JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG24] [EJ] 惑星大気圏・電磁圏

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[PCG24-P02] 重イオン放出弱磁場小型天体のプラズマ環境に関する粒子シミュレーション

*臼井 英之1沖 知起1寺田 直樹2三宅 洋平1加藤 雄人2八木 学3 (1.神戸大学 大学院 システム情報学研究科計算科学専攻、2.東北大学 大学院 理学研究科地球物理学専攻、3.理科学研究所 計算科学研究機構)

キーワード:プラズマ粒子シミュレーション、弱磁場惑星、水星磁気圏、外圏

本研究の目的は、外圏(exosphere)起源の重イオンを放出する、弱い固有磁場を持つ小型天体と太陽風との相互作用を3次元電磁粒子シミュレーションにより再現し、小型天体のプラズマ環境を理解することである。
日欧共同で進められているBepiColombo水星探査ミッションにより水星磁気圏における様々なプラズマ現象の観測が期待されている。これまでの観測から、水星の固有磁場を形成する磁気モーメントは地球のものよりも約2000倍程度小さく、地球磁気圏の約1/20のサイズの小型磁気圏が形成されると予想されている。また水星には電離圏が存在せず、希薄な外圏大気が存在する。明確な電離圏がない磁気圏の電流構造において外圏起源のイオン(Na+など)がどのような役割を果たすかは興味深い。また、水星本体が磁気圏の中に占める割合が大きいことも特徴の一つである。このような特異な水星磁気圏の巨視的構造については、磁気流体力学(MHD)シミュレーションを用いたモデル化も試みられている。しかし、水星表面近傍から放出される重イオンや光電子と太陽風・磁気圏との運動論的な相互作用の理解は進んでいない。特に昼間側やカスプにおいて、イオンラーマ半径と同程度のスケール長でしかないプラズマ構造が予想されている。そこで、本研究では、全粒子シミュレーションを用いて、重イオン放出弱磁場小型天体のプラズマ環境を運動論的観点から再現する。
モデルでは、弱い磁気ダイポールを持つ小型球体をプラズマ流の中に置き、その表面近傍からNa+に相当する重イオンと光電子を同量放出し続ける。昼間側において、ダイポール中心から磁気圧と太陽風動圧が釣り合う点までの距離を代表長Lとすると、今回のモデルでは、Lに対するL地点でのイオンラーマ半径の比が1から1/10程度となるような磁気ダイポールを球体に与える。水星環境ではイオンラーマ半径はLに対して1/100程度であるが、あえてプラズマの運動論的効果を強調させるためにラーマ半径を大きくしたモデルを採用する。パラメータとしては、Lに対する球体半径rの比、放出重イオンと光電子の密度、速度がある。
これまでに実施した準備的なシミュレーション結果により、小型磁気圏の形成、朝方夕方の磁気圏構造の非対称性、重イオンと光電子放出起源の赤道面での天体近傍環状電流、重イオンと光電子の電荷分離による地表面近くでの強い電界形成などの基本的な物理は確認できた。これらの基本物理現象が上に述べたパラメータに対してどのように依存しているのかを解析する。