JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] [EJ] 海洋底地球科学

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SCG71-P16] 自己浮上式海底圧力計による海底上下変動長期観測にむけて

*日野 亮太1鈴木 秀市1佐藤 真樹子1太田 雄策1伊藤 喜宏2梶川 宏明3小畠 時彦3 (1.東北大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所、3.産業技術総合研究所計量標準総合センター)

キーワード:海底測地学、圧力観測、長期変動

海底における精密圧力観測は海域における地殻上下変動を検知する有効な手段である.小型で高精度かつ低消費電力のセンサーを使用できるため,海底設置型の観測システムの構築が容易で,1〜2年程度の長期観測が可能な装置が実用化されている.また,津波検知のために整備されつつある海底圧力観測網のデータも,海底地殻変動検知のために活用できる可能性が高い.海底圧力観測によってテクトニックな海底上下変動が捉えられたという報告例が増えつつあるが,いずれも,1ヶ月より短い時定数をもつ過渡的なイベントで,数ヶ月より長い時定数をもつ変動の検知は難しい.海底には多くのプレート境界が存在し,そこでの長期的な海底地殻変動を記録することは,海陸プレート間相互作用やプレート形成発達過程の理解に不可欠である.海底圧力観測による長期的地殻変動の検知が困難なのは,海底圧力観測の記録に地殻変動以外の要因による長期的変動が多く含まれることによる.圧力変動記録から真のテクトニックな上下変動に起因する成分を抽出するためには,観測装置の経時不安定性と海底という観測環境に起因する長期変動の定量的な評価が不可欠である.我々は,宮城県沖を中心とした日本海溝周辺海域で高精度水晶発振子をセンサーとして用いた自己浮上式海底圧力計による繰り返し観測を実施してきた.得られた観測データのうち,同一のセンサーを用いた繰り返し観測で得られたものに着目すると,海底への設置後の長期的な圧力変動のパターンには再現性がしばしば認められる.こうした海底観測で用いているのと同種のセンサーを長期間にわたって高圧下においた場合,加圧開始後から出力される圧力計測値が徐々に時間変化することが,室内実験から報告されている.その時間変化は海底圧力観測の時系列に見られる長期変動に近い時定数をもち,複数回の加圧で変動パターンに再現性がある点でも共通性がある.海底観測データと室内長期加圧実験で見られる圧力センサーの挙動との類似性は,海底圧力データに現れる長期変動に圧力センサー固有の挙動が反映されていることを示唆する.そうした挙動を室内実験から定量的に把握することができれば,その知見を用いて観測データを補正することによって,テクトニックな変動の検知能力を向上できるかもしれない.こうした期待のもと,海底と実験室内環境とで同一のセンサーの加圧後挙動が再現するかを調べるために,実際の海底観測に用いたセンサーを用いた長期加圧室内実験が継続中である.本発表では,こうした加圧実験の結果のほか,海底観測でセンサーの発振周波数を計測する基準クロックの長期安定性の評価実験の結果などをもとに,海底圧力観測データに現れる長期変動の原因を考察する.