公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演3
有床義歯/クラウンブリッジ

2024年7月6日(土) 14:10 〜 14:40 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:小峰 太(日本大)

[O1-8] 色調選択のデジタル化を踏まえた色調識別能力の検討

*小西 晴奈1、石田 雄一1、後藤 崇晴1、市川 哲雄1 (1. 徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 口腔内への審美的なニーズの高まりに伴い,歯の色調選択の重要性が指摘されている.令和4年度の診療報酬改定において「歯冠補綴時色調採得検査」が保険収載され,今後歯科界におけるデジタル化が急速に進んでいくことを考慮すると,歯の色調をより客観的に評価することが求められる.しかし,今日まで色調選択は,シェードガイドを用いた視感比色法つまり評価者の主観に基づく方法が主であり,明度,彩度といった色調属性,デジタルによる測色,ヒトの色識別能などを踏まえて包括的に検討した報告はない.これらの点は,近い将来訪れる色調選択のデジタル化とデジタル技工のワークフローにとって極めて重要な課題である.そこで本研究では,明度,彩度の違いが歯の色調識別に与える影響を検討するとともに,各個人の色識別に与える影響を包括的に検討した.
【方法】
 被検群として歯科医師(Dr群),歯科技工士(DT群),壮年患者(Pt群),歯学部学生(St群)の4群を設定し,各30名,計120名とした.シェードガイドの各タブを分光測色計(CM-5,コニカミノルタ)で測色した.コントロールのタブに加えて,明度,彩度が異なるタブを用意し,「コントロールと同じ色かどうか」,もし異なるならば,「補綴装置として許容できるかどうか」を回答させた.次に色差式CIE DE2000を用いてシェードタブ間の色差を算出後,色差が異なる16本のタブを用意し,同様の質問を行った.色識別に与える影響因子を二項ロジスティクス回帰分析にて検討し,色差の知覚,許容に関して50:50%知覚許容閾値を,ROC解析によりそのカットオフ値を算出した.
【結果と考察】
 Dr群とDT群の正答率は78~98%で,明度,彩度の順に高い傾向にあった.Pt群とSt群の正答率は43~80%で,明度識別の正答率は,彩度識別の正答率よりも有意に低かった.その正答率はDT群とPt群で彩度の影響が見られた.色識別に与える影響の因子として,色差が選択されたものの,明度などの影響が見られなかった.Pt群では年齢が影響を与える因子として選択された.色差のカットオフ値に関して,Dr群,St群,Pt群が同程度に対して,DT群ではその値は低かった.以上の結果より,色調選択のデジタル化において重要な色調を構成する要素とヒトの色調知覚,許容との関係,歯科医療従事者-患者間でのその特徴が示唆された.