JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM21] [JJ] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、中村 匡(福井県立大学)、座長:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、座長:成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)

16:15 〜 16:30

[PEM21-04] 経路積分を使った相対論的拡散の計算

*中村 匡1 (1.福井県立大学)

キーワード:相対論的拡散、経路積分、固有時間

時間に関して一回微分の拡散方程式の解は,速度が無限大の成分をもっていることが知られている。たとえば,一番単純なガウス型の解になるような方程式の場合,t = 0 での初期条件がδ関数でも,t > 0 では無限遠でゼロにならない成分がでてくる。非相対論の計算では,多くの場合これは無視できるくらい小さい値なので無視してよいが,相対論では因果律をやぶることになるので問題になってくる。例えば,このタイプの拡散方程式の解には,物理的にはありえない増大するモードがあらわれることが報告されている。

速度無限大の成分が必要なのは,マルコフ的酔歩問題ではNステップの移動距離が一ステップの距離の√Nのオーダーでしか増えないのが理由である。この状況で有限時間で有限の移動距離を確保するためには,一ステップで無限大移動しなければならないことになる。したがって,マルコフ的(時間に対して一回微分)な方程式では因果律をやぶることは不可避である。

この問題を克服するため,Israel & Stewart (1970) は時間に関して二階微分の項を含む理論を提唱した。この路線はその後因果的熱力学(Causal Thermodynamics)と呼ばれ,21世紀に入ってからも多くの論文が書かれている。しかしながら,因果的熱力学での2次以上の時間微分の項は物理的な散逸過程の考察から得られたものではなく,無限大の速度をおさえるために技術的に導入されたものであるため,得られた解が物理過程を正しく記述している保証はない。たとえば,Israel & Stewart の理論から熱伝導方程式を導出すると,いわゆる電信型の方程式になり,伝搬速度が大きくなると波動方程式に漸近して速度の上限を保証するが,波動方程式が散逸をあらわしているとは言えない。

この困難をの解決するため,本研究では固有時を使って粒子の拡散を計算する。たとえば,時空間 (x,t) の二次元平面内を固有時τに沿って拡散する粒子の分布 f(x,t;τ)を考えよう。この二次元時空間内での拡散は,t 方向には前進しかしないので,普通の拡散方程式の形にはかけない。そこで,経路積分の表現を利用し,一ステップごとに energy-shell の条件をδ関数の形ではさむことによって時間発展を追った。量子力学の経路積分では,δ関数による制限がゴースト粒子を生むなど難しい問題があるが,拡散方程式の場合は簡単な表現にまとめられることがわかった。