JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] [JJ] 強震動・地震災害

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:津野 靖士(鉄道総合技術研究所)、座長:山田 真澄(京都大学防災研究所)、座長:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

10:15 〜 10:30

[SSS15-18] 微動アレイ探査による富山県内の堆積平野域の速度構造の推定

*浅野 公之1吉田 邦一2宮腰 研2大堀 道広3岩田 知孝1 (1.京都大学防災研究所、2.一般財団法人地域地盤環境研究所、3.福井大学附属国際原子力工学研究所)

キーワード:富山平野、速度構造モデル、微動アレイ探査

富山県の平野域は、黒部川、片貝川、早月川、常願寺川、神通川、庄川など飛騨山脈から富山湾に流れ込む大河川に沿った扇状地および海岸平野によって構成され、東から富山平野、射水平野、砺波平野として区分される(藤井, 1992)。これらの堆積平野の地質構成の特徴として、沖積層と更新統の下に、日本海形成時およびそれ以降の新第三系が数km以上の厚さで堆積していることが挙げられる(富山県, 1992)。基盤岩は飛騨変成岩や船津花崗岩からなる。また、呉羽山断層帯、砺波平野断層帯、魚津断層帯といった主要活断層帯が平野と丘陵の境界付近などに分布するほか、富山トラフ周辺にも複数の活断層の存在が報告されている(石山・他, 2014)。陸域や海域の活断層で発生する地震の強震動予測には信頼できる地下速度構造モデルが不可欠であるが、富山県の堆積平野では地震基盤までの堆積層のS波速度構造に関する調査はこれまでほとんど行われていなかった。このため、我々は富山県内の堆積平野を対象に微動アレイ探査を新たに実施し、堆積層の速度構造を推定した。
現地での微動アレイ観測は、2014年10月、11月及び2015年11月の3次に分けて、計15地点で実施した(地図参照)。観測サイトは既存の強震・震度観測点の近傍に選定した。下新川郡入善町1地点(NYZ)、魚津市1地点(UOZ)、滑川市1地点(NMK)、中新川郡立山町1地点(TTY)、富山市4地点(TYB、TYF、YTO、OYM)、射水市3地点(SIM、DIM、SNM)、砺波市1地点(TNM)、南砺市2地点(FKM、NNT)、小矢部市1地点(OYB)である。各地点では、沖積層から地震基盤までの速度構造情報を得るため、半径20 m程度の小アレイから半径1.5 km程度の大アレイまで、アレイ半径の異なる複数式のアレイ観測を実施した(具体的なアレイ半径やアレイ展開数は地点によって異なる)。各観測はLE-3D/5s地震計7台による二重正三角形アレイにより行った。観測微動記録に空間自己相関法(SPAC法)を適用して解析し、位相速度の分散曲線を得た。各観測点では、約0.2 Hzから約2~5 Hzの範囲で、位相速度の分散曲線が得られた。NYZ、UOZ、TTY、TYF、YTO、OYM、TNM、FKM、NNT、OYBでは、2 Hz付近以上でも位相速度が0.6~1.0 km/sと比較的速い位相速度が得られており、これらの地点は扇状地に位置しており、工学的基盤相当の地層が露頭していることが示唆された。反対に、NMK、TYB、SIM、DIM、SNMでは、比較的遅めの位相速度(約0.2~0.5 km/s)が得られた。
得られた分散曲線の連続性、分散性から、Rayleigh波基本モードの位相速度に対応すると仮定し、遺伝的アルゴリズムを用いた逆解析手法(Yamanaka and Ishida, 1998)によってS波速度構造の推定を行った。既往のJ-SHIS V2モデル(藤原・他, 2012)を基礎にしたモデル改訂に資することを目的としたため、複数の層からなる堆積層と地震基盤からなる水平成層構造を仮定し、各層のS波速度はJ-SHISで用いられている値に固定し、観測位相速度にフィットするように堆積層各層の層厚を探索した。高周波数域での観測位相速度が0.6 km/sを下回る観測点では、表層を追加し表層のS波速度と層厚を合わせて探索した。また、いくつかの観測点では観測と理論位相速度のフィッティングの状況を判断し、Vs 0.6 km/sと1.1 km/sの層の間にVs 0.75 km/sの層を追加した。これにより、各観測点において、観測位相速度の特徴を概ね説明する水平成層速度構造モデルが得られた。富山平野や砺波平野の主要部分では、地震基盤の深さが5~6 kmにも及ぶことがわかった。砺波平野については、反射・屈折法地震探査によるかほく-砺波測線で推定されている先新第三系の深さ(Ishiyama et al., 2016)とも調和的である。
今後、本研究で得られた成果や、日本海プロジェクトで実施されている人工地震探査の成果などを統合し、対象地域の三次元速度構造モデルの改良を進めていく予定である。
謝辞:本研究は文部科学省科学技術試験研究委託事業「日本海地震・津波調査プロジェクト」(代表機関:東京大学地震研究所)の一部として実施しました。現地での微動観測は、有限会社ジオアナリシス研究所、一般財団法人地域地盤環境研究所、京都大学防災研究所及び関係自治体の皆様のご協力の下に実施しました。記して感謝いたします。