公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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一般口演5
ニューロサイエンス

2024年7月6日(土) 15:20 〜 15:50 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:松香 芳三(徳島大)

[O1-15] 歯の喪失およびタンパク摂取量低下が老化促進マウスの認知機能に及ぼす影響

*畠山 理恵1、大上 博史1、横井 美有希1、石田 えり1、津賀 一弘1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

[Abstract]
【目的】
 歯の喪失はアルツハイマー病(AD)などの認知機能低下に関わることが明らかとなっており,AD モデルマウスを用いた動物実験においても, 歯の喪失が認知機能低下を引き起こすことが報告されている1).近年,タンパク質摂取量低下が認知機能低下の危険因子であることが報告されている2)ものの,歯の喪失後のタンパク質摂取量低下が認知機能に及ぼす影響は明らかとなっていない.本研究では老化促進マウスP8系(SAMP8)を用いて歯の喪失およびタンパク質摂取量低下が認知機能に与える影響を明らかにすることとした.
【方法】
 12週齢の雄性SAMP8の上顎両側臼歯を全身麻酔下で抜歯した(E)群と,偽手術を行った対照(C)群,さらに両群を通常タンパク食摂取(N)群と,低タンパク(通常タンパク食の1/2のタンパク量)食摂取(L)群に分けることで,CN群,CL群,EN群,EL群の4群について,観察期間を抜歯後24週として,バーンズ迷路試験を用いた行動試験を行った.観察期間終了後,海馬におけるmRNA発現を解析した.
【結果と考察】
 行動試験の結果,逃避潜時がCL群と比較してEL群で有意に延長しており,認知機能が低下していることが示された.海馬におけるmRNA発現では,アポトーシスに関連するBax/Bcl-2が摂取したタンパク量に関わらず抜歯群で有意に増加していた.本研究の結果から,老化促進マウスでは歯の喪失によって海馬領域でアポトーシスが促進され,さらにタンパク摂取量低下により認知機能低下を引き起こすことが明らかとなった.
【参考文献】
1) Taslima S, Jung CG, Zhou C, et al. Tooth Loss Induces Memory Impairment and Gliosis in App Knock-In Mouse Models of Alzheimer's Disease. J Alzheimers Dis 2021; 80: 1687-1704.
2) Glenn JM, Madero EN, Bott NT. Dietary Protein and Amino Acid Intake: Links to the Maintenance of Cognitive Health. Nutrients 2019; 11: 1315.