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[SSS16-09] 反射法地震探査・地質学的データに基づく関東地域の震源断層モデル
関東平野周辺域には、深谷断層・綾瀬川断層といった第四紀後期に活動を繰り返してきた断層が分布する。また、このほかにも関東平野を含む南関東地域の活構造については、上総層群・下総層群および中期更新世以降の海成・河成段丘面の分布・編年に基づいた数多くの研究がある。本研究では、近年関東平野で行われてきた大深度地殻構造探査と周辺地域の新生代層序との対比の結果に基づき、関東平野周辺域に分布する伏在活断層・活構造の深部形状の推定を行い、震源断層モデルを再検討した。大大特・北関東測線が延びる青梅から春日部にかけての区間では、地下に半地溝構造(ハーフ・グラーベン)が複数認められる。ハーフグラーベンを覆う上総層群と下総層群は緩い背斜を形成していることから、第四紀中期以降に逆断層として繰り返し活動したと考えられる。2015年に富士見市で実施した反射法地震探査によって、北関東測線で見出された反転する半地溝と構造的に類似した、反転する半地溝構造が見出された。これらのデータから、川越市から富士見市にかけてほぼ南北に伸びる、西傾斜の伏在逆断層の存在が推定される。反射断面と川島コアとの対比によれば、この伏在逆断層の上盤側で上総層群および下総層群が累積的に変形している。同様に、北関東測線中央部では上総層群相当層が参加する西向きの撓曲構造が認められ、この地下には西傾斜の伏在逆断層が伏在すると推定される。これは再解析した東京都(2003)測線中央部に存在する半地溝構造に連続する可能性がある。ボーリング層序との対比によれば、半地溝構造を形成した西傾斜の逆断層は、狭山丘陵の形成に寄与した可能性がある。加えて、これらの伏在断層に沿っては、後期更新世の段丘面に東側低下の撓曲崖地形が断続的に分布しており、これらは伏在断層の第四紀後期の変位を示す可能性がある。以上の結果に基づき、関東地域の震源断層モデルを作成した。本研究で新たに推定した断層は、限られた数の反射断面と、断片的な変位の可能性がある地形に基づいて推定しており、形状や分布については不確実性が残る。一方で、これらの構造は首都圏の近傍に位置し、地震防災上の重要性は極めて高いと言える。さらに、低い活動度は過去の地震活動に関する地質学的資料を得ることの困難さを意味している。これらの伏在断層の性格を明らかにするためは、さらに多くの地下構造断面を取得するとともに、変位地形についてもより詳細な検討を進めることが重要である。