公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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一般口演

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一般口演8
バイオロジー

2024年7月6日(土) 17:00 〜 17:30 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:堀 一浩(新潟大)

[O1-22] 鶏卵の殻を再生利用したMgイオン含有アパタイトペーストの骨形成評価

*廣田 正嗣1、望月 千尋2、櫻井 敏継1,3、大久保 力廣1,3 (1. 鶴見大学歯学部歯科医学教育学講座、2. 株式会社バイオアパタイト、3. 鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座)

[Abstract]
【目的】
 日本では,年間25万トンもの鶏卵の卵殻が廃棄されている.廃棄卵殻に含まれるCaを未利用資源として再生利用し,合成した水酸アパタイト(卵殻アパタイト)は,生体必須元素で毒性が低いMgを配合し,良好な骨適合性が期待されている1).本研究では,卵殻アパタイトがサステナブルな新規骨補填材として有用であると考え,卵殻アパタイトペーストをラット頭頂骨に埋入し,新生骨形成能について評価した.
【方法】
 国産鶏卵の廃棄卵殻から合成した天然由来の卵殻アパタイト(BAp; BioAptite Medical,バイオアパタイト)の粉末 150 mgに,蒸留水200 μLを練和しペーストを作製した.対照群は,鉱物由来の単斜晶ハイドロキシアパタイト(HAp; 富士フィルム和光純薬)とした.
 9週齢♂SD 系ラットの頭頂部を横切開し,骨膜を剥離した後,骨上にPTFEチューブを留置し,その中にBApまたはHApペーストを填塞した.骨膜および上皮組織を縫合し,埋入8週後に試料を周囲組織とともに摘出した.(鶴見大学動物実験委員会: 承認番号 22A006, 23A0199) 新生骨形成は,高分解能X線CT装置および付属の3D骨形態計測ソフトにより観察し,さらに得られた連続断層像を三次元構築し,CT値から測定範囲内の骨塩量を算出した.非脱灰薄切研磨標本を作製し,光学顕微鏡を用いて形成した新生骨を病理組織学的に観察した.また画像解析ソフトを用いて新生骨量を算出し,定量的に評価した.
【結果と考察】
 三次元μCT構築画像では,BApでHApより多量の不透過像が頭頂骨上に観察された.術後8週のCT値から算出した新生骨塩量は,BApにおいて有意に高い値が得られた(図1).病理組織学観察の結果,新生骨は全て頭蓋骨側から形成されており,術後8週ではBApにおいてHApと比較してより多く新生骨形成が認められた.
 以上,廃棄卵殻由来の卵殻アパタイトは,骨補填材として有用な骨再生材料である可能性が示唆された.
【参考文献】
1) 望月千尋, 酒井有紀, 中村弘一ほか. 廃棄卵殻カルシウムを利用したバイオアパタイト合成と牛歯の色素吸着特性評価. 歯材器 2020; special issue 75: 21.
謝辞:本研究はJSPS科研費21K09964の助成により遂行した.研究遂行にあたり鶴見大学 早川 徹 名誉教授の助言を頂いた.