JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] [JJ] 地球掘削科学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、道林 克禎(静岡大学理学部地球科学科)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)

16:30 〜 16:45

[MIS22-05] 掘削試料に見られる斑れい岩のP波速度:海洋下部地殻最下部における速度の低下に関する一考察

*阿部 なつ江1野坂 俊夫2森下 知晃3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター、2.岡山大学理学部、3.金沢大学理学部)

キーワード:海洋下部地殻、斑れい岩、国際深海科学掘削計画、P波速度、地球深部探査船「ちきゅう」、Oman Chikyu Project

海洋地殻の下部を構成する斑れい岩試料は、大西洋、インド洋、太平洋において複数回掘削され、採取されている。モード組成や変質程度に多様な変化が見られるこれらのコア試料は、その岩石物性(特にP波速度)にも大きな違いが見られる。インド洋(Atlantis Bank: ODP Legs 118, 176 & 179, and IODP Exp. 360)や太平洋 (Hess Deep: ODP 147, IODP 345) および大西洋(Atlantis Massif: IODP exp. 304 & 305, 340T)では、海底下最大1500mまでの海洋地殻掘削が行われ、60~80%という高い回収率で海洋地殻物質が採取されている。試料は広義の斑れい岩類で、狭義の斑れい岩(Cpx+Pl)から非常にかんらん石(以下Ol)に富む(>70 vol%)トロクトライトまで多様なモード組成を示し、平均的なOlモードは10%以上になる。またそのOlは、他の鉱物と比べて低温変質(蛇紋石化)率が高い傾向がある。
 一方、船上におけるコア試料(2 cm角立方体)の弾性波速度計測値は、大西洋の試料は5.0~6.7 km/sを示しており、斑れい岩の平均的な弾性波速度として用いられる6.0~7.0 km/sや、インド洋において掘削された斑れい岩コア試料(Hole 735B; Dick et al., 1999)のそれ(6.0~7.3 km/s)よりも平均で約1 km/s遅い。船上計測・記載データを詳細に解析した結果、同じ斑れい岩でも、そのOlモード量(及び蛇紋岩石化率)が、弾性波速度の多様性に大きく貢献していることが分かった。
 かんらん石を多く含む斑れい岩(トロクトライトなど)は、海洋下部地殻の最下部、モホ面に近い部分を構成していると考えられている。したがって、この観察結果から、十分に加水作用が進んだ(変質が進行した)海洋下部地殻は、速度低下が観測される可能性を示唆している。平成29年度に地球深部探査船「ちきゅう」船上で実施されるICDPオマーン陸上掘削コアの記載・計測において、オフィオライトの下部地殻相当部分から得られる連続した掘削コアを詳細に分析することで、物性データと記載岩石学的・地球化学的データとを照合し、この海洋下部地殻におけるP波速度ほか物性変化の詳細が明らかになることが期待される。