JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT60] [JJ] ルミネッセンス・ESR測定の年代学・地球惑星科学への貢献

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 202 (国際会議場 2F)

コンビーナ:伊藤 一充(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、豊田 新(岡山理科大学理学部応用物理学科)、近藤 玲介(皇學館大学教育開発センター)、杉崎 彩子(産業技術総合研究所)、座長:伊藤 一充(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、座長:杉崎 彩子(産業技術総合研究所)

16:15 〜 16:30

[STT60-02] 海浜カットアンドフィル堆積物の高分解能OSL年代測定:オーストラリア南西部Bengello Beachにおける海浜侵食履歴の評価

*田村 亨1Oliver Thomas2Woodroffe Colin2Cunningham Alastair2 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.ウロンゴン大学地球環境学教室)

キーワード:coast, chronology, sedimentology, Quaternary science, luminscence dating

海浜や砂丘地などの露光しやすい環境では,石英の光ルミネッセンス(OSL)により,過去数十年程度の若い堆積物の年代を決定することができる.ごく稀に大規模なストームが発生すると海浜の砂が侵食されて海岸線が大きく陸側後退することがあり,そうした侵食の規模や頻度を理解することは海岸の保全に重要である.しかし,現在の海浜で行われている観測の期間は短く,そうした低頻度のイベントを経験的にとらえることは容易ではない.海浜堆積物は,過去の長期間に渡る堆積と侵食との繰り返しにより形成されるものであるが,それをもし連続的に年代測定することができれば,そこから海浜侵食の履歴を読み取ることができる可能性がある.ここでは,ベイズモデルを組み合わせた高分解能光ルミネッセンス年代測定と地中レーダ探査に基づく地質学的な海浜侵食履歴の評価方法を,オーストラリア南西部のBengello Beachを例に示す.Bengello Beachでは1972年以来定期的に海浜地形の観測が行われており,大規模なストームの後に海浜が後退しその後2〜3年以内にまた回復するという,カットアンドフィルと呼ばれる地形変化パターンを示すことが知られている.1974年に発生したストームにより海浜が50 mも後退したが,その後は海浜の後退量が30 mを超えるストームは発生していない.このため,1974の海浜侵食は50〜100年程度の再来周期を持つ低頻度のイベントであると考えられている.この海浜地形の観測は,海浜堆積物の上部の中で海浜侵食の直後の回復の期間に形成されたもののみが地層として保存されることを示している.つまり,海浜堆積物上部の年代は,過去に起こった大規模な海浜侵食のタイミングをほぼ表しているとみなすことができる.OSL年代の試料は,Bengello Beachの前置砂丘から内陸部120 mまでに発達する浜堤の地下から5〜10 mの水平間隔で採取した.ここで最も陸側の古い試料は510年前の年代を示すため,それ以降の正味の海岸線の前進速度は0.24 m/yとなり,中期完新世以降の平均値に等しい.得られたOSL年代は,350, 180, 130, 90年前の侵食イベントを示唆し,また1974年の侵食により形成された地形と整合的な結果となった.海浜の前進速度が0.24 m/yで一定だと仮定すると,これら4回のイベントでの後退量は 45〜55 mと見積もられ,1974年に匹敵する.350年前のイベントに続いて形成された幅約40 mの区間の海浜堆積物から採取された4つの試料はほぼ同じ年代を示し,そのすぐ海側の堆積物との間で150年間のギャップが認められ,180〜330年前においては大規模な海浜侵食が発生しなかったことを示唆している.以上の高分解能OSL年代測定により,Bengello Beachで1974年に匹敵する海浜侵食は,350年前以降50〜150年の間隔で発生していることが明らかになった.