公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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一般口演

現地発表

一般口演8
バイオロジー

2024年7月6日(土) 17:00 〜 17:30 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:堀 一浩(新潟大)

[O1-23] アリルイソチオシアネートがCandida albicansに及ぼす影響

*西浦 英亀1、田村 宗明2、髙橋 佑和1、井手 唯李加1、岡田 真治1、西尾 健介1、李 淳1、藤田 哲夫1、湯浅 智1、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第I講座、2. 日本大学歯学部感染症免疫学講座)

[Abstract]
【目的】
 高齢患者の口腔カンジダ症の多くは口腔内の清掃状態の不良により発症し,口腔内常在真菌であるCandida albicans(以下C. albicans)がその発症に強く関与している.この真菌は二形性を示し,アクリルレジンに付着しやすいことから義歯装着患者の口腔内より高頻度に検出されることが報告されている1).そのため,この疾患の予防のため義歯洗浄剤に添加できる安全で抗菌作用を有する新しい成分の発見が必要である.そこで本研究では,ワサビ成分のアリルイソチオシアネート(AITC)を供試し,C. albicansの発育および病原因子に対する抗菌効果を検討した.
【方法】
 試験菌株はC. albicansのATCC18804株とNUD202株を供試した.被験菌をAITC濃度を変えて添加した培地で培養後,比濁法で発育への影響を検討した.AITCの病原因子への影響では付着能を培養法,バイオフィルム形成能を染色法で測定した.病原性増強に関与する菌糸形変換は光学顕微鏡観察とflow cytometry分析とで観察した.菌糸形変換では関連する細胞内シグナルの遺伝子変化をreal-time PCR法で確認した.さらに,タンパク質分解酵素の分泌型アスパラギン酸プロテアーゼ(SAP)活性を比色定量で検討した.一方,AITCの作用機序の解明としてC. albicans細胞内の酸化ストレス状態を測定した.
【結果と考察】
 AITCは添加濃度依存的にC. albicansの発育を抑制した.病原因子への影響では,濃度依存的にレジン片への付着菌数,バイオフィルム形成量,菌糸形変換率およびSAP活性が抑制され,菌糸形変換に関与する細胞内シグナルのmRNA発現量も減少した.一方,細胞内ではスーパーオキシドジスムターゼ量の減少と過酸化水素量の増加を認め,酸化ストレスの発生が確認できた.
 以上の結果から,AITCはC. albicansの発育と病原性を抑制し,義歯装着者の口腔カンジダ症の発症予防に有用であることが示唆された.
【参考文献】
1) Martori E, Ayuso-Montero R, Martinez-Gomis J, et. al. Risk factors for denture-related oral mucosal lesions in a geriatric population. J Prosthet Dent 2014; 111: 273-9.