JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] [JJ] 地球掘削科学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、道林 克禎(静岡大学理学部地球科学科)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)

15:30 〜 15:45

[MIS22-01] 断層破砕帯の孔内物理検層による物理特性-跡津川断層の事例研究

*小村 健太朗1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:物理検層、断層破砕帯、跡津川断層

断層帯を直接掘り抜く掘削研究は,断層帯の応力・強度・構造の時空間的変化の過程を物理・化学・地質学的に解明するために重要は研究手段である.これまで,断層掘削研究の例として,中部から西南日本の活断層である,野島断層,根尾谷断層における断層掘削で実施された孔内物理検層を比較し,断層帯の物理特性の特徴を調べた.本研究では,さらに跡津川断層の孔内物理検層結果について報告する.
跡津川断層(1858安政飛越地震,M7.0で活動と推定)では,推定される地表地震断層近傍から深度350mまで,オールコアリングを行った.孔内物理検層として自然電位(SP, mV),電気比抵抗(SN, ohm-m, LN, ohm-m),P波速度(Vp,km/sec),密度(DL, g/cm3),中性子間隙率(NL, porosity, %),自然γ線(GR, API)のが実施された.見かけ比抵抗が100~600ohm m,密度が2.0~2.5g/cc,P波速度が3~4km/sec,中性子間隙率が20~40%,となり,これまでの断層掘削で認められた断層破砕帯の物性値と整合的だった.また,孔径を実測するキャリパー検層では,ほぼ全域で孔壁が崩壊して孔径が拡大(大きいところでは2倍以上)しており,孔壁の顕著な強度の低下を示していた.
採取コアの観察では,ほぼ全深度で破砕・変質を受け,断層粘土を挟んだ顕著な剪断面も多く存在した.対応する孔内物理検層結果は,他の断層破砕帯で示された物性値と整合的であることから,掘削浅部から孔底にいたるまで断層破砕帯の中を掘削していったと考えられる.
野島断層,根尾谷断層掘削の結果もあわせてみると,断層によらず,孔内物理検層では,断層帯の物性が岩相に依存するだけでなく,破砕帯部と母岩部で定性的に大きく異なることが明瞭である.しかし,破砕帯の検層結果は断層によって特徴が異なり,その要因は,明らかではない.過去の地震活動に伴い,破砕帯が形成される物理化学反応履歴が検層結果に反映していることが予想されるため,さらに断層ごとの比較研究が重要である.