた。各噴火に先行する傾斜変動の有無と開始・終了時刻をMaeda (2023)と同様の手法で調査したところ、8火山12噴火16波形について先行する傾斜変動が検知された。傾斜変動の先行割合は12/61噴火(20%)、16/173波形(9%)となった。
3. 時間関数による分類
Maeda (2023)で検知した国内火山の噴火前傾斜変動3970波形と本研究で検知した海外火山の16波形を合わせ、波形の類似度により以下の手順でグルーピングを行った。まず検知された傾斜変動の継続時間と振幅が[0,1]となるように規格化した。次に2つの波形si(t)、sj(t)間のミスフィット値Mij={2∫01[si(t)-sj(t)]2dt/[∫01si(t)2dt+∫01sj(t)2dt]}1/2を全ての波形ペアについて計算した。Mijが閾値を下回る波形ペア数が最多となる波形をグループ1のマスター波形とし、この波形とのMijが閾値を下回る波形をグループ1に分類した。残りの波形に同様の手順を適用してグループ2を定義し、以下同様にグループ3、4、…を定義した。Mijの閾値を0.01から0.30まで0.01刻みで動かして上記の方法でグルーピングを行い、波形数2以上の各グループ内で平均した波形と個々の波形との残差に基づきAICを計算した結果、最適な閾値が0.10と求まった。このとき波形数4以上のグループ数は73個であった(Fig. 1)。
各グループ内で平均した波形を目視で確認したところ、傾斜変動が時間とともに加速するタイプ(加速型)、減速するタイプ(減速型)に加え、途中で加速から減速に転じるタイプ(加速→減速型)やその逆タイプ(減速→加速型)のものも多数観察された。そこで、波形を3つの区間に分割してそれぞれ直線フィッティングを行い、その傾きの変化に基づく上記の4類型への分類を試みた。試行錯誤の結果、各区間に全体の20%以上の時間長を確保し、傾きの変化が最大になる分割点を採択することで目視の特徴と合う分類結果が得られた(Fig. 2)。各グループおよび4類型それぞれに占める火山別の波形数を調べたところ、加速型は桜島に多く、減速型は総数が少ないが諏訪之瀬島に比較的多いという特徴が見出された(Fig. 3)。御嶽山2014年噴火と霧島硫黄山2018年噴火の直前の傾斜変動が同一グループに分類されたが、このグループの波形数は4個と少なく、他のグループの波形とは特徴を大きく異にすることも明らかとなった(Fig. 1, 2)。今後は波形の特徴を説明する数値モデルの作成を試みる予定である。
4. 謝辞
EarthScope Data Centerから提供されている連続波形データを使用した。JSPS科研費JP21H05203の助成を受けた。